えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

遼東征伐

　曹植の監視が無くなったことを確認した曹丕だったが念には念を入れるべきとの司馬懿の言葉を受け、外で兵を集めるのは朱鑠と呉質が担当し、郊外で合流して、匈奴の領土を通り、遼西郡へと侵攻を開始した。遼西郡では、公孫康・公孫恭、兄弟が対応を協議していた。
　公孫模「養父はもう歳だ。戦をする必要が本当にあるだろうか。寧ろ、この状況で降伏を選択すれば、曹操軍にとっては有り難いのではないか？」
　韓忠「元黄巾兵でありながら、ここで農業に明け暮れる有意義な生活を送ることができて本当に感謝している。確かに今の曹操を取り巻く環境を考えれば公孫模殿の言う通り、降伏するのが良いだろう。恐らく袁尚に対して思いの外苦戦しているのだろう」
　張敞「公孫康様が率先して降伏する旨を伝え、公孫度様を説得すると言うのが良いかと」
　公孫康「あぁ、それが良いだろうな。恭もそれで良いな？」
　公孫恭「匈奴を手懐けた曹操に対するのは得策ではないでしょう。今はいかに戦を避け、時を稼ぐかかと」
　公孫康「良し」
　遼西郡を預かっていた公孫康は、攻め寄せる曹丕軍に降伏を決めた。
　曹丕「公孫康よ。よく決心してくれた」
　公孫康「御拝謁に感謝致します。父に遼東の自治をお認めくだされば、必ずやお互い衝突することなく説得いたします」
　司馬懿「遼東の自治とは、大きく出ましたな。ですがそれも良いでしょう。曹丕様の手となり足となってくれるのなら遼東の自治を認めましょう」
　公孫恭「寛大な御処置に感謝致します。玄菟郡にいる管寧にこの書状を渡せば、玄菟郡も降伏するかと」
　司馬懿「これはこれは、こちらとしても避けられぬものなら避けたいですからな。感謝しますぞ」
　曹丕「公孫康であったな。良き働きであった」
　公孫康「ははぁ」
　遼西郡を降伏させた曹丕は玄菟郡へと侵攻する。その対応に追われる管寧・邴原・王烈。
　管寧「もうここにきたということは遼西郡の公孫康様が破れたというのか！」
　邴原「流石、曹操軍。勢いも袁紹などとは桁違いだ。降伏するのが良いだろう」
　王烈「では迎え入れるとしよう」
　だが、この命令が届く前に曹丕は到着し、門兵に手紙を渡したのだ。
　門兵「こちらを届けに参りました」
　管寧「うむ。御苦労。何々。なんと！？公孫康様も同じ考えであったか。承知した」
　邴原「なんて書いてあったんだ？」
　管寧「公孫度様に曹操の支配地となる代わりに遼東の自治を認めてもらうといった内容だ」
　王烈「ということは、公孫康様は」
　管寧「あぁ、降伏なされたようだ」
　邴原「なら断る必要はないな」
　3人は曹丕たちを迎え入れた。
　曹丕「降伏してくれて感謝するぞ」
　管寧「曹操様の御子息殿に御拝謁できて、感謝致します」
　司馬懿「此度の降伏、無駄な戦を避けることができて感謝している」
　邴原「この遼東は公孫度様が導いてくれているお陰で、こうして皆が伸び伸びと生活できております。曹丕様の手足となって働きますが公孫度様にどうかこの遼東の自治をお認めください」
　曹丕「こうも慕われていて、皆が公孫度とやらのために頭を下げ、戦を避け、降伏するとは、面白い男なのだろう。俺が跡を継いだ暁には、約束を果たすと誓おう」
　王烈「そのためであれば、我々も曹丕様の手足となって、働く所存」
　曹丕「その気持ちに感謝する」
　司馬懿「では、次はその遼東に」
　管寧「お待ちください。遼東の前に楽浪を取ることを進言致します」
　司馬懿「楽浪を？しかし楽浪は、遼東を通らねば行けないであろう」
　曹丕「言うからには手立てがあるのだろうな」
　管寧「はい。ここ玄菟より楽浪に物資を送るための秘密の抜け道があるのです。公孫度様とて孤立して仕舞えば降伏を決めるかと」
　司馬懿「成程、楽浪が落ちていなければそこに逃げる可能性があると。確かに一理あるでしょうな」
　曹丕「ほぅ。では行くとしようか楽浪へ」
　楽浪を守っていたのは、公孫度の配下である陽儀・柳毅である。物資が届けられると思っていた2人は、曹丕軍の突然の襲撃に対処することはできず。あっという間に囚われてしまった。
　陽儀「どうして、遼東を通らずに曹操軍が！」
　柳毅「考えていても仕方なかろう。ここは公孫度様が逃げてくるところだ。落とされるわけにはいかない」
　曹丕「抵抗するかやむおえん。呉質・朱鑠、軽く揉んで捕らえてやれ！」
　呉質「承知した」
　朱鑠「退屈していたところだ」
　陽儀「ぬかせ。これでも楽浪を預かる将軍よ。返り討ちにしてくれる。うがぁ」
　柳毅「陽儀ーーーーーー。嘘だろ。うわぁ」
　2人ともあっという間に馬から落とされて、鎧を通されて物干し竿みたいな姿で捕らわれていた。
　陽儀「離せ。こんなことをしても降伏などしないぞ」
　柳毅「いつだって、そうだ。お前ら中原の奴らは、ここを僻地だと蔑むのだ」
　司馬懿「そんなことはありませんよ。ここは良いところです。公孫度の統治も良い。だから必要なのです。お前たちの力が」
　陽儀「そんなこと言われたことなかった」
　柳毅「わかった。そこまでいってくれるなら協力する」
　曹丕「感謝するぞ」
　司馬懿の言葉が刺さった。公孫度が若い時から中原に憧れを抱いていたのと同様に、彼らここの生まれの者たちは中原に対して憧れを抱いていた。そんな、憧れの中原の人に、僻地生まれの彼らが必要だと言われたのだ。そして、周りが降伏し、孤立した公孫度もまた息子たちの説得を受け、降伏する。ここに、遼東征伐を成し遂げたのだ。これにより完全に孤立した烏桓は、幽州から離脱。行方を絡ませた。これが、曹仁が倉亭新城の堀を埋める決断をして1ヶ月のことである。それから曹丕と司馬懿だけが、洛陽へと戻り。遼東には、呉質と朱鑠を残した。それから物資と人を少しづつ少しづつ遼東へと送り、曹操が攻めあぐねて撤退を決めるその時を今か今かと待ち、堀の埋め立てを完了し、曹操たちが膠着させるため引いて数日後、袁尚軍に衝撃が走ったのだった。