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4章 三国鼎立
魏延と李杏の婚姻
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狸老からの手紙で、槃李杏が魏延を伴って、襄陽城へ来ると聞き、またあの蛮族を相手にしないといけないのかと頭を抱える劉備。
劉備「趙雲よ。伝令役大義である。槃李杏が魏延を伴い。こちらに向かってきているとのことだ」
趙雲「偶々、手が空いていただけのことです。殿、防衛の準備をするべきでしょうか?」
荀彧「いえ趙雲殿、その必要はないかと。戦をするつもりなら槃李杏と魏延殿だけということはあり得ないでしょう」
諸葛亮「えぇ。荀彧殿の申す通りです。それに、いきなり戦ということにはならないでしょう。先ずは、相手の様子を見るのが良いかと」
劉備「うむ。民を弄んだ蛮族などと戯れたくはないがこれも仕方ないことであるな。此度も必死に耐えて見せよう」
それから数日後、魏延と李杏が襄陽城へと入ってきた。
李杏「槃瓠族の代表で当主を務めています槃李杏と申します。この度は、御足労いただき感謝します」
魏延「李杏、御足労は劉備殿がかけてくれる言葉だから、この場合は、急な来訪の許可を頂きになる」
李杏「あっ。大変失礼しました。この度は、急な来訪にも関わらずお会いいただき感謝します」
このやりとりに劉備はすっかり毒牙が抜け、少し笑った。
劉備「フフッ。いや失礼した。民を大量に弄んだと聞いていた槃瓠族の当主がこのように礼儀知らずだったことに驚きとそれを踏まえてやり直す頑張りに少し笑ってしまった。遠路はるばる、御苦労である」
李杏「礼儀知らずでごめんなさい。この手のことは全て狸老に任せていたので、でもこれからきちんと勉強します。だから魏延との結婚を認めてください」
魏延「おい李杏!」
劉備「ハッハッハッ。いきなり本題とはな。全く、そういうところは翼徳に似てるな」
張飛「大兄者、そりゃねぇぜ。俺の方がまだ賢いってんだ」
李杏「あの、それで御返事は?」
魏延「李杏!失礼だぞ!」
劉備「良いのだ魏延殿。して、李杏殿だったな?」
李杏「はい」
劉備「私は民を重んじる人徳の士だ。その私の元に、民を軽んじると聞く者を置くことはできん。だが、あくまで表舞台に立たず陰ながら魏延殿を支えるというのであれば、私に強く拒否することなどできん」
李杏「それは、私に武器を置き、魏延の家庭に入り、家で魏延の帰りを待てということでしょうか?」
劉備「あぁ。そのような解釈で間違ってはいない」
魏延「お待ちください劉備様。李杏は、この通り箱入り娘。善悪の判断が付かないのです。だからこそ私の妻として、自分の犯した罪と向き合わせることにしたのです。1人にしたらまた自分の殻に閉じこもってしまうでしょう。どうか、それだけは」
諸葛亮「では、魏延殿も共に民として、暮らすのが良いでしょう」
魏延「貴方は?」
諸葛亮「これは失礼しました。諸葛孔明と申します」
魏延「貴方が諸葛亮殿でしたか。先ほどの発言、俺を民に降格させると聞こえる」
諸葛亮「えぇ、同じく罪を背負った。殿の弟君である劉丁殿は民となり、自分の罪と向き合っておられます。李杏殿の側で罪と向き合うのを見届けたいのならそれが良いかと考えますが」
魏延「劉丁殿が民に?」
諸葛亮「えぇ、あの御方は勝手な判断をして、5万の兵を討ち死にさせたのですから処断でも文句はないところ。多くの者たちからの嘆願により民への降格処分となったのです」
李杏「でもそれは計略だったって?私たちの住む武陵山脈の正確な地図を作ることだったと。地図なんか作って何の意味があるのかわかんないけど」
諸葛亮「えぇ、ですが5万の兵を討ち死にさせたことに変わりはありません。そういうことも評価され民への降格処分で済んだのです」
李杏「地図ってそんなに凄いの?」
諸葛亮「地図を見ればどこをどうやって攻めるべきかここにいながら前線に指示を出すことさえできます。正確な地図とは、国を守る上での生命線なのです」
李杏「そんな。だから皆んな、喉元に刃を突きつけられたとか言ってたのね。地図にそんな効果があるなんて、全然知らなかった」
諸葛亮「話を戻しましょう。劉丁殿ですら罪を自覚して御自身と向き合っているのに、魏延殿は李杏殿を妻として迎え将軍のまま登用してもらおうと考えているのですかな?」
魏延「ぐっ。それは」
荀彧「所詮、その程度の覚悟だったのでしょう。我らにとっても魏延殿と李杏殿を迎え入れることは損でしかありません。早急に武陵山脈へとお帰りいただくのが良いかと」
劉備「あぁ、そうだな」
魏延「待ってくれ、いや待ってください。わかりました。俺は民となり李杏の側で李杏と共に罪と向き合わせてもらいます」
李杏「魏延が私のために人生を捨てる必要なんてない。やっぱり私に平地は無理だったのよ」
諸葛亮「えぇ、無理でしょうね。貴方自身がこの国の英雄槃瓠の真実について、疑っているのですから」
李杏「どうして、そのことを?」
劉備「ゴホン。だが魏延殿が民となるのは私としても忍びない。ここは、暫く休養という形を取り、共に罪と向き合うのが良いだろう。それにこの2人のお互いを思う気持ちは本物だ。婚姻は認めよう。もう下がっても良い」
李杏「お話はまだ、どうして諸葛亮は、あっ諸葛亮殿は、槃瓠の真実についてご存知なのです?ちょっと待ってください。ちょっと」
李杏は魏延に引っ張られながら共にその場を後にする。
劉備「趙雲よ。伝令役大義である。槃李杏が魏延を伴い。こちらに向かってきているとのことだ」
趙雲「偶々、手が空いていただけのことです。殿、防衛の準備をするべきでしょうか?」
荀彧「いえ趙雲殿、その必要はないかと。戦をするつもりなら槃李杏と魏延殿だけということはあり得ないでしょう」
諸葛亮「えぇ。荀彧殿の申す通りです。それに、いきなり戦ということにはならないでしょう。先ずは、相手の様子を見るのが良いかと」
劉備「うむ。民を弄んだ蛮族などと戯れたくはないがこれも仕方ないことであるな。此度も必死に耐えて見せよう」
それから数日後、魏延と李杏が襄陽城へと入ってきた。
李杏「槃瓠族の代表で当主を務めています槃李杏と申します。この度は、御足労いただき感謝します」
魏延「李杏、御足労は劉備殿がかけてくれる言葉だから、この場合は、急な来訪の許可を頂きになる」
李杏「あっ。大変失礼しました。この度は、急な来訪にも関わらずお会いいただき感謝します」
このやりとりに劉備はすっかり毒牙が抜け、少し笑った。
劉備「フフッ。いや失礼した。民を大量に弄んだと聞いていた槃瓠族の当主がこのように礼儀知らずだったことに驚きとそれを踏まえてやり直す頑張りに少し笑ってしまった。遠路はるばる、御苦労である」
李杏「礼儀知らずでごめんなさい。この手のことは全て狸老に任せていたので、でもこれからきちんと勉強します。だから魏延との結婚を認めてください」
魏延「おい李杏!」
劉備「ハッハッハッ。いきなり本題とはな。全く、そういうところは翼徳に似てるな」
張飛「大兄者、そりゃねぇぜ。俺の方がまだ賢いってんだ」
李杏「あの、それで御返事は?」
魏延「李杏!失礼だぞ!」
劉備「良いのだ魏延殿。して、李杏殿だったな?」
李杏「はい」
劉備「私は民を重んじる人徳の士だ。その私の元に、民を軽んじると聞く者を置くことはできん。だが、あくまで表舞台に立たず陰ながら魏延殿を支えるというのであれば、私に強く拒否することなどできん」
李杏「それは、私に武器を置き、魏延の家庭に入り、家で魏延の帰りを待てということでしょうか?」
劉備「あぁ。そのような解釈で間違ってはいない」
魏延「お待ちください劉備様。李杏は、この通り箱入り娘。善悪の判断が付かないのです。だからこそ私の妻として、自分の犯した罪と向き合わせることにしたのです。1人にしたらまた自分の殻に閉じこもってしまうでしょう。どうか、それだけは」
諸葛亮「では、魏延殿も共に民として、暮らすのが良いでしょう」
魏延「貴方は?」
諸葛亮「これは失礼しました。諸葛孔明と申します」
魏延「貴方が諸葛亮殿でしたか。先ほどの発言、俺を民に降格させると聞こえる」
諸葛亮「えぇ、同じく罪を背負った。殿の弟君である劉丁殿は民となり、自分の罪と向き合っておられます。李杏殿の側で罪と向き合うのを見届けたいのならそれが良いかと考えますが」
魏延「劉丁殿が民に?」
諸葛亮「えぇ、あの御方は勝手な判断をして、5万の兵を討ち死にさせたのですから処断でも文句はないところ。多くの者たちからの嘆願により民への降格処分となったのです」
李杏「でもそれは計略だったって?私たちの住む武陵山脈の正確な地図を作ることだったと。地図なんか作って何の意味があるのかわかんないけど」
諸葛亮「えぇ、ですが5万の兵を討ち死にさせたことに変わりはありません。そういうことも評価され民への降格処分で済んだのです」
李杏「地図ってそんなに凄いの?」
諸葛亮「地図を見ればどこをどうやって攻めるべきかここにいながら前線に指示を出すことさえできます。正確な地図とは、国を守る上での生命線なのです」
李杏「そんな。だから皆んな、喉元に刃を突きつけられたとか言ってたのね。地図にそんな効果があるなんて、全然知らなかった」
諸葛亮「話を戻しましょう。劉丁殿ですら罪を自覚して御自身と向き合っているのに、魏延殿は李杏殿を妻として迎え将軍のまま登用してもらおうと考えているのですかな?」
魏延「ぐっ。それは」
荀彧「所詮、その程度の覚悟だったのでしょう。我らにとっても魏延殿と李杏殿を迎え入れることは損でしかありません。早急に武陵山脈へとお帰りいただくのが良いかと」
劉備「あぁ、そうだな」
魏延「待ってくれ、いや待ってください。わかりました。俺は民となり李杏の側で李杏と共に罪と向き合わせてもらいます」
李杏「魏延が私のために人生を捨てる必要なんてない。やっぱり私に平地は無理だったのよ」
諸葛亮「えぇ、無理でしょうね。貴方自身がこの国の英雄槃瓠の真実について、疑っているのですから」
李杏「どうして、そのことを?」
劉備「ゴホン。だが魏延殿が民となるのは私としても忍びない。ここは、暫く休養という形を取り、共に罪と向き合うのが良いだろう。それにこの2人のお互いを思う気持ちは本物だ。婚姻は認めよう。もう下がっても良い」
李杏「お話はまだ、どうして諸葛亮は、あっ諸葛亮殿は、槃瓠の真実についてご存知なのです?ちょっと待ってください。ちょっと」
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