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4章 三国鼎立
倉亭新城の戦い(転)
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持久戦に持ち込んでくるだろうと考えていた郝昭の思惑を打ち崩すかのように2日目も曹操軍は攻撃を仕掛けてきた。それも1日目と違い確実に堀を埋めながら進んでくるのだ。
郝昭「やられたね。まさか、あの被害の次の日も攻めてくるとは、あれで一旦は持久戦に持ち込んで来ると考えていたんだけど。しかも律儀に堀を埋めながらときた」
郭淮「なら、1日目のように堀での迎撃は無理か?」
郝昭「うん。3段構えにしてもあの徹底ぶりじゃ。全く意味をなさないかな。流石、攻めと引きの名将と呼ばれる曹仁殿だよ。被害を最小限にするため着実に少しづつ進軍してきている。でも堀を埋め尽くすまでに、数ヶ月はかかるだろう。あらかじめこの辺りの土はあらかたここに持って、急傾斜の丘を作って、そこに倉亭新城を作ったからね」
郭淮「時間稼ぎにはなると?」
郝昭「それだけだね。中の迷路で次は迎撃するしかないなんてことはないけどね。淳于瓊殿が手をこまねいているわけがないからね」
淳于瓊は曹仁が堀を埋めているのを確認した後、堀の周辺に点在させている弓櫓へと向かい。矢を撃ち込み妨害を開始した。
淳于瓊「郝昭は持久戦に持ち込むと呼んでいたが今回は俺の勝ちだったな。堀を埋める曹仁軍を邪魔するぞ。呂威璜・眭元進・韓莒子・趙叡、頼りにしているぞ」
呂威璜「まさか、袁紹様によって烏巣に左遷させられたお前の監視を命じられた俺が今やお前の配下になってるなんてな」
淳于瓊「不服か?」
呂威璜「いや、結構気に入ってんだ。今の袁尚軍は居心地が良いしよ。だからこそ、この戦いを制して、反発しそうな奴らを抑えつけねぇとな」
韓莒子「そのためにも曹仁の奴の堀埋めを阻止せねばな」
趙叡「俺たちが討ち取られたら元も子もないから無理をしない程度にしないとな」
眭元進「ちげぇねぇ。近付かれるギリギリまで粘った後、相手に使われるぐらいなら弓櫓を破壊して、撤退だな」
淳于瓊「そういうことだ」
現代にもおけるゲリラ戦でのヒットアンドアウェイ戦法である。これを淳于瓊は曹仁に対して仕掛けたのである。
曹仁「堀を着実に埋めよ。時間をかけても構わぬ。土ならいくらでもあるのだからな」
???「曹仁様、本当に全てを埋める必要があるのですか?」
曹仁「牛金よ。この後、進軍する殿の負担を減らすためだ。堀を気にしながら進めというのか?」
牛金「いえ、申し訳ありません」
???「敵襲。向こうの弓櫓から矢が飛んできております」
曹仁「王双、報告ご苦労。やはり邪魔してきたな。弓櫓の方から堀を埋めてやるとしよう」
夏侯惇「承知した」
曹仁は今後のことを考えての堀を埋める侵攻作戦。淳于瓊は、できるだけ曹仁の堀埋めを遅らせる持久作戦。無理をしない曹仁の異名を相手に利用されるヒットアンドアウェイ戦法はジワジワと曹仁軍の兵を削っていく。当初2万で堀埋めをしていた兵が第一陣を埋め終わるまでに、5千人失った。
呂威璜「ここから先は絶対に行かせるな。放て放て」
牛金「弓櫓まで埋めて仕舞えば、あんな奴俺が討ち取ってくれる」
徐々に埋まっていき、これ以上は限界となった時、呂威璜が指揮をとっていた右側の第一陣の弓櫓部隊が鮮やかに第二陣の弓櫓へと撤退していく。
呂威璜「ここはこれまでとする。第二陣に引くぞ」
牛金「待て、逃げるのか。この卑怯者ども」
呂威璜「卑怯者か。戦とは泥臭くても勝てば良いのだ勝てばな」
牛金「クソがーーーーーーーー」
時を同じかして、反対側では、眭元進率いる左側第一陣の弓櫓隊が攻撃を開始していた。
眭元進「曹仁軍の堀埋めを阻止せよ。放つのだ」
王双「弓櫓まで埋めるんだ。被害を最小限に留めるために。それが曹仁軍の軍規である」
王双の指揮の元、土嚢を盾がわりにしながらそれを堀の中へと放り投げていく。みるみるうちに埋まりそうになった時、眭元進も鮮やかに第二陣に引くのである。
眭元進「良し、ここはこれまで、速やかに第二陣へと後退する」
王双「曹仁様、お得意の被害軽減戦術を敵にいいように使われようとは。それに第二陣とは?」
曹仁たちがようやく第一陣の堀を埋め終わる頃には、もう2ヶ月も経過しており、春の日差しの時期が蒸し暑い時期へと移り変わっていた。そんな曹仁の目の前に更なる堀が現れるのである。
曹仁「やってくれたものよ。まさか、これほどとはな」
夏侯惇「俺も曹仁のように進んでいれば」
曹仁「夏侯惇殿、過ぎたことを気にしていても仕方あるまい。今は、さらに現れたこの堀をどう埋めるか思案せねばならんであろうよ」
その頃には曹操本隊も第一陣を越えて、第二陣へと到着していた。
曹操「堀を越えて、また堀がありそうな坂とはな」
満寵「こんな城の作りを考えた人間がいると言うのか。それも袁尚の元に?」
郭嘉「考えていても仕方ないでしょう。埋まれば倉亭城に辿り着くと考えていたのが打ち崩されたのですから」
曹仁「いや、我らとてここまで来て引くことはできない。このまま次の堀を埋める。構いませんな殿?」
曹操「子考がそこまで言うなら任せよう」
曹仁「有難き」
どうして曹仁がここまで頑なに堀埋めを行うのか。華北を制するためにそれが近道だと考えていたからである。倉亭新城を守れば、華北での勢力を盛り返せると考えていた袁尚。倉亭城を落とすことで、華北での勝利を決定づけると考えていた曹仁。双方の意地のぶつかり合いである。曹仁は、さらに3ヶ月かけて、第二陣を埋めたのだが。
郝昭「やられたね。まさか、あの被害の次の日も攻めてくるとは、あれで一旦は持久戦に持ち込んで来ると考えていたんだけど。しかも律儀に堀を埋めながらときた」
郭淮「なら、1日目のように堀での迎撃は無理か?」
郝昭「うん。3段構えにしてもあの徹底ぶりじゃ。全く意味をなさないかな。流石、攻めと引きの名将と呼ばれる曹仁殿だよ。被害を最小限にするため着実に少しづつ進軍してきている。でも堀を埋め尽くすまでに、数ヶ月はかかるだろう。あらかじめこの辺りの土はあらかたここに持って、急傾斜の丘を作って、そこに倉亭新城を作ったからね」
郭淮「時間稼ぎにはなると?」
郝昭「それだけだね。中の迷路で次は迎撃するしかないなんてことはないけどね。淳于瓊殿が手をこまねいているわけがないからね」
淳于瓊は曹仁が堀を埋めているのを確認した後、堀の周辺に点在させている弓櫓へと向かい。矢を撃ち込み妨害を開始した。
淳于瓊「郝昭は持久戦に持ち込むと呼んでいたが今回は俺の勝ちだったな。堀を埋める曹仁軍を邪魔するぞ。呂威璜・眭元進・韓莒子・趙叡、頼りにしているぞ」
呂威璜「まさか、袁紹様によって烏巣に左遷させられたお前の監視を命じられた俺が今やお前の配下になってるなんてな」
淳于瓊「不服か?」
呂威璜「いや、結構気に入ってんだ。今の袁尚軍は居心地が良いしよ。だからこそ、この戦いを制して、反発しそうな奴らを抑えつけねぇとな」
韓莒子「そのためにも曹仁の奴の堀埋めを阻止せねばな」
趙叡「俺たちが討ち取られたら元も子もないから無理をしない程度にしないとな」
眭元進「ちげぇねぇ。近付かれるギリギリまで粘った後、相手に使われるぐらいなら弓櫓を破壊して、撤退だな」
淳于瓊「そういうことだ」
現代にもおけるゲリラ戦でのヒットアンドアウェイ戦法である。これを淳于瓊は曹仁に対して仕掛けたのである。
曹仁「堀を着実に埋めよ。時間をかけても構わぬ。土ならいくらでもあるのだからな」
???「曹仁様、本当に全てを埋める必要があるのですか?」
曹仁「牛金よ。この後、進軍する殿の負担を減らすためだ。堀を気にしながら進めというのか?」
牛金「いえ、申し訳ありません」
???「敵襲。向こうの弓櫓から矢が飛んできております」
曹仁「王双、報告ご苦労。やはり邪魔してきたな。弓櫓の方から堀を埋めてやるとしよう」
夏侯惇「承知した」
曹仁は今後のことを考えての堀を埋める侵攻作戦。淳于瓊は、できるだけ曹仁の堀埋めを遅らせる持久作戦。無理をしない曹仁の異名を相手に利用されるヒットアンドアウェイ戦法はジワジワと曹仁軍の兵を削っていく。当初2万で堀埋めをしていた兵が第一陣を埋め終わるまでに、5千人失った。
呂威璜「ここから先は絶対に行かせるな。放て放て」
牛金「弓櫓まで埋めて仕舞えば、あんな奴俺が討ち取ってくれる」
徐々に埋まっていき、これ以上は限界となった時、呂威璜が指揮をとっていた右側の第一陣の弓櫓部隊が鮮やかに第二陣の弓櫓へと撤退していく。
呂威璜「ここはこれまでとする。第二陣に引くぞ」
牛金「待て、逃げるのか。この卑怯者ども」
呂威璜「卑怯者か。戦とは泥臭くても勝てば良いのだ勝てばな」
牛金「クソがーーーーーーーー」
時を同じかして、反対側では、眭元進率いる左側第一陣の弓櫓隊が攻撃を開始していた。
眭元進「曹仁軍の堀埋めを阻止せよ。放つのだ」
王双「弓櫓まで埋めるんだ。被害を最小限に留めるために。それが曹仁軍の軍規である」
王双の指揮の元、土嚢を盾がわりにしながらそれを堀の中へと放り投げていく。みるみるうちに埋まりそうになった時、眭元進も鮮やかに第二陣に引くのである。
眭元進「良し、ここはこれまで、速やかに第二陣へと後退する」
王双「曹仁様、お得意の被害軽減戦術を敵にいいように使われようとは。それに第二陣とは?」
曹仁たちがようやく第一陣の堀を埋め終わる頃には、もう2ヶ月も経過しており、春の日差しの時期が蒸し暑い時期へと移り変わっていた。そんな曹仁の目の前に更なる堀が現れるのである。
曹仁「やってくれたものよ。まさか、これほどとはな」
夏侯惇「俺も曹仁のように進んでいれば」
曹仁「夏侯惇殿、過ぎたことを気にしていても仕方あるまい。今は、さらに現れたこの堀をどう埋めるか思案せねばならんであろうよ」
その頃には曹操本隊も第一陣を越えて、第二陣へと到着していた。
曹操「堀を越えて、また堀がありそうな坂とはな」
満寵「こんな城の作りを考えた人間がいると言うのか。それも袁尚の元に?」
郭嘉「考えていても仕方ないでしょう。埋まれば倉亭城に辿り着くと考えていたのが打ち崩されたのですから」
曹仁「いや、我らとてここまで来て引くことはできない。このまま次の堀を埋める。構いませんな殿?」
曹操「子考がそこまで言うなら任せよう」
曹仁「有難き」
どうして曹仁がここまで頑なに堀埋めを行うのか。華北を制するためにそれが近道だと考えていたからである。倉亭新城を守れば、華北での勢力を盛り返せると考えていた袁尚。倉亭城を落とすことで、華北での勝利を決定づけると考えていた曹仁。双方の意地のぶつかり合いである。曹仁は、さらに3ヶ月かけて、第二陣を埋めたのだが。
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