えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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4章 三国鼎立

兄弟舌戦

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 劉璋は従わないものたちからは妻や娘を人質に取り、従わせ。信奉者たちはこぞって劉璋のためと集まった。その数30万。これを率いる将軍は、冷苞・楊懐・高沛・馬漢の賊上がりの仲良し4人組。劉璝・劉晙の血の繋がりはないが劉家という同族として気に入られている2将。軍師として王累。そして大将軍として張任が選ばれた。
 張任「先の張魯征伐で失態を犯した俺をまた大将軍に添えてくださるとは、感謝に耐えませぬ」
 劉璋「良い。失敗は誰にでもある。此度は期待している」
 張任「はっ」
 劉璋「(王累に利用価値があると言われて、降格させずにまだ大将軍として使ってやってるが偶には感謝されるのも良いものだ。実の母よ。とうとうこの日がやってきたな。五斗米道もろとも粉々に打ち砕いてくれるわ)」
 冷苞「なんで俺たちがあんな実直だけが取り柄のバカに付き従わないといけねぇんだ」
 馬漢「そう言うな。郷においては郷に従えというだろう。それに負けても責任を取るのは、アイツだ」
 楊懐「そういうことだ。俺たちは今まで通り、女を攫って、抵抗する民どもを殺せば良い」
 高沛「五斗米道の教えを捨てるなら助けてやるとかな。色々楽しめそうだぜ」
 王累「そういうことです。我らが好き勝手動くためには、神輿に実直な馬鹿を担ぐのが1番手っ取り早い」
 劉璋「成程な。此度は、勝つつもりなどないからなぁ。張任が攻めてる間にこっそりと入って、女の民を攫い、男の民を殺す。単純に人口を減らす作戦だ」
 王累「えぇ、前回の戦では、五斗米道が危険だというだけで攻めたのが間違いだったのです。此度は、劉璋様に張魯を滅ぼすという確固たる意志がある。ならば、着実に相手の嫌がることをしていけば良いのです。さて、前回、張任殿が負けた関所ですな」
 この関所を守るのは張魯の弟で武名高い張衛の率いる精鋭である。
 張衛「懲りずにまた攻めてきたか張任よ!」
 張任「張衛か。此度は負けんぞ。皆の者、かかれ」
 張任が関所の攻略に取り掛かったのを見て、こちらも行動に移す劉璋。
 劉璋「良し、では楊懐・高沛・冷苞・馬漢は手筈通り、裏道から漢中へと入り、片っ端の村から女を強奪して、生産性のない男は殺して、奴隷となりそうな若い男は捕まえよ」
 楊懐・高沛・冷苞・馬漢「おぅよ」
 劉璋「劉璝・劉晙は、張任の援護を」
 劉璝・劉晙「心得た」
 劉璋「ワシはここで王累と共に皆の活躍を楽しみに待っているぞ」
 王累「皆いなくなれば相手も不審に思いますからなぁ」
 いきなり声が轟く。
 劉範「璋、臆病者のお前が成長したみてぇだな。父上や瑁は元気にしているのか?」
 劉璋「成程、張魯のやつ。俺が兄とは戦えないとでも思っているようだ。この手で1人兄貴をぶち殺してるのにな」
 張任「またしても卑怯だぞ。我らとゆかりのあるものを前線に立たせるなど!」
 張衛「何言ってんだ?もうコイツらは俺らと志を同じとする同士であり友人である。役に立ちたいという気持ちを蔑ろにしろとでも言うのか!」
 劉誕「おい、臆病者の璋。何黙ってんだ。なんとか言えよ!」
 劉璋「やれやれ。しょうがあるまい。あの時の俺らしくやるか」
 劉範「おいどうしたどうした」
 劉璋「劉範兄上・劉誕兄上、生きていたのならどうして連絡してくださらなかったのです。すぐにでもお迎えに参りましたのに」
 劉誕「真っ先に逃げ出した臆病者のお前がそれをいうか。舐めてんじゃねぇぞ。俺たちが何も知らないと思っているなら大きな間違いだ」
 劉範「父を追い出し、瑁も行方知らずと聞いた。真っ先に疑うのはお前なのは当然であろう」
 劉璋「誤解です。父上は、その精神を病んでしまわれて、病院にて療養してもらっています。追い出したなんて、ぼっ僕にできるわけないでしょ」
 劉誕「お前はいつもそうだ。我ら兄弟の中で1番腹の中が見えん。そのくせ、他者を容赦無く犠牲にできる。お前のようなものを父上が後継者に選ぶ訳なかろう。瑁をどうした?さては殺したか?」
 劉璋「劉瑁兄さんをばっ僕がかっ殺す訳ないじゃないか。なんて酷いことを言うんだ。そんなことを言うから父上に李傕なんざの抑えに留め置かれるんだ」
 劉範「その役目にお前も入っていたのだが、真っ先に逃げ出したのはどこのどいつだ!」
 劉誕「あの時から俺たちはお前を弟などと認めん。さっさと瑁の居場所を吐け!」
 劉璋「全く。ムカつく兄貴たちだ。俺を怒らせて、実直な張任の離反を狙ってるってところか?」
 王累「それで概ねあっておるかと」
 劉璋「なら、俺がやるのは」
 王累「とことん臆病者を貫くことですなぁ」
 劉璋「この間にも漢中の各地の村が大変な目にあってるとも知らずになぁ」
 王累「全くですなぁ」
 劉璋「そんな酷いよ。証拠もなく。弟の僕を疑うなんて。うぅ」
 劉範「泣けば許されるとでも思っているのか!」
 劉誕「これ以上傷つきたくないのなら即刻兵を退け、臆病者のお前には似合いだろうよ」
 劉璋「それはできません。父上から益州全土の攻略を任された以上、残る漢中はどのようなことをしてでも手に入れなければ父上に託された想いを無駄にすることになる。それこそ、兄上たちが僕に協力すべきなんだ。即刻、その関所を明け渡すのなら此度はここで手打ちとします」
 劉範「話にならんな」
 劉誕「あくまで白を切るというのなら、捕まえて無理矢理にでも吐かせるまでよ」
 張衛「交渉決裂という訳だ。全軍、敵に矢の雨を降らせてやれ」
 劉璋兄弟による舌戦の勝敗は武力衝突へと持ち越されるのだった。
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