えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

第二次倉亭新城の戦い(破)

　各城壁の兵と民兵の指揮を任されていた呂威璜・韓莒子・眭元進・趙叡の4名は、間も無く開こうとしている城門を見て覚悟を決める。
　呂威璜「よく民でありながら今まで戦ってくれた。感謝する。もう良い。お前たちまで死ぬ必要はない。民を守るのは将の兵の務め。後は我々だけでなんとかしよう。お前たちは、甄姫様のところに向かうのだ」
　民老「何を言ってるんじゃ。ワシらが頑張らねば袁譚様を逃すことができんじゃろうが」
　韓莒子「！？全く、お前たちは自分たちのことも顧みず袁譚様を逃がそうと戦っていたというのか。ハッハッハ。全く、大馬鹿者どもだ。袁譚様は逃げる気はない」
　民女「どうして？やっと袁尚様や袁煕様と仲良くなられたのにどうして袁譚様だけ、残ったのよ！逃げても、私たちは最後まで抵抗したわよ！」
　趙叡「袁譚様はな。袁家のことを最後まで考えていたのだ。人を惹きつける力を持つ袁尚様・知恵として、その袁尚様を助ける袁煕様。自分の役割は、皆の旗頭となり、袁家を守ることだとそう言っていた」
　民男「なんで袁譚様なんだよ！袁家の責任って言うならよ。それは子供の愛し方を間違えたあのクソ女が追うべきだろうが！なんで、あのクソ女がのうのうと隠れてやがんだよ！」
　眭元進「お前たちの想い、全くその通りであろう。だが、劉彩醜様は、袁紹様を亡くした後、引き篭もられるようになってしまった。それどころか袁譚様に、責任を押し付けたのだ。あの女があの女が居なければと思わないことはない。だがあの女が居なければ袁譚様や袁煕様、そして袁尚様が産まれて来なかったのも事実。そう考えたらあんな女でも仕方ないと思うしかないのだ。袁譚様たちの存在まで否定するつもりか？」
　民男「それは」
　呂威璜「そう虐めてやるな眭元進。さぁ、お前たちも早く甄姫様の元に向かえ。ここは間も無く落ちる。甄姫様ならお前たちを守ってくれるだろう。本当によう戦った。兵でもないお前たちこそ真の武人よ。感謝する」
　民老「呂威璜様がワシらに飛んでくる弓を盾で受けてくださっていたからじゃ。ワシらができたことなど油を撒くだけじゃった」
　呂威璜「当然であろう。将として兵として民を守るのは、務めなのだからな。うぐっ」
　民老「やはり腕に受けた矢傷が、ワシらがでしゃばりすぎたせいで」
　呂威璜「気にするな。俺の命はそもそも烏巣で尽きるはずだったのだ。それが郝昭とかいう生意気な坊主に命を救われ、こうして良き死に場所を得ることができたのだ。民を守って、袁尚様たちを逃し、袁譚様の死への旅路のお供ができるのだからな。うぐ。さぁ、もう行け。我らとて守るべき民に死なれては困るのだ。それに我らの死に際を見られたくもない」
　民老「うぅ。おいたわしや。呂威璜様、御武運をですじゃ」
　呂威璜「お前たちもな。御武運を。うぐぐ」
　民たちが甄姫の館へと向かうのを見届けた後、呂威璜は膝から崩れ落ちる。
　韓莒子「まだ死ぬんじゃねぇぞ呂威璜」
　呂威璜「あぁ、すまん。思った以上に矢を受けていたようだ。だが、1人でも多くの曹操軍の兵士を道連れにせん」
　眭元進「確かに良き死に場所だ。郝昭に救われなければ、俺たちはあの烏巣で淳于瓊と一緒に焼け死んでただろうしな」
　趙叡「民のことなども顧みなかった我らが民に身を案じてもらえるようになるなんてな。人は変われるんだな」
　呂威璜「フフフ。そうだな。最後は、我ららしく派手に散ってやろうではないか。降伏などするなよ」
　韓莒子「勿論だ」
　眭元進「誰に言ってる」
　趙叡「お前1人逝かせたら寂しくて泣くだろう？」
　呂威璜「そうだな」
　城門が開いて、曹仁と夏侯惇、曹仁の配下である牛金と王双がそれぞれ城壁に上がってきた。牛金は、呂威璜のいる南側の城壁へと来た。
　牛金「ようやく会えたな呂威璜」
　呂威璜「フッ誰かと思えばお前か。散々矢を浴びせてやったと思うが」
　牛金「おぅ。その怒りを今ぶつけてやんだよ。怪我してても関係ねぇぞ」
　呂威璜「気遣いなど必要ない」
　牛金兵「お待ちください牛金様、この後もまだ戦いが続きます。このような手負いの相手など我々が、死ねぇ呂威璜！」
　牛金「馬鹿野郎、そいつは俺の獲物だ。ふざけんな」
　呂威璜「安心せい。こんな雑魚どもにやられはせん」
　牛金兵「手負いの癖に、こんなに強いのか。ゴフッ」
　牛金「中々、やるじゃねぇか。まぁ、無断で突撃した奴らが悪りぃわな」
　呂威璜「さぁ、来い牛金」
　牛金「行くぞーー呂威璜！」
　ガキーン。ガキーンと何度も打ち合うが打ち合うたびに矢傷が開き武器を持つ手に力が入らなくなる呂威璜。その隙をついて、斬る。
　呂威璜「ハァハァハァハァ(もう腕に力が入らん。兵士数十人か、全く情けない。もう少しできると思っていたのだがな)」
　牛金「隙ありだ」
　呂威璜「しまった。うがぁ(先に逝って待ってるぞ)」
　牛金「敵将、呂威璜。曹仁軍が配下、牛金が討ち取ったわ」
　呂威璜の死により、南側の城壁は陥落する。そして北側でも王双が眭元進と再会していた。
　王双「やーっと見つけたぜ」
　眭元進「やたら騒ぐ馬鹿がいると思ったらお前か。またやられに来たのか」
　王双「お前なぞ、打ち合えば負ける道理などない」
　眭元進「まぁ、いい。くるが良い」
　王双兵「矢を放て」
　王双「お前ら何してんだ！」
　王双兵「この後も戦いは続きます。このような奴に時間をかけていていいわけがないでしょう」
　眭元進「痛いじゃないの。目が覚めたよ」
　王双兵「ひっ。あれだけの矢を受けて向かってくるだと。この化け物。ぐわぁ」
　眭元進「まだ倒れるわけには行かないのでな。ゴフッ。さぁ、死合おうぞ」
　王双「部下が申し訳なかった。介錯はきちんと務めよう。王双、参る」
　眭元進「そう易々と、この眭元進の首は、取れんぞ。ゴフッ」
　ガキーン。ガキーンと数回打ち合って、出血により動けなくなる眭元進。
　眭元進「(全く、不甲斐ない。だが、弓兵を数人は道連れにできた。配下の兵たちも一進一退を繰り広げている。被害は与えられただろう。すまんな。俺はここまでだ)」
　王双「まだ死ぬな。武将として、華々しく散れ」
　王双の言葉で最後の力を振り絞るがそのまま斬られる眭元進。
　眭元進「み、ご、と」
　王双「敵将、眭元進。曹仁軍が配下、王双が討ち取った」
　曹仁に仕えて、経験の浅い2人を部下たちが勝手にサポートした結果の勝利だった。それに引き換え、歴戦の猛将である曹仁と夏侯惇は一合も打ち合うことなく。韓莒子と趙叡を討ち取った。
　韓莒子「(ここまでの力の差があるとは。無念)」
　曹仁「敵将、韓莒子。曹子考が討ち取った」
　趙叡「(誰も道連れにできなんだ。すまぬ。友たちよ)」
　夏侯惇「敵将、趙叡。夏侯元譲が討ち取った」
　こうして、城壁は全て抑えられ、全ての門が開門し、残すは、袁譚の籠る内城だけとなった。