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4章 三国鼎立
難航する馬探し?
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張達が話し始める。
張達「では、先ずは、士仁から聞いた劉丁様の愛馬に似た馬を探すところからこの物語は始まるんだぜ」
義賢「いきなりの語り口調だな。まぁ、その物語、楽しみに聞かせてもらうとしよう」
牝愛「キャッキャ」
董白「ワクワクしますね」
張達「これは、1年前、俺たちが幽州、楼桑村を目指していた時のこと」
義賢「俺の故郷だな」
董白「そうなのですね?」
義賢「言ってなかったか?」
董白「そういえば、義賢が義勇兵をしていたと聞いただけでどこ出身までは聞いたことはなかったかもしれませんわ」
義賢「そうか。あれは」
張達「すぐ脱線しなさんな!先ずは、聞くも涙・語るも涙の馬探しの話を聞いてくれ!」
義賢「すまんすまん」
張達「では、続きを話しますよ」
【幽州・楼桑村】
士仁「この辺りもすっかり変わってしまったな。皆がこの有り様を見たらと思うと」
范疆「この荒れ果てた村が劉丁様の故郷だか?」
士仁「あぁ、俺も出稼ぎでこの村へとやってきていた。その時に知ったのだ。武の劉備様・智の劉丁様と仲の良い2人の兄弟のことをな。確か、ここに来ていた馬の行商人が連れてきた馬が劉備様の愛馬である的盧と劉丁様の愛馬である黝廉だった。あの者に会えれば、黝廉に似た馬が何処にいるか聞けるのだが」
張達「じゃあ、探すしかねぇだろ。この荒れ果てた村で商売ができるとは思えねぇ。ここから近い村はねぇのか?」
士仁「ここから近い村か。隣郡の方城《ホウジョウ》に大きい村があったはずだ。まだ、馬で商売をしているとしたらそこだろうな」
張達「じゃあ、そこに行こうぜ。俺も調達の仕事をしているからよ。同じことをしてそうな奴には鼻が効くんだ」
麋芳「張達、お前は犬か犬なのか?」
張達「何言ってんだ麋芳?こんな事、調達の仕事を生業としている人間には当然の技能だぜ」
范疆「オイラも実家が農家だからこの荒れ果てた土地を見ると無性に耕したくなるだ。それも劉丁様の故郷と聞くと余計にだ」
士仁「その気持ちは、劉備様がここにお戻りになった時にとっておけ、今は方城に向かおう」
范疆「わかっただ」
方城に着くと活気のある大きな村があった。
漁師の男「いらっしゃい。新鮮な魚を取り揃えてるぜ。見ていってくれよな」
農家の女「家で取れた新鮮なお野菜はいかがですか?」
鍛治師の男「袁尚様、御用達の武器はいらんかね?」
張達が人がごった返し、そこら中から聞こえる喧騒を掻き分けて、奥に進むとそこに馬屋があった。
張達「だから言っただろう。同じ仕事をしている奴には鼻が効くってよ」
士仁「だが、ここがかつて楼桑村で行商人をしていたのかはわからない。尋ねてみるとしよう。ごめんください」
奥から20歳そこそこの男性が出てきた。
馬屋の男「馬をお探しですか?」
士仁「失礼ですが店主殿ですか?」
馬屋の男「はい。どのような馬をお探しで?」
士仁「すまない。どうやら店を間違えたようだ。失礼する」
馬屋の男「待ってください。何やら只事では無い様子。よければ、話してくださいませんか?」
張達「士仁、そうだぜ。ひょっとしたら、楼桑村で行商人をしていた男のことがわかるかも知れねぇだろ。聞いてみようぜ」
士仁「うむ」
馬屋の男「楼桑村?あー楼桑村か。父が生前、馬の行商を行っていた村です。懐かしいな。もう16年も前になるんですね。双子の凶馬は片方の馬を殺さないといけないんです。でもあまりの毛並みの綺麗さに僕が殺さないで~って子供ながら泣いて止めたんですよ。あの馬、元気かな。確か劉丁さんだったかな?その人にたくさん買ってもらった馬の御礼として、別の馬をおまけしようとしたらあの子たちを貰ってくれたって嬉しそうに話してたな」
士仁「そうです。その話を聞きにきたんです。お父上は御在宅ですか?」
馬屋の男「父は、今から5年ほど前に老衰しました。俺は、父が歳行ってから産まれた息子でして」
士仁「そうでしたか。御冥福をお祈り致す」
馬屋の男「ありがとうございます。ところで、あの子達は元気ですか?」
士仁「片方は我が殿、劉備様の愛馬として、もう片方はその弟君、劉丁様の愛馬として、大変可愛がられていました」
馬屋の男「可愛がられていた?今は、そうでは無いと聞こえますが何かあったのですか?まさか」
士仁「いえ、劉丁様の愛馬であった黝廉という黒い牝馬なのですが戦で劉丁様を守って亡くなったと」
馬屋の男「そうでしたか。名前まで与えてもらって、あの黒いお転婆のお馬ちゃんが。子供ながらに助けたことを今更ながらに嬉しく思います。あの子は劉丁さんのことがとても大好きだったんでしょう。身を挺して守ったのでしょうから。わざわざ知らせてくださりありがとうございます」
士仁「意気消沈した劉丁様のために似た馬を求めて、かつての人の話が聞けないかとこちらに訪ねてきたのです」
張達「あんちゃん、どうにか何ないのかよ?」
馬屋の男「そうですね。あの子たちも借金のカタに引き取った馬だったんです。今でこそ、馬を売ることで生活できているのですが当時はそれだけでは生活するのがやっとで、父は商魂逞しく兵士相手に馬貸しもやっていて、返済できなくなった兵士たちの親から色々と借金のカタに取り上げていたのです。その一つがあの子たちでした」
張達「それって即ち、打つ手無しってことかよ」
馬屋の男「お役に立てず申し訳ありません。いや、待ってください。噂なので信憑性があるかは分かりませんがそれでもよければお聞きになりますか?」
士仁「是非」
噂話とはなんなのだろうか?
張達「では、先ずは、士仁から聞いた劉丁様の愛馬に似た馬を探すところからこの物語は始まるんだぜ」
義賢「いきなりの語り口調だな。まぁ、その物語、楽しみに聞かせてもらうとしよう」
牝愛「キャッキャ」
董白「ワクワクしますね」
張達「これは、1年前、俺たちが幽州、楼桑村を目指していた時のこと」
義賢「俺の故郷だな」
董白「そうなのですね?」
義賢「言ってなかったか?」
董白「そういえば、義賢が義勇兵をしていたと聞いただけでどこ出身までは聞いたことはなかったかもしれませんわ」
義賢「そうか。あれは」
張達「すぐ脱線しなさんな!先ずは、聞くも涙・語るも涙の馬探しの話を聞いてくれ!」
義賢「すまんすまん」
張達「では、続きを話しますよ」
【幽州・楼桑村】
士仁「この辺りもすっかり変わってしまったな。皆がこの有り様を見たらと思うと」
范疆「この荒れ果てた村が劉丁様の故郷だか?」
士仁「あぁ、俺も出稼ぎでこの村へとやってきていた。その時に知ったのだ。武の劉備様・智の劉丁様と仲の良い2人の兄弟のことをな。確か、ここに来ていた馬の行商人が連れてきた馬が劉備様の愛馬である的盧と劉丁様の愛馬である黝廉だった。あの者に会えれば、黝廉に似た馬が何処にいるか聞けるのだが」
張達「じゃあ、探すしかねぇだろ。この荒れ果てた村で商売ができるとは思えねぇ。ここから近い村はねぇのか?」
士仁「ここから近い村か。隣郡の方城《ホウジョウ》に大きい村があったはずだ。まだ、馬で商売をしているとしたらそこだろうな」
張達「じゃあ、そこに行こうぜ。俺も調達の仕事をしているからよ。同じことをしてそうな奴には鼻が効くんだ」
麋芳「張達、お前は犬か犬なのか?」
張達「何言ってんだ麋芳?こんな事、調達の仕事を生業としている人間には当然の技能だぜ」
范疆「オイラも実家が農家だからこの荒れ果てた土地を見ると無性に耕したくなるだ。それも劉丁様の故郷と聞くと余計にだ」
士仁「その気持ちは、劉備様がここにお戻りになった時にとっておけ、今は方城に向かおう」
范疆「わかっただ」
方城に着くと活気のある大きな村があった。
漁師の男「いらっしゃい。新鮮な魚を取り揃えてるぜ。見ていってくれよな」
農家の女「家で取れた新鮮なお野菜はいかがですか?」
鍛治師の男「袁尚様、御用達の武器はいらんかね?」
張達が人がごった返し、そこら中から聞こえる喧騒を掻き分けて、奥に進むとそこに馬屋があった。
張達「だから言っただろう。同じ仕事をしている奴には鼻が効くってよ」
士仁「だが、ここがかつて楼桑村で行商人をしていたのかはわからない。尋ねてみるとしよう。ごめんください」
奥から20歳そこそこの男性が出てきた。
馬屋の男「馬をお探しですか?」
士仁「失礼ですが店主殿ですか?」
馬屋の男「はい。どのような馬をお探しで?」
士仁「すまない。どうやら店を間違えたようだ。失礼する」
馬屋の男「待ってください。何やら只事では無い様子。よければ、話してくださいませんか?」
張達「士仁、そうだぜ。ひょっとしたら、楼桑村で行商人をしていた男のことがわかるかも知れねぇだろ。聞いてみようぜ」
士仁「うむ」
馬屋の男「楼桑村?あー楼桑村か。父が生前、馬の行商を行っていた村です。懐かしいな。もう16年も前になるんですね。双子の凶馬は片方の馬を殺さないといけないんです。でもあまりの毛並みの綺麗さに僕が殺さないで~って子供ながら泣いて止めたんですよ。あの馬、元気かな。確か劉丁さんだったかな?その人にたくさん買ってもらった馬の御礼として、別の馬をおまけしようとしたらあの子たちを貰ってくれたって嬉しそうに話してたな」
士仁「そうです。その話を聞きにきたんです。お父上は御在宅ですか?」
馬屋の男「父は、今から5年ほど前に老衰しました。俺は、父が歳行ってから産まれた息子でして」
士仁「そうでしたか。御冥福をお祈り致す」
馬屋の男「ありがとうございます。ところで、あの子達は元気ですか?」
士仁「片方は我が殿、劉備様の愛馬として、もう片方はその弟君、劉丁様の愛馬として、大変可愛がられていました」
馬屋の男「可愛がられていた?今は、そうでは無いと聞こえますが何かあったのですか?まさか」
士仁「いえ、劉丁様の愛馬であった黝廉という黒い牝馬なのですが戦で劉丁様を守って亡くなったと」
馬屋の男「そうでしたか。名前まで与えてもらって、あの黒いお転婆のお馬ちゃんが。子供ながらに助けたことを今更ながらに嬉しく思います。あの子は劉丁さんのことがとても大好きだったんでしょう。身を挺して守ったのでしょうから。わざわざ知らせてくださりありがとうございます」
士仁「意気消沈した劉丁様のために似た馬を求めて、かつての人の話が聞けないかとこちらに訪ねてきたのです」
張達「あんちゃん、どうにか何ないのかよ?」
馬屋の男「そうですね。あの子たちも借金のカタに引き取った馬だったんです。今でこそ、馬を売ることで生活できているのですが当時はそれだけでは生活するのがやっとで、父は商魂逞しく兵士相手に馬貸しもやっていて、返済できなくなった兵士たちの親から色々と借金のカタに取り上げていたのです。その一つがあの子たちでした」
張達「それって即ち、打つ手無しってことかよ」
馬屋の男「お役に立てず申し訳ありません。いや、待ってください。噂なので信憑性があるかは分かりませんがそれでもよければお聞きになりますか?」
士仁「是非」
噂話とはなんなのだろうか?
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