えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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4章 三国鼎立

許貢の決断

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 診療所に左慈が訪ねてくる。
 左慈「張角は居るか。左慈と申す者が参ったと伝えてくれぬか?」
 張曼成「了解した」
 張曼成が中に入りしばらくすると張角を伴い出てきた。
 張角「これは左慈方士殿、どうされましたか?」
 左慈「于吉の気を追ってここに来た。来ているのであろう?」
 張角「なんでもお見通のようですな。えぇ、どうやら妊婦の身体を利用している模様」
 左慈「それを知っていて、何故、悠長にしている」
 梟「于吉だと!?何を言っている。アイツは死んだではないか!」
 翔「まさか、柊姉さんに取り憑いたとでもいうのか!」
 蓮「そんな事、信じられない」
 左慈「取り憑いたというのではない。恐らくお前たちの言う柊という女性を利用して、種を仕込み。呪術の一つとして、蘇りの術の媒介に利用したのであろう」
 梟「だとしたら許貢様が危ない。それに柊も」
 張角「既に手は打っている」
 張角が許貢と診療所に入る時、耳元で許貢に聞こえるように呟く。
 張角「許貢殿でしたな。奥様のお腹にいる子は貴方の子ではない。于吉じゃ」
 許貢「!?何を言っている?アイツは死んだはず」
 張角「ワシもさっきまでそう思っていた。だが、許貢殿の姿を見て確信した。死んでいなかったのだと、尚も利用しているのだと」
 許貢「どういう事だ?」
 張角「于吉が本当に死んだのなら于吉の呪術を受け蘇った貴方も消えるはず。それが生きているという事は、何かの媒介に使われたと考えるのが良い」
 許貢「まさか、ワシと柊なら情事に及ぶことを見越して、ワシの中に流れる呪力を吸収していたというのか。そのようなことも知らずにワシは」
 張角「辛い決断をさせるようだが、許貢殿はどうしたい?」
 許貢「あの男に操られていたからわかる。あのような男をのさばらしてはならん。殺してくれ。だが、柊を傷つけてほしくない。せめて、柊の知らないところで産まれた子は死産だったとそうお願いできるか?」
 張角「了解した。宝にもそのように伝えておこう」
 許貢「于吉が消えれば俺も消えるか。残された時間は少なかったのに、復讐なんて虚しいものに費やしてしまった。もっと、柊のそばに居てやれば良かった」
 張角「辛い選択をさせたな」
 許貢「良いのだ。あのような憎悪の塊をこの世にのさばらせておくほうがよっぽど危ない」
 左慈がこの話を聞く。
 左慈「うむ。だが、産まれて仕舞えば奴のこと。すぐに呪術をかけようぞ」
 張角「だから、師匠から聞いた呪術の力を一時的に防ぐことを施させてもらった」
 左慈「成程な。了解じゃ。小生も待つとしよう」
 その頃、奥では、柊がまもなく于吉を産み落とそうとしていた。その時、許貢が席を立つ。
 柊「旦那様?」
 許貢「すまない緊張で、下がヤバいのだ。厠は何処か?」
 張宝「それなら、そこを曲がってすぐのところです」
 許貢「蕾、ワシが戻るまでの間、柊の手を握って声をかけ続けて欲しい。すまぬ」
 蕾「了解しました」
 許貢が出てくる。
 張角「別れは済ませられたか?」
 許貢「無理であろう。どんな顔をして、今からワシも消えるなどと言える」
 梟「では、この者たちの話は真実なのか」
 翔「そんな。せっかく柊姉さんも立ち直って幸せになれると思ったのに」
 蓮「許貢様、本当に良いのですか?」
 許貢「お前たちも聞いたのだな。あぁ、あのような男をのさばらしておくほうがよっぽどだからな」
 梟「許貢様」
 許貢「梟、食客集団、闇夜団は今日で解散だ。今まで、良く仕えてくれたな。そんなお前たちにワシから頼みたい事がある。この診療所は警備が行き届いていない。院長が良い人すぎるのだろう。だが、それではいつか足元を掬われるかもしれん。お前たちで警備を担ってくれないか。もう復讐に囚われるな。お前たちも自分たちの幸せのために生きよ。俺は哀れであった。残り時間が少ないことを知っていたらもっと柊のそばに居たかった。お前たちはワシのような後悔をしてほしくない。わかったな。では、後はお任せします張角殿」
 梟「許貢様の命とあれば」
 張角「了解した。張宝には、産まれた子を連れて、処置室にくるように伝えている。左慈方士、参りましょう」
 左慈「うむ。小生も役目を果たすとしよう」
 柊が赤ん坊を産み落とすが産声が聞こえない。
 柊「赤ちゃんは?」
 于吉「おっ(馬鹿な呪術が使えん。それに張宝め。口を塞ぎおって、これでは、声を出せんではないか)」
 張宝は産声を上げさせないように口を塞いでいたのだ。
 張宝「これはまずいですわ。すぐに処置をしないと兄上ー」
 張宝は隣の処置室へと駆け込んだ。そこには張角と左慈が待ち構えていた。
 張宝「兄上、赤ちゃんの口を塞ぐなんて、こんな経験もう2度としたくありません」
 張角「すまない宝よ。で、兄弟子よ。上手くやりよったな」
 于吉「!?ククク、アヒャヒャヒャヒャ。まさか見抜かれていようとはなぁ。赤ちゃんの姿で話すのは疲れるがどういうわけか呪術が身体に流れ込んで来ぬ」
 張角「師匠直伝の呪術封じを施させてもらったからな」
 于吉「成程。あのクソジジイめ。やはり、コッソリ継承していやがったか」
 左慈「では、完全にこの世から滅させてもらうぞ」
 于吉「左慈方士までいるとはなぁ。アヒャヒャヒャヒャ。もう少しであったというものを三度邪魔をしてくれおって、やはりお前は大嫌いじゃ張角」
 張角「ワシもじゃ于吉」
 左慈が呪符を巻きつけて、黄泉送りの術を使った。
 于吉「方士どもお得意の黄泉送りか。呪術で蘇ったものを冥府に戻す。ククク、アヒャヒャヒャヒャ。地獄で閻魔をも従えて見せようぞ。ぐぁぁぁぁぁぉぁぉぁ」
 叫び声をあげて、于吉が完全に消滅した。
 左慈「終わったな。于吉の気は消えた」
 張角「そのようですな」
 左慈「お前、于吉のことをそれほど嫌っていなかったのであろう」
 張角「確かに闇があるとは思っておりましたが師匠の元で学ぶ兄弟子だと尊敬もしておりました。だからこそ口惜しいのです。止めてやれなかった事が」
 左慈「無理であろう。あの男の醜悪さは、死んでも治らんよ」
 張角「地獄で同じことをやって閻魔様に気に入られやしないでしょうか?」
 左慈「あり得ない話ではないかもしれんな」
 こうして、于吉は完全にこの世から消滅したのだった。
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