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4章 三国鼎立
倉亭新城の戦い(結)
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第二陣を埋め終わった曹仁の眼前に第二陣の倍はあると思われた堀が現れた。
曹仁「馬鹿な!?三段構えの堀だと!ここまでも被害を軽微にしつつ進軍したが袁尚の奴め。ここまで強固な城を築こうとは、蛇が出てきたというところか。さらにこの堀を埋めるとなると先ほど受けた被害も考慮すると6ヶ月はかかろう。そうして城に辿り着いて、ここまで強固な防衛を敷いたのだ中にも何か施しているであろう。厄介な相手極まりないな」
牛金「許せねぇ。直接相手すれば討ち取ってやるものを!こちらにだけ被害を与えて旗色が悪くなると引きやがって!ムカつくぜ」
王双「こちらもだ。まるで嘲笑っているかのようであった」
曹仁「お前たちにも苦労をかけるな。事実、嘲笑っているのだろう。某とて、ここまでの防衛を敷けば、あのようにして敵に被害を与える。だが、それを未だ我らより兵数も上であろう袁尚がやってきたことに我らが攻める意味があるのだ」
夏侯惇「どういうことだ?」
曹仁「夏侯惇殿、気付かぬか。袁紹が死んで、殿の袁尚の評価は変わった。だが袁紹の影響力は、思った以上に大きかった。袁尚が取りまとめに時間がかかっていることは明らかであろう。ならここは無理してでもこの倉亭新城を落とす意味があるのだ。某の考えは間違っていなかった。時間がかかろうともな」
そう決意した曹仁の元に第二陣の堀まで進軍を開始していた曹操が合流する。
曹操「よもやこれほどとはな、引くことも視野に入れるべきか」
郭嘉「ダメだね。この好機を逃せば、袁尚が力をつけることになるだろうね。そうなった時、華北を制することは不可能になる」
曹操「ふむ。しかし、積極的に加わろうとしない所詮劉備も形だけの援軍を送ったということだろう。義弟の関羽を送ってきたこともあり本気だと思ったのだがな」
郭嘉「それが狙いだったんだろうね。恐らく劉備は裏で袁尚と結託してるんじゃないかな。馬超もね」
曹操「馬超は父のこともありワシに対してよく思っていないのはわかる。だが劉備に関して言えば、こちらは宛城の件を水に流してやったというのに、その実、袁尚と結んでいることは気に食わんな」
郭嘉「えぇ、ですが劉備とて華北が落ちたら次は自分の番だと考えているんだろう。荀彧の策としては、できるだけこちらの華北戦線を硬直させたい狙いがあったと考えて良いだろう」
曹操「荀彧を得られなかったことが残念でならんな」
郭嘉「そうだね。彼ほど王を助ける才覚に恵まれた人は居ないだろうね」
そこに曹仁がやってくる。
曹仁「殿、進軍に手間取り申し訳ない。しかし、この堀も埋めることを許可いただきたい」
曹操「子考、お前程の男が頭を下げるのだ。許可しよう。兵がいるというのならいくらでも貸し出してやる」
曹仁「有難き」
関羽「(ふむぅ。敵に回して厄介なのは曹仁であろうな。しかし、この被害を出しながらも進軍を続けようとは、流石兄者が最も警戒する男であるな。曹孟徳か。兄者、某がどれだけ時間を稼げるかわかりませんが何卒、早く南をお治めくだされ)」
馬超「(クソッ。このままでは袁尚殿が危ないのではないか?袁尚殿が負ければ、次は涼州なのでは、そうなった時、ここまで守りに長けている城が負けるほどだ。防衛は俺の性分ではない。なら先に仕掛けるしかないか。そろそろ考えておかないといけないか。どうすれば家族を守ることができるか。俺に父を捨てる覚悟があるかを。攻撃するということは人質となっている父を見殺しにするということだ。その覚悟が俺にあるのか。弟たちや妹や子供たち妻を守るために父を捨てる覚悟か。それとも家族を守るために曹操に膝を折るか。どうすれば良い。どうすれば)」
その頃、城にいる袁尚たち。
袁尚「袁煕兄さんの予測通りに進んでいるね」
袁煕「あぁ、そもそも外の堀は埋められることを前提に作っている。この城が真に恐ろしいのは、、、、、、」
そこで扉をノックして、郝昭が入ってくる。
郝昭「淳于瓊殿がだいぶ削ってくれたよ」
袁譚「流石だな。それにしても本当に煕の言う通り、歩みを止めねぇとはな」
袁煕「袁譚兄上、曹操とてこの戦に賭ける想いは強い。父上を討ち混乱する勢いに乗じて、一気に殲滅するつもりだったのだろうが敵わなかった。だが、こちらとて父上が亡くなり、どうするべきかと混乱している兵も多くいる。この機を逃せば、曹操は華北の覇権を得ることはできない。裏を返せば、我らが曹操に勝った実績ができれば、この華北にて勢力を盛り返すことができる」
袁尚「うん。そのためにも勝たないとね」
曹仁は宣言通り、6ヶ月をかけて、第三陣の堀を埋め立てることに成功する。そして城攻めを開始して、倉亭城の真の恐ろしさを目の当たりにするのである。
曹操「馬鹿な!?このような要塞を!これを短期間で作り上げたというのか!袁尚を侮っていたかもしれん」
曹仁「ぐっ。これは」
伝令「報告~、劉備が荊州南部の統一を完了させ、反乱の起こった交州を攻めるそぶりを見せています」
曹操「荊州だけでは飽き足らず交州まで得ようとするとは、このままでは、南は全て劉備に喰われかねん。孫策に使者を送れ。献帝の命として、交州征伐は孫策に任せるとな」
曹仁「成程、考えましたな殿。孫策と共同で挟撃策をお考えとは」
郭嘉「華北を制してから行いたかったのですが致し方ありませんね。ここは、少し引いて膠着させることにしましょう」
曹操軍が引いたことで袁尚軍は大いに沸いた。袁尚が曹操に事実上、勝ったのだ。だがその勝利に酔いしれるその日、まさに大変なことが起こっていた。あの天才軍師と渡り合ったあの男によって、事態は一変する。
曹仁「馬鹿な!?三段構えの堀だと!ここまでも被害を軽微にしつつ進軍したが袁尚の奴め。ここまで強固な城を築こうとは、蛇が出てきたというところか。さらにこの堀を埋めるとなると先ほど受けた被害も考慮すると6ヶ月はかかろう。そうして城に辿り着いて、ここまで強固な防衛を敷いたのだ中にも何か施しているであろう。厄介な相手極まりないな」
牛金「許せねぇ。直接相手すれば討ち取ってやるものを!こちらにだけ被害を与えて旗色が悪くなると引きやがって!ムカつくぜ」
王双「こちらもだ。まるで嘲笑っているかのようであった」
曹仁「お前たちにも苦労をかけるな。事実、嘲笑っているのだろう。某とて、ここまでの防衛を敷けば、あのようにして敵に被害を与える。だが、それを未だ我らより兵数も上であろう袁尚がやってきたことに我らが攻める意味があるのだ」
夏侯惇「どういうことだ?」
曹仁「夏侯惇殿、気付かぬか。袁紹が死んで、殿の袁尚の評価は変わった。だが袁紹の影響力は、思った以上に大きかった。袁尚が取りまとめに時間がかかっていることは明らかであろう。ならここは無理してでもこの倉亭新城を落とす意味があるのだ。某の考えは間違っていなかった。時間がかかろうともな」
そう決意した曹仁の元に第二陣の堀まで進軍を開始していた曹操が合流する。
曹操「よもやこれほどとはな、引くことも視野に入れるべきか」
郭嘉「ダメだね。この好機を逃せば、袁尚が力をつけることになるだろうね。そうなった時、華北を制することは不可能になる」
曹操「ふむ。しかし、積極的に加わろうとしない所詮劉備も形だけの援軍を送ったということだろう。義弟の関羽を送ってきたこともあり本気だと思ったのだがな」
郭嘉「それが狙いだったんだろうね。恐らく劉備は裏で袁尚と結託してるんじゃないかな。馬超もね」
曹操「馬超は父のこともありワシに対してよく思っていないのはわかる。だが劉備に関して言えば、こちらは宛城の件を水に流してやったというのに、その実、袁尚と結んでいることは気に食わんな」
郭嘉「えぇ、ですが劉備とて華北が落ちたら次は自分の番だと考えているんだろう。荀彧の策としては、できるだけこちらの華北戦線を硬直させたい狙いがあったと考えて良いだろう」
曹操「荀彧を得られなかったことが残念でならんな」
郭嘉「そうだね。彼ほど王を助ける才覚に恵まれた人は居ないだろうね」
そこに曹仁がやってくる。
曹仁「殿、進軍に手間取り申し訳ない。しかし、この堀も埋めることを許可いただきたい」
曹操「子考、お前程の男が頭を下げるのだ。許可しよう。兵がいるというのならいくらでも貸し出してやる」
曹仁「有難き」
関羽「(ふむぅ。敵に回して厄介なのは曹仁であろうな。しかし、この被害を出しながらも進軍を続けようとは、流石兄者が最も警戒する男であるな。曹孟徳か。兄者、某がどれだけ時間を稼げるかわかりませんが何卒、早く南をお治めくだされ)」
馬超「(クソッ。このままでは袁尚殿が危ないのではないか?袁尚殿が負ければ、次は涼州なのでは、そうなった時、ここまで守りに長けている城が負けるほどだ。防衛は俺の性分ではない。なら先に仕掛けるしかないか。そろそろ考えておかないといけないか。どうすれば家族を守ることができるか。俺に父を捨てる覚悟があるかを。攻撃するということは人質となっている父を見殺しにするということだ。その覚悟が俺にあるのか。弟たちや妹や子供たち妻を守るために父を捨てる覚悟か。それとも家族を守るために曹操に膝を折るか。どうすれば良い。どうすれば)」
その頃、城にいる袁尚たち。
袁尚「袁煕兄さんの予測通りに進んでいるね」
袁煕「あぁ、そもそも外の堀は埋められることを前提に作っている。この城が真に恐ろしいのは、、、、、、」
そこで扉をノックして、郝昭が入ってくる。
郝昭「淳于瓊殿がだいぶ削ってくれたよ」
袁譚「流石だな。それにしても本当に煕の言う通り、歩みを止めねぇとはな」
袁煕「袁譚兄上、曹操とてこの戦に賭ける想いは強い。父上を討ち混乱する勢いに乗じて、一気に殲滅するつもりだったのだろうが敵わなかった。だが、こちらとて父上が亡くなり、どうするべきかと混乱している兵も多くいる。この機を逃せば、曹操は華北の覇権を得ることはできない。裏を返せば、我らが曹操に勝った実績ができれば、この華北にて勢力を盛り返すことができる」
袁尚「うん。そのためにも勝たないとね」
曹仁は宣言通り、6ヶ月をかけて、第三陣の堀を埋め立てることに成功する。そして城攻めを開始して、倉亭城の真の恐ろしさを目の当たりにするのである。
曹操「馬鹿な!?このような要塞を!これを短期間で作り上げたというのか!袁尚を侮っていたかもしれん」
曹仁「ぐっ。これは」
伝令「報告~、劉備が荊州南部の統一を完了させ、反乱の起こった交州を攻めるそぶりを見せています」
曹操「荊州だけでは飽き足らず交州まで得ようとするとは、このままでは、南は全て劉備に喰われかねん。孫策に使者を送れ。献帝の命として、交州征伐は孫策に任せるとな」
曹仁「成程、考えましたな殿。孫策と共同で挟撃策をお考えとは」
郭嘉「華北を制してから行いたかったのですが致し方ありませんね。ここは、少し引いて膠着させることにしましょう」
曹操軍が引いたことで袁尚軍は大いに沸いた。袁尚が曹操に事実上、勝ったのだ。だがその勝利に酔いしれるその日、まさに大変なことが起こっていた。あの天才軍師と渡り合ったあの男によって、事態は一変する。
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