えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
上 下
273 / 640
4章 三国鼎立

荀彧の策

しおりを挟む
 これは義賢が謹慎を言い渡される前の話で、張繍が宛城の奪還を願い出に来た翌日のこと。
 荀攸「叔父上、何故、あのような。それに劉丁殿の奥方まで巻き込めば、曹操側に我らの関与を疑われかねませんぞ!」
 荀彧「それで良いのですよ荀攸。それこそが狙いなのですから」
 荀攸「どういう意味ですか叔父上?」
 荀彧「当初、まさかここまで華北戦線が膠着するとは考えていませんでした。ですが蓋を開けてみたら袁紹が亡くなり仲違いしていた三兄弟の共闘、倉亭から奥に押し込めない曹操。この機に、我が殿の後顧の憂いを完全に断つ必要があったのです。益州の劉璋は配下が曹操派と我が殿の派閥に分かれていて、すぐに行動に移ることはない。涼州の馬騰も妻を亡くしてからは、まるで魂の抜けたように、行動が止まってしまい期待できない。漢中の張魯は、我が殿のこと何故かを高く評価していて、劉璋の目を惹きつけてくれている。今、最もこの状態で怖いのは誰か?」
 荀攸「揚州を治める孫策か?しかし、叔父上は当初劉丁殿と共に益州の劉璋を降した後揚州の孫策を降す天下二分を提唱していたはず。何故、心変わりを?」
 荀彧「いえ、荀攸。それは違います。私は今でも天下二分を提唱していますよ。ただ、その順を変更しただけです」
 荀攸「でも、そうなら。それこそ張繍殿の提案は悪手なのでは?」
 荀彧「いえ、奉孝を巻き込んだのですよ」
 荀攸「郭嘉殿を?」
 荀彧「華北の膠着をなんとしても打開したい奉孝のこと。我が軍には、監視を送り込んでいることでしょう。張繍殿と董白殿に思い至れば、我らを巻き込むための計略を弄するはず」
 荀攸「!?。成程。叔父上にはやはり敵いませんな。郭嘉殿のことを知り尽くしているからこそ。それこそ叔父上にしかできない完璧な策ですな」
 荀彧「やっと策の本質に思い至ったようですね」
 荀彧の考えた通りに物事が進み。張繍と董白のことを知った郭嘉は劉備を対袁尚戦線に巻き込むために訪ねてきた。そこで、さらに一芝居打ったのだ。敢えて、我らしか知らない情報、仮面と頭巾の話をそれとなく話の流れで出すことで、我らの失態を郭嘉が付きやすいように、それらの計略がなった翌日のこと。関羽は荀彧に呼び出されていた。
 関羽「失礼致す」
 荀彧「関羽殿、よく来てくださいました」
 関羽「先日の件、兄者からお聞きしましたぞ。軍師殿にしては珍しく失敗されましたな」
 荀彧「ハハハ」
 関羽「何故、笑うのだ?」
 荀彧「いえ、これは失礼しました。殿のことも無事騙せていたことに安堵したのです」
 関羽「兄者を騙した?軍師殿、何を言っておられる。事と次第によっては、兄者に御報告させていただく」
 荀彧「我が軍にとって特になる策の成功は、関羽殿にかかっているのです」
 関羽「さっきから意味が全くわからないのだが?」
 荀彧「私はわざと失言をし、奉孝にそれを突かせたのです」
 関羽「それの何処が兄者の得になるというのだ?」
 荀彧「膠着している華北戦線に我が軍を動員させる事で、思いのままに制御するためですよ」
 関羽「まさか、曹操と袁尚の戦を制御するためだったと?」
 荀彧「えぇ、そのためには関羽殿に華北に向かってもらう必要があったのです。ですが、このことは殿に知られてはなりません。秘密を知るものが増えれば増えるほど策の成功確率が著しく低下しますから」
 関羽「ふむぅ。それで軍師殿は某にどうせよと?」
 荀彧「袁尚と曹操の戦いをできる限り引き延ばしていただきたい」
 関羽「それは、某に手加減せよと申しているのですかな?」
 荀彧「いえ、奉孝が手を焼くほどの相手、手加減など必要ないでしょう。ですが関羽殿たちが最前線に送られることは確か。そうなった時の手は既に打ってあります」
 関羽「?」
 荀彧「袁尚殿とは、既に秘密裏に話を進めていたのです」
 関羽「!?。それこそ、某に茶番を演じよと言っているのではないか!」
 荀彧「えぇ、これも殿のため。このようなことを頼まれるのは、殿の信頼が最も厚くかつ曹操や郭嘉を騙し通せる存在であることが必須。そのような事が可能なのは関羽殿を置いて他にいなかったのです」
 関羽「翼徳でも良かろう!」
 荀彧「猪突猛進の張飛殿では、策を完全に理解できるとは思えません。この策を成功させるには関羽殿しか居なかったのです」
 関羽「むむむむ。約束はできんが善処しよう」
 荀彧「今は、それで構いません」
 関羽「話がそれだけなら某は帰らせてもらおう」
 荀彧「えぇ」
 関羽が立ち去り、荀彧は思案していた。
 荀彧「関羽殿に手加減して欲しいは禁句でした。しかし、殿の信頼が厚くて、曹操や奉公を騙せる相手など関羽殿を置いて他にいなかったのも事実。ですが関羽殿には納得していただけなかった。最悪のことも考えておく必要がありますね」
 ???「関羽殿のことは俺に任せてくれないか?」
 荀彧「徐庶殿!」
 徐庶「劉備殿は今頃、孔明を迎え入れに向かっている途中だろう。俺がここに居れば、説得ができないかもしれない。孔明は、そういうのを嫌うから。なら、俺が関羽殿に付いて、できるだけ袁尚と曹操が膠着するようにやってみるよ」
 荀彧「それは、有難い申し出です。徐庶殿、宜しくお願いします」
 徐庶「劉備殿のため。誠心誠意、時間を稼がせてもらいますよ」
 徐庶の思わぬ申し出により、荀彧の策の成功への可能性が高まるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

処理中です...