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4章 三国鼎立

村々の略奪は続く

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 貞の村で一際大きな屋敷は、村長の家である。ここには、綺麗な女性が居た。村長の孫娘である。産まれつき視覚に異常があり目が見えないが心優しい女性は、文字通り貞の女神様と民衆から親しみを込めて呼ばれていた。
 貞の女神「皆様、諦めてはなりません。必ずや天師様がお救いくださいます。共にこの難局を乗り越えましょう」
 老人「貞の女神様と一緒なら頑張れるわい」
 子供「女神様、怖いよー」
 民女「大丈夫、ここの扉は堅くて破れないはず。ここに籠ってさえいれば、こっ怖い」
 貞の女神「大丈夫ですよ。私が付いていますから」
 村長「娘夫婦を亡くしたワシには、お前を守ってやる義務がある」
 貞の女神「お祖父様」
 その時、外で打ち付ける音やグシャッグシャッとまるで、何かを擦り付けている音が聞こえる。
 貞の女神「なんでしょうか?この音は?」
 老人「あれは、アイツら一体何を!うぷっ。あんな悍ましいことを躊躇なくするなど」
 子供「あっ、隣の男の子だ。おーい」
 民女「見てはダメよ!」
 村長「どうして、この地に野盗など。この地に住む異民族の板楯蛮とは、張玉蘭様を通して、こんなにしていたはず。あのような野盗が一体どこから?」
 一際大きな声が轟く。
 馬漢「聞けーい、屋敷に籠る者共。お前たちに見捨てられた者たちの末路をな」
 民女「モゴモゴモゴ」
 子供「・・・・」
 老人「・・・・」
 冷苞「者共、構え。突き刺せ」
 磔にした子供や老人の死体を的に見立てて、新人の野盗たちの稽古道具であるかのように繰り返し練習させる。そう、先程のグシャッグシャッという音は、この突き刺しによって削ぎ落ちていく人間の中の音だった。その様子が屋敷から見えるように、心を完全に折りに行ったのである。
 高沛「こうなりたくないならお前たちに選択肢をくれてやる」
 楊懐「大人しく降伏するってんなら見逃してやっても良いぞ」
 勿論、誰1人として見逃すつもりはない。ノコノコ出てきたが最後、老人やガキは殺され、女や幼女は、男の欲求を満たすための道具として連れ去られる。わかりきっている。わかりきっていることだが。村長は決断を迫られていた。
 村長「アイツらの言う通りにしたところで、約束が守られることは無かろう。芽衣メイよ」
 貞の女神「どうしたのですお祖父様」
 老人「あんな目に貞の女神様を合わせるわけにいかん」
 民女「そうよ。貞の女神様の目が見えないことに感謝する日がくるなんてね」
 村長「芽衣よ。次代ある子供達を連れ、早急にここから離れるのだ」
 貞の女神「何を言ってるのですかお祖父様!私もここに」
 村長「ならん!お前の言うことでなければ子供たちは聞かん!子供達の目を頼りに、まだ奴らの目が届いてない地下より、ここを離れるのだ」
 貞の女神「嫌です。お祖父様まで失うのは、もう家族を失うのは嫌」
 村長「辛いであろう。だがきっと悪いことの後には良いことが待っている。お前のことを大事に思ってくれる存在が現れる。ワシはそう信じておるよ。さぁ、いくのだ」
 子供「こっちだよ貞の女神様」
 芽衣「お祖父様、今まで目の見えない私を養育して介護してくださりありがとうございました。どうかご無事で」
 村長「うむ。子供たちよ。芽衣のことを頼んだ。そして、これよりは貞の女神様ではなく、芽衣ねぇちゃんと呼んであげてほしい」
 子供「わかったー。こっちだよ芽衣ねぇちゃん」
 こうして、子供と芽衣をかろうじて逃すことに成功した村長は、扉を開けることを堂々と拒否するのだった。
 村長「この村に野盗如き卑しき者どもに膝をある人間など1人もおらん。壊さないから開けてくれと言ってるようなものであろう。何故、そんな挑発に乗らねばならん。悔しかったらこの扉を壊してみるが良い」
 馬漢「ほぉ。こんな凄惨なことを見せて、まだ心が折れんか。まぁ良い。なら実力行使と行こう。火を持ってこい」
 冷苞「良いのか。あの中にも女がいるだろう。焼け殺しちまうぞ」
 馬漢「燃やしはしないさ。まだな」
 野盗「大頭、こんなもん作りやしたけど使えますかね」
 馬漢「ほぅ。これは衝車か。どうやってこれを?」
 野盗「家の木々を拝借しましてね。へへっ」
 高沛「でかしたぜ。これなら扉をぶち破れる」
 楊懐「持つべきものは、優秀な部下たちだな」
 馬漢「全く、その通りよな」
 衝車によって、扉がじわりじわりと軋んでいた。中にいる人たちにも終わりの時が迎えようとしていた。
 村長「お前たちも地下から早く逃げよ!」
 老人「ダメじゃ。そのようなことをすれば地下の存在を相手にも知られよう。ここはこうするべきじゃ」
 老人は、衝車で打ちつける音と錯覚させるため地下通路の奥で火薬を爆発させて、地下道を埋めてしまった。自らと共に。
 村長「馬鹿者め。そこまでして、芽衣のことを。すまん」
 民女「良いのです。私たちは殺されはしないでしょう。いつか貞の女神様にもう一度会うことができたなら。その時、村長の最後は立派だったとお伝えしておきます」
 村長「ありがとう。皆、武器は取ったか?道連れにしてやろうぞ」
 扉が開いて、大乱戦とはならず多勢に無勢。対して、老人ばかり。女たちは軽々と持ち上げられ、まるで自分のものだと言わんばかりに連れ去られ、老人たちは一人また1人と無惨に殺され、村長もまた。
 馬漢「気概だけでどうにかなると思っていた訳ではあるまい」
 村長「くっ。この野盗の動き、精錬されている。ガハッ。まさか、せ、い、と、の。ゴフッ」
 馬漢「よーし、野郎ども捕まえた女は好きにして良いぞ。村を焼いたら次に行くぞー」
 野盗「これだからやめられないぜ」
 こうして、張任が関所で戦っている間に、いくつもの村々を壊滅させていったのである。
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