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4章 三国鼎立
正気が無くなっていく
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鬱林の行く村行く村、全ての民だけでなく劉備軍の仕業に見せかけるために犠牲となったであろう兵士服姿の者たちまでいた。この頃には、劉備軍の面々の中にも嘔吐する者、泣き出す者、ずっと俯いている者など。身体の不調を訴える者が多く出てきた。
劉備「ここまでやるとは」
諸葛亮「士祇は殿のことをだいぶ調べたようです。殿の嫌がることを的確にやってきています。民への虐殺、これはその第一歩でしょう。次は」
劉備「言うな!孔明!」
諸葛亮「申し訳ございません。ですが相手のことを知らず策は立てられませんゆえ。どうか御辛抱を。それに彼らのことを真に弔うのであれば、この惨劇を起こした士祇を必ずや捕らえて、晒し者にしなければなりません」
劉備「わかっている。わかっているのだ。だが、打ち捨てられている民をこのままにしていくなど私にはできぬ」
張飛「龔都・何曼、運び終わったか?」
龔都「へい、張飛様。ここに打ち捨てられていた民はこれで最後でさぁ」
何曼「俺たちも黄巾族として暴れていた時は民のことなんて顧みたことはなかった。だが今は違う。どんな理由があろうと人が人を虐殺して良いわけがねぇんだ」
劉備「お前たちは更生して、兵として民を守っている。だが償う気持ちを無くしてはならないぞ」
龔都「劉備様、勿論でさぁ」
何曼「肝に銘じることにする」
劉備「これで鬱林の10県の村全てか。嫌になるな。やはり戦などない世にしなければならん」
張飛「女には服を着せて。いや、男がそれをするのはよくねぇな。被せてやれ。そのまんまだとその向こうに行っても寒いだろ。子供は誰が親かわからねぇよな。クソッ。寂しくねぇように。固まって寝かせてやれ。大兄者、俺は士祇の野郎をぜってぇに許さねぇぞ。こんなことして良いわけがねぇ」
劉備「あぁ、翼徳。私も同じ気持ちだ。士祇には、この悪業を数倍にして返してやろう」
張飛「おぅよ」
劉備は全ての村を周り、打ち捨てられている民たちを1箇所に集め墓地を作り弔っていた。その結果、鬱林で生きている人は誰1人いなかった。それどころか全ての村がとんでもない惨状であった。とても休んだりもできない。劉備たちは野営を何度も繰り返していた。そして、こんな惨状を何度も目の当たりにして、兵たちの疲労が取れるはずもない。だが歩みを止めなかったのは、皆この惨劇に対して静かなる怒りを燃やしていたからだ。交阯に入ると、綺麗な村々が現れるが今度は打って変わって人が誰も居ない。文字通り村全てが神隠しにでもあったかのように人だけが消えている。
劉備「これは、どういうことだ?」
諸葛亮「普通に考えれば殿が鬱林で虐殺したと誰かが噂を流し、逃げたと考えるべきでしょう。これは、まるで空城の計!?」
諸葛亮はこれを空城の計だと考えた。だが、村に入ってからも襲われることはない。
諸葛亮「!?考えすぎでしょうか。一体村人たちは何処へ?」
劉備「にしてもここは虐殺が無くて良かった。村人たちは戦を避けるため逃げたのだろう」
孫堅「兵たちの疲労も頂点に達している。休めるのは良いことだろう」
皆、ゆっくりと眠った。夜襲もなかった。
諸葛亮「あの惨状を見て、疲れ切った兵たちを奇襲するのは常道のはず。しかし、空城の計でもなく奇襲でも無いとしたら一体何を?」
諸葛亮が困惑するのも無理はない。軍師ならあの惨劇が心を折るためなら次は疲れ切った奴らが寝ているところへの奇襲である。しかし、このどちらも士祇は採用しなかった。士祇が採用したのは。
士祇「そろそろ劉備の奴が律儀に民どもを弔って鬱林を抜けた頃か。交阯は手筈通りか?」
雁門「はっ。交阯の民には、劉備の起こした惨劇を語り、この南海へと連れてきた。奴隷として、ゴホン。失礼した。労働力として使うのでしたな?」
士祇「あぁ。貴重な労働力としてな。なら、そろそろ次だな。九真の慄苦と日南の臆巣に伝令を。いうことを聞かない民と兵は劉備の仕業に見せかけて殺して残りは南海に送って、お前たちは合浦に移れとな」
士徽「兄貴、慄苦と臆巣はここには呼ばねぇのか?」
士祇「はぁ、士徽、お前は馬鹿か?あぁ馬鹿だったな。馬鹿は黙って俺に従っていればいい。何も考えずにな」
士徽「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿って酷すぎるだろ兄貴。まぁ、何も聞かねぇけどよ」
士祇「(全てこの南海に呼んだら良いってわけじゃねぇってわからねぇのかこの馬鹿は。まぁこういうやつが真っ先に不利になるとジタバタして降伏するんだ。我が弟ながら残念な性格だぜ。そもそも、鬱林でのことは劉備の中に俺への怒りの炎を灯すことが目的だ。怒りは目を曇らせるからな。そのまま曇らせた目で民を殺しでもしてくれれば御の字よ。奴隷として動員した民兵やお前たちに殺されたと信じる罪なき民をな。合浦の慄苦と臆巣にはその役目に徹してもらって、役割を演じてもらおう。まぁ、合浦ないかずに交阯に行ってさらに混乱している頃か。ククク。それもこの後の策のため。そのまま九真・日南と進んで、ますます混乱するがいい)」
ゆっくりと休息を取ることができた劉備軍は九真を目指していた。
劉備「ここまでやるとは」
諸葛亮「士祇は殿のことをだいぶ調べたようです。殿の嫌がることを的確にやってきています。民への虐殺、これはその第一歩でしょう。次は」
劉備「言うな!孔明!」
諸葛亮「申し訳ございません。ですが相手のことを知らず策は立てられませんゆえ。どうか御辛抱を。それに彼らのことを真に弔うのであれば、この惨劇を起こした士祇を必ずや捕らえて、晒し者にしなければなりません」
劉備「わかっている。わかっているのだ。だが、打ち捨てられている民をこのままにしていくなど私にはできぬ」
張飛「龔都・何曼、運び終わったか?」
龔都「へい、張飛様。ここに打ち捨てられていた民はこれで最後でさぁ」
何曼「俺たちも黄巾族として暴れていた時は民のことなんて顧みたことはなかった。だが今は違う。どんな理由があろうと人が人を虐殺して良いわけがねぇんだ」
劉備「お前たちは更生して、兵として民を守っている。だが償う気持ちを無くしてはならないぞ」
龔都「劉備様、勿論でさぁ」
何曼「肝に銘じることにする」
劉備「これで鬱林の10県の村全てか。嫌になるな。やはり戦などない世にしなければならん」
張飛「女には服を着せて。いや、男がそれをするのはよくねぇな。被せてやれ。そのまんまだとその向こうに行っても寒いだろ。子供は誰が親かわからねぇよな。クソッ。寂しくねぇように。固まって寝かせてやれ。大兄者、俺は士祇の野郎をぜってぇに許さねぇぞ。こんなことして良いわけがねぇ」
劉備「あぁ、翼徳。私も同じ気持ちだ。士祇には、この悪業を数倍にして返してやろう」
張飛「おぅよ」
劉備は全ての村を周り、打ち捨てられている民たちを1箇所に集め墓地を作り弔っていた。その結果、鬱林で生きている人は誰1人いなかった。それどころか全ての村がとんでもない惨状であった。とても休んだりもできない。劉備たちは野営を何度も繰り返していた。そして、こんな惨状を何度も目の当たりにして、兵たちの疲労が取れるはずもない。だが歩みを止めなかったのは、皆この惨劇に対して静かなる怒りを燃やしていたからだ。交阯に入ると、綺麗な村々が現れるが今度は打って変わって人が誰も居ない。文字通り村全てが神隠しにでもあったかのように人だけが消えている。
劉備「これは、どういうことだ?」
諸葛亮「普通に考えれば殿が鬱林で虐殺したと誰かが噂を流し、逃げたと考えるべきでしょう。これは、まるで空城の計!?」
諸葛亮はこれを空城の計だと考えた。だが、村に入ってからも襲われることはない。
諸葛亮「!?考えすぎでしょうか。一体村人たちは何処へ?」
劉備「にしてもここは虐殺が無くて良かった。村人たちは戦を避けるため逃げたのだろう」
孫堅「兵たちの疲労も頂点に達している。休めるのは良いことだろう」
皆、ゆっくりと眠った。夜襲もなかった。
諸葛亮「あの惨状を見て、疲れ切った兵たちを奇襲するのは常道のはず。しかし、空城の計でもなく奇襲でも無いとしたら一体何を?」
諸葛亮が困惑するのも無理はない。軍師ならあの惨劇が心を折るためなら次は疲れ切った奴らが寝ているところへの奇襲である。しかし、このどちらも士祇は採用しなかった。士祇が採用したのは。
士祇「そろそろ劉備の奴が律儀に民どもを弔って鬱林を抜けた頃か。交阯は手筈通りか?」
雁門「はっ。交阯の民には、劉備の起こした惨劇を語り、この南海へと連れてきた。奴隷として、ゴホン。失礼した。労働力として使うのでしたな?」
士祇「あぁ。貴重な労働力としてな。なら、そろそろ次だな。九真の慄苦と日南の臆巣に伝令を。いうことを聞かない民と兵は劉備の仕業に見せかけて殺して残りは南海に送って、お前たちは合浦に移れとな」
士徽「兄貴、慄苦と臆巣はここには呼ばねぇのか?」
士祇「はぁ、士徽、お前は馬鹿か?あぁ馬鹿だったな。馬鹿は黙って俺に従っていればいい。何も考えずにな」
士徽「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿って酷すぎるだろ兄貴。まぁ、何も聞かねぇけどよ」
士祇「(全てこの南海に呼んだら良いってわけじゃねぇってわからねぇのかこの馬鹿は。まぁこういうやつが真っ先に不利になるとジタバタして降伏するんだ。我が弟ながら残念な性格だぜ。そもそも、鬱林でのことは劉備の中に俺への怒りの炎を灯すことが目的だ。怒りは目を曇らせるからな。そのまま曇らせた目で民を殺しでもしてくれれば御の字よ。奴隷として動員した民兵やお前たちに殺されたと信じる罪なき民をな。合浦の慄苦と臆巣にはその役目に徹してもらって、役割を演じてもらおう。まぁ、合浦ないかずに交阯に行ってさらに混乱している頃か。ククク。それもこの後の策のため。そのまま九真・日南と進んで、ますます混乱するがいい)」
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