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4章 三国鼎立

九真と日南

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 交阯で全く奇襲を受けず。ゆっくりと休息の取れた劉備軍の面々の表情は少し回復し九真へと向かう。
 諸葛亮「鬱林では殿の嫌がることを徹底的に行った士祇が交阯では全く何もしてこなかった。何を考えているのか全く読めません」
 孫堅「深く考えている男ではない。所詮士燮殿から強引に当主を簒奪しただけの男。分不相応だったのだ」
 諸葛亮「だと良いのですが。なんだか気味の悪い男のような気がします」
 劉備「孔明でも読めない男か。一応注意しておこう」
 張飛「この匂いは死臭か。クソッまたかよ」
 劉備「徹底的に従わないものは殺し、我らのせいにするつもりのようだな。翼徳、済まないが頼めるか」
 張飛「大兄者。おぅ。任せとけ。お前ら丁重に扱えよ」
 11県目の村となると張飛も手際よくなっていく。
 張飛「全く、こんなこと慣れたくもねぇのに、初めの頃よりは耐性付いちまったな。女の身体には触れんじゃねぇぞ。ほら、義賢が教えてくれた怪我人を運ぶ担架に乗せて、丁重に運ぶんだ」
 龔都「へい。わかってやす」
 何曼「クソッ。この人だって、もう少し生きたかっただろうに。なんでこんなことできんだよ。自国の民だろうが。なんでだよ」
 張飛「気持ちはわかるがよ。そう思うんならよ。コイツらの魂を弔ってやらねぇとだろ」
 何曼「はっ張飛様」
 1ヶ所に集められた民たちのために墓を堀り、裸の女には服を被せてやり、子供たちは寂しくないように子供たち同士で手を重ね合わせて、埋める。
 劉備「すまない民たちよ。私がもっと早く来ていればこんな事には。いや、それは失礼だな。お前たちの無念。必ずやこの劉玄徳が晴らしてくれん」
 張飛「安らかに眠っててくれ。もう、怖いことなんかねぇからよ」
 孫堅「劉備殿の優しさはきっと、この者たちにも伝わっているだろう」
 趙雲「殿、必ずやこの槍にて、この者たちの無念を常山の趙子龍が晴らします」
 張郃「こんな小さな子供まで躊躇なく殺すなんて許せません。河間の張儁乂が必ずや討ち果たして見せましょう」
 九真では、5県の村のうち、3県の村が打ち捨てられた状態だった。そして次は、日南へと向かう。
 劉備「ここまで交州の郡のうち4群がまるで民は道具と言わんばかりの扱いのようだ。意のままにならないなら我が軍のせいにして、殺し見せしめにした。こんなことを何の躊躇いもなく実行したというのか?悍ましい所業だ」
 諸葛亮「殿の心が折れていなくて安堵いたしました。民たちの無念を晴らすためにも必ずやこの交州を奪取しましょう」
 孫堅「士祇は大恩ある士燮殿を手にかけたかもしれん男だ。その上、自国の民に対してこの仕打ち。到底許せるものではない」
 張飛「大兄者。こんなこと許しちゃいけねぇ」
 劉備「あぁ。うぐっ」
 突然刺される劉備。
 男児「お前が悪の親玉劉備だな!みんなの仇!死ね!死ね!」
 張飛「大兄者!!!テメェ、何してんだ!」
 男児「離せ!離せ!僕はみんなの仇を取るんだ!」
 劉備「翼徳、傷は深くない。離してやるんだ」
 張飛「でもよ大兄者。せめて、これだけは奪い取らせてもらうぜ」
 男児「返せよ!返せって言ってんだろうが!この髭魔人!」
 張飛「俺が髭魔人ってか。ガッハッハ。オメェ雨白いやつだな」
 男児「クソ~。後もう少しで悪の親玉を殺せたのに、この髭魔人に邪魔された。離せ。離せっての」
 劉備「お前が見た劉備と私はそんなにそっくりか?」
 男児「ん?よく見たら全然違うかもしれない。確か、アイツは周りのやつから劉備様と呼ばれて。短くやれとしか返事してなかったけど。なんだか声も違う気がするぞ。あれれ。じゃあおっさん誰?」
 劉備「劉玄徳であっているが。お前のみた人間とは別人だ」
 男児「そっか。悪の親玉は何人もいるんだな。おっさんも劉備なら問題ねぇじゃんかよ。刺したことは謝らねぇからな」
 劉備「謝る必要はない。先程は義弟が申し訳なかったな。ようやく生きている人に会えて、私は嬉しいのだ。一体何があったのだ?」
 男児「何があったかって?白々しいこと言うなよおっさん劉備なら知ってんだろ?」
 張郃「殿にそのような口の聞き方はいけません」
 男児「ふわぁ。男女!?髭魔人から解放されたと思ったら男女に捕まった。離せって言ってんだろ!」
 張郃「男女?気にしていることを。これでもれっきとした女です。ほら謝るのです」
 劉備「張郃、構わん。離してやれ」
 張郃「しかし」
 男児「怒られてやんの」
 張郃「誰のせいだと!」
 趙雲「河間の張郃も子供には形無しだな」
 男児「うわぁ。カッコいい」
 趙雲「そうだろうそうだろう」
 男児「ちんちくりんの方じゃねぇよ!その槍な」
 趙雲「ちんちくりん?これでも184はあるんだが」
 男児「うっせぇ。ちんちくりん。その槍寄越せよ。それなら悪の親玉を貫けるだろ」
 趙雲「ふざけるな!殿が民に対して狼藉を働いたことなど一度もない。子供だからとなんでも許されると思うなよ!」
 男児「うわーん」
 樊玉鳳「何をしているのです子龍。こんな小さな子供を怒鳴りつけるなんて、それでも子供の父親ですか!」
 男児「おねぇちゃん。ふかふかぁ。特にここが」
 樊玉鳳「ひゃん」
 趙雲「このエロガキが!玉鳳から離れろ!」
 男児「おねぇちゃん、ちんちくりんが虐めてくるよ」
 樊玉鳳「し り ゅ う」
 趙雲「わかったわかったからその顔はやめろ」
 男児「ちんちくりん。ちょろちょろだな」
 趙雲「コイツ」
 樊玉鳳「坊や。我が殿は、この村の人たちを殺したりしていませんよ。坊やの見たことをゆっくりとおねぇさんに話してくれますか?」
 男児「はい。綺麗なお姉さん!」
 男の子の見たことは概ね推察通りだった。士祇の手の者が村を離れようとしない村人を劉備軍の振りをして虐殺し、この場を去ったと。そして向かった方角は合浦の方を指していた。出ていけば殺されると誰も居なくなるまで生い茂る草むらの中で息を殺していたこと。
 劉備「辛いことをよく話したくれたな。必ずや無念は晴らすと約束する」
 男児「おっさん劉備なのに本当に関わってねぇのか。悪りぃことしちまったな。ごめんなさい」
 樊玉鳳「きちんと謝れて偉いわね」
 男児「エヘヘ。母さんって呼んでも良い?」
 樊玉鳳「えぇ」
 男児「母さん、母さん。ごめん。僕、怖くて怖くて、母さんが乱暴されてるのに出ていくことができなくて。うわーん」
 樊玉鳳「大丈夫よ。大丈夫だからね」
 劉備「小さい身体で必死に耐えていたのだろう。この戦が終われば、この子を養子として迎え入れる」
 男児「刺した俺を養子に?」
 劉備「あぁ、共に悪の親玉を討つ英雄を目指そうではないか」
 男児「!?俺、こんなことが2度と起こらないように守れる強い男になりたい!おっさん、いや養父さん、宜しくお願いします」
 劉備「あぁ」
 身寄りの無くなったまだ小さな男の子を劉備は養子として育てることにしたのだった。
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