えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

第二次倉亭新城の戦い(序)

　倉亭新城が鉄壁の要塞といえど、周り全てを落とされれば、落ちるのを待つ城でしかない。幸いにも城の中に畑や食糧庫、将たちも兵たちも袁譚が信頼を置ける者たちでいたため。幽州や并州や冀州が落ちても耐え凌いでいた。だが、少しづつ少しづつ追い詰められていた。それも元袁尚軍の兵たちによって。
　郭図「逢紀よ。さっさと降伏するが良い。何故逃げたクズに義理を立てる必要がある」
　逢紀「郭図め。早々に降伏して恥ずかしいとは思わんのか！」
　審配「我らのことを悪く言うなら逃げた辛評の方がよっぽどであろう！」
　逢紀「辛評殿は、逃げたわけではない！」
　陳琳「逃げたとしか思えませんなぁ」
　逢紀「ぐっ」
　呂威璜「何を言い負かされている逢紀殿。それに、呂曠に呂翔よ。叔父として、恥ずかしいぞ」
　呂曠「叔父上か。俺たちのことを見捨てて逃げた奴になんて、忠義立てできるかよ！」
　呂翔「そうです。叔父上も降伏してくだされ」
　呂威璜「断る！例え、城が落ちようとも最後の1人となろうともこの命尽き果てるまで、曹操軍の者たちを道連れにせん」
　呂翔「では、こちらは叔父上を討つつもりで当たらせてもらう」
　呂威璜「その覚悟もなく俺の前に立ったのか。兄上もあの世で泣いておるわ。馬鹿な息子を持ったとな」
　呂翔「ぐっ」
　焦触「何を言い負かされてんだよ呂翔。アイツらも淳于瓊に捨てられた哀れな奴らなんだからよ」
　眭元進「捨てられたか。好き勝手言ってくれるわい。何も知らん、尻の青いガキがふざけたことを抜かすでないわ」
　焦触「うぐぐ」
　張南「おいおい焦触、ジジイ相手にビビりすぎだろ」
　韓莒子「ハハハ。袁煕様に使い捨てとしてしか認識されてなかった雑魚がよく吠えるものだ」
　趙叡「捨てられて、きゃんきゃん喚くなんて、捨てられて寂しいって、女々しい奴だぜ」
　張南「そっそれは」
　舌戦で士気を下げようとした郭図の策はものの見事に打ち負かされた。
　郭図「降伏を許して頂いたのに、この体たらく申し訳ございませぬ」
　曹操「仕方あるまい。ふむぅ。士気は依然として高いか。厄介よな」
　郭嘉「この城の規模に、周りの食料も刈り取った今、とても耐えれるようには見えないんだけどねぇ」
　郭図「倉亭新城の中には、広大な畑があるのだ。籠城戦を考えて作られた城があの倉亭新城なのだ」
　満寵「そんな城を袁尚が作ったか」
　郭図「いや、作ったのは、確か当時年端もいかぬ子供だったはず。名は確か郝昭だったか」
　満寵「へぇ、是非、お会いしたかったものだ。ここまでの防衛技術を持つものならね」
　郭嘉「(袁尚は袁煕や数人の配下を連れて逃げたと聞くが、まさかね。優秀な人材だけを選んだというのかい？それにしては朱霊殿を置いてあった理由がわからない。それにしても厄介た城だよ。曹丕様が殿の御命令を無視して幽州を抑えてくれたのがここまで功を奏するとはね)」
　曹操「これほどの建築技術と防衛の知識を持つものが野に解き放たれたことが悔やまれるな。まだ中にいれば良いが」
　満寵「袁尚と共に逃げた数人の中に入っていないといいのですが」
　李通「殿、敵の抵抗激しく、取り付いた衝車を油と火矢によって焼かれました」
　満寵「まぁ、焼かれたらまた作れば良いだけだよ。皆の退避は？」
　李通「滞りなく」
　曹操「よくやった李通」
　李通「はっ、ですが殿。老人・子供・女であってもあの城を守っております。流石に民間人相手では、投降してきたものなど使い物にならないかと」
　曹操「あぁ、民間人といえども戦に参加しているのならそれは兵でしかない」
　曹仁「殿、徐州の時のような虐殺は勘弁を。あれのせいで多くの敵を作りましたからな」
　曹操「子考、わかっている。俺も怒りに打ちひしがれて失策をしてしまった。此度は、虐殺などはせぬ。だが民といえど向かってくるのなら対抗する力は削がねばならないことは覚悟せよ」
　曹仁「承知した」
　堅牢な城に対して、攻城手段として挙げられるのは、衝車による城門破壊。投石器による壁破壊。井闌車による弓兵排除の後、雲梯をかける。穴を掘って、城の中まで通す土竜攻めと多々ある。だがこの城には、その中で通用するのが衝車による城門破壊と井闌車による弓兵排除をして、雲梯をかける2通りだった。投石器は届かない。いや届かないわけではないが急な丘を登るのは至難の業だ。土竜攻めを仕掛けた奴らは、水路にぶち当たり、水に流されて、流された先にある落とし穴に落ちて竹槍の餌食となった。有効手段が全く見当たらない。それがこの倉亭新城に曹操軍が時をかけることになってしまった要因である。だが、ずっと包囲されている心因的ストレスは疲れとなって蓄積され、何度も衝車の取り付きを許してしまっていた。その結果、城門はボロボロとなり、曹操は井闌車による城壁の兵の排除を命じたこともあり、老人たちや民にも被害が出ようとしていた。事ここに至っては仕方がない。各城壁の防衛をになっていた。淳于瓊の同期だったが烏巣の戦いの後、淳于瓊を認め配下となり、袁尚たちを逃がすためにここに留まった呂威璜・韓莒子・趙叡・眭元進の4将は覚悟を決めるのだった。堅牢だった倉亭新城の城門が開く。
　衝車隊兵長「オラァ。お前ら気合い入れろよ。もうちょっとで、城門に風穴あかんだからよぉ」
　衝車隊兵士「はっ。みんなもう一踏ん張りだ」
　井闌車兵長「我らは、城壁の上で邪魔する奴らを仕留めるのだ。弓兵、放て」
　井闌車兵士「当たらなくてもいい。相手が油を巻くのと火矢を放つのを阻止できればいい。ひたすら打ち込め」
　堅牢とはいえ、兵のほとんどが疲れ切り民にも頼らないと守れなくなってきていたところに波状攻撃である。とても耐えることはできなかった。