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4章 三国鼎立

海戦前の静けさ

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 劉琮の就任お披露目が終わった翌日、川を降って、江夏へと上陸しようとする一団が現れ慌ただしくなる。
 劉琮「やはり来ましたか。孫策軍でしょう」
 甘寧「あぁ、間違いねぇだろうな。ったく、もうちょっとゆっくりさせてやりたかったんだけどよ」
 劉琮「良いのです甘寧叔父上。太守として初めての業務がまさか孫策軍の迎撃だなんて、腕がなるじゃないですか」
 文聘「劉琮様の御身はこの文聘がお守りいたしますぞ」
 劉琮「頼りにしているよ仲業。黄祖・蔡瑁・張允はすぐに水軍を率いて迎撃を」
 黄祖「呉軍水軍なんぞ。恐れるにたりませんわい」
 蔡瑁「油断してはならん黄祖殿」
 張允「まぁ、相手さんもまさかすぐに迎撃してくるなんて思ってねぇだろ。有利なのはこちらさ」
 蒯越「やれやれ劉琮様が太守に就任した途端にこの有様とはな」
 蒯良「兄上とこちらの補佐に来て正解でしたな」
 劉琮「蒯越に蒯良!劉備様が寄越してくださら予定だった軍師って2人のことだったんだね」
 黄祖「なんじゃ、こんなに劉表軍閥が集まって、まるで同窓会では無いか。ガッハッハ」
 蒯越「相変わらずだな黄祖。だがお前の水軍の腕は頼りにしておる」
 蒯良「迎撃するのなら荊州と揚州の玄関口である下雉かい県にて迎撃するのが良いでしょうな」
 甘寧「あぁ、そうだろうな。そもそもそこ抜かれたら江夏各地に戦果が拡大しちまう。そこで水軍戦に持ち込むのが良いだろう」
 蒯越「孫策が傷で寝込んでいる間に周瑜は水軍強化に力を入れていたそうだ。その頃から荊州に対して、攻め込む算段を付けていたのは明白」
 蒯良「強化された呉の水軍を侮ってはならんぞ黄祖」
 黄祖「蒯越・蒯良、ワシはな。陸での戦闘はダメダメじゃ。凡人素人も良いところじゃ。じゃがな海での戦いは負け知らずじゃ。呉の水軍を何度も沈めてきた。しかしな。ワシは一度だって、油断したことはないのじゃ。向こうが鍛える以上にワシは水軍を調練した。凡人素人のワシが唯一勝てるのがそれだけだったんじゃ。ワシの原動力はな。海運業を営んでいた父を海賊に殺されたことじゃ。守ってやれる強い軍隊が居たら海運業はもっと発展する。ワシが鍛え上げた海の男たちは、皆揃いも揃って血気盛ん暴れん坊者共よ。だがな海を愛し、国を守る意思を誰よりも持っておる。そんなワシらがビビってどうするんじゃ」
 蒯越「すまぬ黄祖よ。弟が失言をした」
 黄祖「失言?いや、最もな意見じゃよ。ワシはな。用心深いんじゃ。じゃから敵を侮ることはない。どんな敵にも真っ向勝負からの搦手よ」
 蒯良「そうであったな。嫌なことでも国のためならと進んでやるのがお前の良いところでもあり悪いところでもあったな」
 黄祖「忠告は感謝しておる。ワシとてまだ死ぬつもりは無いから安心せい。ガッハッハ」
 蒯越「死なれてはこちらが困る。お前程海を知り尽くして、水軍の調練が上手い人間は居ないのだからな」
 黄祖「凡人のワシには勿体無い言葉よな」
 蔡瑁・張允・黄祖の3人が先んじて、迎撃に向かう。続けて、中軍に甘寧・蘇飛、最後尾に劉琮・文聘・蒯越・蒯良とした。一方、その頃、荊州水軍の動きを制するためこの場を任されたのは孫策より前もって、これが交州への援軍ではなく荊州攻略だと命じられていた呉の水軍を率いる面々である。
 董襲「進め進め。気付かないうちに江夏を孫策様のものとするのだ」
 蒋欽「我らの動きを知る由もない劉備軍に何ができようぞ」
 ???「お二人とも油断は禁物」
 董襲「何言ってんだよ賀斉ガセイ
 賀斉「この戦の要は、この呉水軍。迎撃が無いのは良いことですが油断していては足元を救われかねませんぞ」
 ???「賀斉殿のおっしゃる通り」
 蒋欽「闞沢カンタク、お前まで臆病風にでも吹かれてんじゃねぇのか。勢いに任せて突撃して蹂躙して、江夏をぶんどっちまえば良いんだよ」
 ???「臆病風などではなく警戒を怠るべきでは無いと言っているだけでは無いか」
 董襲「吾粲ゴサンもかよ。これだから政治畑の奴らは国で大人しくしてろってんだよ」
 ???「政治畑だの軍畑だのとお互い言い合うからダメなのだ。お互いの良いところを見ようとなぜしない」
 蒋欽「顧雍コヨウ、戦のことなど何もわからない奴らが徒党を組んでしゃしゃり出てくるからだ」
 顧雍「そちらも政治のことなど何もわかろうとしないでは無いか」
 ???「政治で解決できりゃ苦労なんてしないんだよ」
 蒋欽「周善シュウゼンの言う通りだぜ」
 孫権「私も武門の兄と違い政治畑出身と言えると思うが信用できんか?」
 董襲「そんな孫権様を信じられないなんてそんなこと」
 孫権「なら、この話はここまでにせよ」
 ???「孫権様のお陰でなんとかなりましたな。収拾が付かず困っておりました」
 孫権「こんな時だけ呼ぶのはやめてくれよ朱桓シュカン
 朱桓「ハハハ。それにしても相も変わらず政治畑だの軍畑だのとよくやるもんですよ」
 孫権「そんなこと言わずに仲良くやれたら良いのだが。酒は無いか?」
 周泰「駄目だ」
 孫権「ケチめ」
 朱桓「ハハハ(いや、アンタ政治畑とかさっきドヤ顔で言ってたけど。酔って1番暴れるから軍畑に同じ穴のムジナだって思われてんですよ)」
 ???「従兄上、こちらにおられましたか」
 朱桓「朱拠シュキョでは無いか。何かあったか?」
 朱拠「何やら前方に船影が。その数、こちらの倍はある模様。恐らく荊州水軍かと」
 孫権「!?こちらの動きが劉備軍に気付かれていたというのか!」
 朱桓「ですがこんなに早く気付かれるもんですかね。実は演習なわけないよなぁ。まぁ、出てきたもんは仕方ない撃破して、中に入り込んで江夏を奪取するしかないでしょう」
 孫権「あぁ、全軍、陣形を整えるのだ。ここを抜き江夏を取るぞ」
 海戦前の静かさが一変して、双方とも陣を整え、交戦を開始するのだった。
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