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4章 三国鼎立

再び

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 呉莧を抱えて外に出た呉懿は、そのまま法正のいるところまで、一目散に駆け、転がり込んだ。
 法正「騒々しいお帰りだな」
 呉懿「すまない。しくじった。開かずの間に、鍵などかかっていなかった。それどころか。あそこには、劉璋。いやあのクズが調教したであろう女と漢中郡から連れ去られたであろう女が居た。クソックソックソッ。助けてやれなかった。俺のことを助けてくれたのに。クソーーーーー」
 法正「そう興奮して、声を大きくするな。この馬鹿が。1人は救えたであろう。今はそれで良しとせよ。いつか必ずみんな救われる」
 呉莧「悠長に構えていてはいけません。あの連れ去られてきた女性たちも数日以内にはあのクズ男の魔の手に堕ちるでしょう。私は、劉瑁様が亡くなって、3年。あそこに囚われて、同じように連れ去られてきた女たちが堕ちて行くのをずっと見せられ続けていました。私が囚われた時には、10人しか居なかった女がこの3年で100人を超えています。さらに連れ去られてきた女たちも堕ちれば、その数はさらに倍以上に増えます。中には武家の女もいます。武装されては、侮れない数となるでしょう」
 呉懿「しかし、今はどうすることもできん」
 法正「やれやれ、劉璋の悪事の証拠でも見つかれば御の字と思っていましたが。これは、それ以上だ。呉莧殿だったか?その女たちを助けられれば良いのだな?」
 呉莧「えぇ」
 法正「呉懿将軍、もう一仕事してもらうぞ。孟達の方は問題ないだろう。時間制限は、張任がここに戻ってくるまでだ。それまでに漢中郡から連れ去られた女を全員救出する。これはあのクズへの俺からの報復だ」
 呉懿「もう一度、俺にそこに行けと?」
 法正「いや、この兵力で成都を奪取する。防衛に関しては、少し当てがある。今は俺を信じて、協力せよ」
 呉懿「わかった。俺も囚われている呉莧を見て、覚悟を決めた。あのクズにはもう付き合いきれん」
 呉莧「劉瑁様の敵も討たねばなりません」
 法正「やはり劉瑁はもう殺されていたか。劉焉様をも殺す気だったのだろう。だが体良く呆けてくれたから追い出したってところか」
 呉莧「その通りです。凄いですね。それだけでそこまで思い至るなんて」
 法正「孟達と共に飢饉にあって、食べるものがなかった時に何かわからない実をもぎ取ってくれた劉焉様を精神患者にするなど許せん」
 呉莧「その実は、何かと危ないのではありませんか?」
 法正「いや、みずみずしくて、シャキシャキとしていて、皮まで食べられる美味しい物であった」
 呉懿「皮まで食べられる?一体どんな食べ物なんだ?」
 法正「知らん!何かわからない実だ」
 呉莧「赤い実ではありませんでしたか?」
 法正「あぁ、確かに赤かったな」
 呉莧「それはりんごという果物です。木に実を付けるそうです」
 法正「あれがりんごか。また食べたいものだ」
 そこに孟達が入ってくる。
 孟達「疲れたぜ。守備兵どもも寝かせてやったし、クソ役人どもの家からは粗方、めぼしいものは盗んできたぜ。ふぅー。それにしても、りんご。あれ以来食ってねぇのかよ孝直。俺なんて、あれ以来、給料貰ったらりんご買ってるぜ」
 法正「どこに売ってるのだ子敬!」
 孟達「凄い食い付きだな。というか売ってる場所すら知らなかったのかよ!」
 呉莧「無理もありません。あれは月一に中原からやってくる行商人が運んでくる物で、ここで生産はされていませんから」
 法正「なんだと!?そんな行商人一度も」
 孟達「朝一って市場で売ってるんだぜ。すぐ売り切れるけどな」
 法正「何故もっと早く教えん。この馬鹿が」
 孟達「いや、お前のことだからとっくに調べて買ってるもんだと思うだろうが!」
 呉懿「その話は重要か?」
 法正「重要だ!いや違う、その話は後だ。子敬、計画の変更だ。この成都にて、張任を迎え撃つ。そのために手薄な成都城を占拠する。お前は、劉備軍の服を脱ぎ、すぐに兵をまとめて、張任を足止めせよ」
 孟達「急すぎんだろ!まぁ、でもいつまでもあんなクズに悪政を敷かせるわけにもいかねぇよな。それに、あのクズが劉焉様を呆け老人として追い出しただなんて、許せるわけがねぇ」
 法正「どっから話聞いてんだお前は」
 孟達「りんご云々の話の少し前だな。それにしても何かわからない実って。笑い堪えるのに必死だったぜ」
 法正「子敬、俺のことを笑ったな。しくじったらどうなるかわかっているのだろうな」
 孟達「冗談だって、だからその顔はやめろって孝直~」
 呉莧「仲が宜しいのですね?」
 孟達「おっわかってる~」
 法正「腐れ縁だ。早く行け、この馬鹿者」
 孟達「連れないねぇ。わかりましたって。だからその顔はマジでやめろって」
 法正「フン。呉懿将軍は、成都城内の占拠を。貴方の説得なら幾らか聞く兵もいるだろう。兵は大いに越したことはない。劉璋が戻ってきたらこの成都で防衛しなければならないのだからな」
 呉懿「わかった。同調する者は案外多いかもしれない。やってみよう」
 呉懿は成都場内の兵の説得にあたる。
 成都守備兵C「呉懿将軍、戻られていたのですね。聞いてくださいあちこちで火の手が消化活動に赴いて、帰ってきたら門番を任せていた2人が伸びてる始末。すぐに指示をください」
 呉懿「そうか。では、これよりこの呉懿は劉璋に反旗を翻す」
 成都守備兵D「呉懿将軍が反乱?いやいやいや、この状況で?ないないないって」
 呉懿「俺は本気だ。劉璋による漢中での虐殺。連れ去られた女性の居場所は、劉璋しか立ち入りを許されていない場所だ。お前たちの娘や妻もそこにいるかも知れない」
 成都守備兵C「何を言ってるんです。うちの妻は、先月買い物帰りに南蛮に殺されました。この目で妻だと言われたぐちゃぐちゃの死体をみたのですから」
 呉懿「偽りだ。真実を知りたいのなら俺と共に劉璋だけが立ち入る場所を解放しようぞ。絶対に後悔はさせない。約束しよう」
 この言葉を受けて、成都守備兵が皆、呉懿に付き従い。あの扉を開け、その奥へと向かうのだった。
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