えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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4章 三国鼎立

高涼の戦い(後編)

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 突然襲いかかってきた巨漢の男に驚く劉備軍。
 劉備「敵の奇襲か!?皆、慌てずに対処するのだ」
 ???「号令を出した。オメェさんが猿山の大将で間違いないか」
 張飛「大兄者が猿だと!?ふざけんじゃねぇ。俺が叩き斬ってやるぜ」
 ガキーン。鎧も着ていない身体に張飛の丈八蛇矛が刺さるかと思われたが弾き返った。
 張飛「うおっマジかよ!?弾かれたってのか?お前、人間なのかよ!」
 ???「ゲバババババババ。どうした。その程度の力か。ウラァ」
 張飛「ゴホッゴホッ」
 ???「ほぉ。俺の鉄拳を受けて倒れんか。なかなかやるではないか」
 劉備「翼徳、大丈夫か!」
 張飛「来んな大兄者!コイツは危険だ。ここで大兄者を失うわけないかねぇだろう」
 劉備「しかし、翼徳!お前を失うわけにも行かないのだ!ここは昔のように協力して当たろう」
 張飛「ったくよ。大兄者は言い出したら聞かねぇからな。わーったよ」
 ???「2人になったところで何ができる」
 張飛の丈八蛇矛の突きに合わせて、劉備が雌雄一対の剣で、首を刈り取りにかかるがそのどちらもガキーンとまるで鉄にぶち当たったかのような音をするだけで、まるでダメージを与えられていない。
 ???「緩い緩いぞ。ぬるすぎる」
 張飛「大兄者と2人がかりでもダメだってのか!」
 劉備「呂布殿以上の化け物かもしれんな」
 趙雲「常山の趙子龍、推参。殿、御無事ですか!どうやら敵の奇襲ではない様子。相手は、この巨漢の大男、1人のようです」
 張郃「河間の張儁乂。華麗に参上致しました。加勢いたします殿」
 ???「ゲババババババババ。人間とはどうしてこうも群れる。群れたがる。1人の方が楽だというのに」
 張飛が丈八蛇矛で、何度も突きを繰り出し、劉備は雌雄一対の剣で何度も斬りかかり、張郃が左から趙雲が右から槍で、腹部を狙った。しかし、そのいずれもがやはり鉄に当たったかのような音を立てて、弾かれた。
 張飛「化け物が!?」
 劉備「なんという男だ!?」
 趙雲「この槍で貫けないものが!?」
 張郃「獣が!」
 ???「つまらぬ。この森に足を踏み入れたことを後悔して亡くなるが良い」
 劉備に拳が当たる刹那、魏延が間一髪間に合って、叫ぶ。
 魏延「待て、殿はやらせん。ってお前は虎熊コユウか。俺だ魏延だ」
 虎熊「ぎっぎっ魏延の兄貴!?こんなところで何してるんでい?」
 魏延「俺は今、この人のところで厄介になっている。殿、虎熊のやつが迷惑をかけたようで申し訳ない。コイツは、俺の昔馴染み」
 虎熊「そんな昔馴染みだなんて、言い方よしてくれやい。兄貴は俺の先生で、名前を付けてくれたじゃねぇか。ゲバババババババ」
 魏延「その変な笑い方、変わってないな」
 劉備「魏延がこの化け物の先生?」
 諸葛亮も遅れて到着する。
 諸葛亮「殿、御無事ですか?その様子だと大丈夫のようで安心いたしました」
 魏延「先生なんて、大したものじゃない。虎熊に言葉を教えてやっただけの事」
 虎熊「そのお陰で、言葉の分かるやつはおどろおどろしく登場して、驚かして逃がしてやんだ。だが、鎧を着た奴らは別だ。アイツらはこの土地を狙ってやがる。だから強引に痛い目に合わせるんだ。この土地に住む動物たちを脅かすわけにはいかねぇからな」
 張飛「成程な。お前の言い分はわかったぜ。でもよ大兄者は別に生態系を壊そうとかそういうのじゃねぇ。ここを通ったのもここを通った方が高涼城を奇襲できると考えたからなんだ」
 諸葛亮「珍しく張飛殿が策を弄するものですから心配はしましたが事なきを得られたようで何よりです」
 張飛「臥竜先生はよ。一言余計なんだ」
 魏延「そういうことだ。虎熊、ここは我らのことを黙って通してはくれないか?」
 虎熊「兄貴の頼みを断るなんてできねぇ」
 魏延「すまない虎熊。ありがとう」
 行こうとする劉備たちを止める虎熊。
 虎熊「待ってくれ、兄貴。俺を兄貴の部隊に入れてくれ。なんでもやる。なんでもやるからよ」
 魏延「殿、構いませんか?」
 劉備「魏延が良いなら私は構わない」
 魏延「ありがとうございます殿」
 虎熊「良いのかい?俺みたいな野蛮な男を迎え入れてくれるのかい?」
 劉備「野蛮かも知れんが。生態系を壊したくない気持ちもわかる。それに、森で育ったとはいえ人であろう。化け物などと呼んでしまい申し訳なかった」
 虎熊「俺なんかを人間扱いしてくれんのかい?ありがとう」
 虎熊という人間を超えたかのような存在を一行に加えた劉備軍は、高涼城の背後へと回ることに成功した。
 劉備「皆、ここより、正面から突撃して気を引いてくれている孫堅殿と共に挟撃を行う。我らの目的は、高涼城を守る将を討つことだ。全軍、突撃」
 その頃、高涼城では。
 伝令「報告、前方の部隊に劉備の姿を発見できません。孫堅が兵を率いている模様!」
 士徽「劉備の奴はどうやら臆病風に吹かれて逃げたようだな。予備の部隊を前の孫堅軍に全て回せ」
 伝令「はっ」
 ということがあって、後ろは手薄も手薄。劉備軍は難なく城の眼前まで、一気に攻め寄せたのである。
 伝令「劉備軍が兵を回して手薄な裏側に現れました」
 士徽「なんだと!?どうやって、あの獰猛な獣が住む森を抜けたというんだ」
 伝令「劉備軍の部隊には虎や蛇や熊の姿を確認!」
 士徽「奴らは獣と心を通わせたとでも言うのか」
 伝令「門が突破されます。如何いたしますか士徽様」
 士徽「こんな奴らに勝てるわけがねぇ。決めた。俺は降参する。すぐに使者を。ガハッ」
 高涼兵「士祇様を裏切ることは許さない。お前の命はここまでだ。安心するが良い士祇様とて弟の不名誉は望まない御方だ。士徽様は劉備軍と立派に戦い討ち死にしたと報告させてもらおう」
 士徽「クソッ士頌の奴が手を回してたのか。いや、まさか兄貴がもっと前から手を。お前たち俺を守れ。ゴフッ」
 伝令「幻滅致しました。この交州を売り渡そうとする売国奴め。死ね」
 士徽「なんで俺がこんな目に。どこで間違えた。兄貴に乗って、親父に謀反を起こした時からか。一足先に地獄で待っててやるからなクソ兄貴。ガハッ」
 こうして、士徽を殺した後、逃げ場を無くした高涼兵たちは揃って、劉備軍に突撃して、討ち死にしたのだった。高涼の陥落と馬鹿で口の軽い弟、士徽の処理。それが全て、士祇の作戦であった。一つ狂いが生じたことがあるとすれば、虎熊と共に獰猛な獣たちが劉備軍に加入したことである。
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