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4章 三国鼎立
殴られても殴られても
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董白が娘を産み気を失ったところに扉をノックする音が聞こえる。
劉宏「こんな夜更けに誰かの?」
義賢「劉義賢です。董白を迎えにきました」
劉宏「そんな男は知らん。帰れ。2度とここに来るでない」
義賢「待ってください。董白に合わせてください。董白に」
劉宏「くどい。ワシとの約束を忘れたわけではあるまい」
義賢「うぐっ。あの時は自分のことでいっぱいいっぱいで、董白のことを考えてあげる余裕がなかったのです」
劉宏「だから許せと。そう言っておるのではあるまいな」
義賢「いえ、俺はどうなっても構いません。ですが俺は今でも董白のことが大好きなんです。失って、どれだけ董白が俺のためにしてくれていたかを再認識したんです。誤って許されることではないですがどうしても董白に謝りたいんです。どうか、どうか、お願いします」
劉宏「ワシはお前のことなど知らんと申している。まだ、騒ぐのであれば、容赦なく役所に届ける。とっとと帰るが良い」
義賢「そんな、霊帝様、話を話だけでも」
しかし扉が開くことは無かった。だが、義賢は諦めない。その場でずっと立っていた。
王栄「アナタ、そんなに頑なにならなくても良かったのではなくて」
劉宏「今は董白を休ませてやることの方が先決じゃ。あの大馬鹿者がよりによって、間の悪い時に来おってからに」
王栄「劉丁殿がこれで帰るようなお人でしたらそれまでのことですものね」
劉宏「アヤツは帰らんじゃろう。良い目をしていた。董白から聞いていた死んだ魚のような目では無かった。ようやく立ち直ったのじゃろう」
王栄「それがわかっていながらアナタは追い返したと?」
劉宏「大事な大事な孫娘を泣かせよった。許せるわけが無かろう。あのまま、しばらく冷たい風に晒されて居れば良いのじゃ」
冷たい風に晒されながら雨が降ってきた。しかし、その雨にも負けずに義賢は、ずっと扉の前で立っていた朝になるまで。
董白「お爺様?」
劉宏「おお、目が覚めたか董白よ」
董白「私、気を失って、赤ちゃんは?」
張宝「大丈夫ですよ董白様。こちらに元気な女の子ですわ」
董白「そうだった。陣痛が始まったから張宝様に来てもらって、その後とても辛くて、産んだ後に気を失ったんだ」
扉を叩く音が聞こえる。
董白「お爺様、お客様のようです」
劉宏「今は、お前の方が大事だ」
董白「お爺様ったら、そんなこと言ってはダメ。ほらほら」
義賢「劉義賢です。董白と話を話をさせてください。どうか。クシュン」
董白「義賢!?なんで、ここに」
王栄「大事な大事な董白ちゃんを迎えに来たようですよ」
董白「あんな奴なんて知らない」
劉宏「毌丘毅よ。一つ頼まれてくれるか?」
毌丘毅「もう俺も歳なのですがね。息子の毌丘興も連れて行ってきますかな。追い返したらよろしいのですな?」
劉宏「うむ。ワシの大事な孫娘を泣かせおった不届き者じゃ。殴っても構わんが殺してはならんぞ」
毌丘毅「そのようなことはわかっておりますわい。興、そういうことじゃ。父の供を頼むぞ」
毌丘興「はい。父が昔を懐かしむように楽しそうに話す劉備殿の弟君でしたね」
毌丘毅「あぁ、とても懐かしい話だ。あれはもう17~18年ほど前になるのか。ワシも老いるわけじゃ。それにしても劉宏様は、75を超えるのに帝の頃よりも生き生きとしていて元気で有らせられるとは、朝廷での暮らしが相当、心身を削っていたのであろうな」
劉宏「本人の前でそのようなことを言うとは、お前もまだまだ現役で居てくれんと困るぞ。先に逝った朱儁や皇甫嵩に会うのはまだ早いぞ」
毌丘毅「ハッハッハ。よしてくださいや。ワシは、もう武器を握る力も衰えておるのです。お迎えは近いでしょうな。これが最後のご奉公となるやもしれませぬ」
冗談っぽく言っているが衰えているのは事実である。そんな2人が入り口を開け、義賢を殴った。
義賢「うっ。毌丘毅殿、何を?」
毌丘毅「散々、泣かせておいて、今更、どの面下げて、やってきた」
義賢「だから、謝りたく。うぐっ」
毌丘興「謝れば自分のやったことが許されるとでも。謝った自分の行動に酔いたいだけであろう」
義賢「誰だか知らないが言いたいことを言ってくれる。俺の気持ちも知らないで」
毌丘興「あぁ、知らん。だが、父上から話を聞いていた憧れていた劉備殿の弟君が、身近でずっと支えてくれていた大事な存在に気付かない程のクズだったことに、心底失望している」
義賢「あぐっ。気付いたからこそ。また一緒にいたいと想うことは遅いのか!」
毌丘毅「失ったから気付くことも確かにあろう。だが、お前は気付くのが遅すぎたのじゃ。董白様の心は既にお前にはない。会いたくないとのことじゃ。帰られるがよい。帰らないと申すのなら、徹底的に叩き潰して、追い出すまでじゃ」
義賢「何度、殴られようとも。俺は、董白を決して諦めない。がぁ」
そのやり取りを中で聞いている董白。
董白「気付くのが遅いのよ。私は貴方を癒してあげられなかった。もう帰って帰ってよ。傷付く必要なんてないじゃ無い」
劉宏「董白や。人は過ちを犯す者じゃ。ワシも大事な孫娘を泣かせたあの大馬鹿者を許せそうに無い。じゃがお前はまだ彼奴のことを想っているのでは無いか?」
董白「!?そうよ。大好きよ。だからこそ、また一緒になるのが怖いのよ。アイツが傷ついている時に私は癒してあげられなかった。そんな私にアイツの側に居ていい資格なんて無いのよ」
王栄「それは違いますわ董白ちゃん。大好きな人の側にいることに資格なんて必要ありませんもの。ね冥?」
冥冥「えぇ、王栄様の言う通りです。私は元人妻ですが董卓様、いえ劉宏様にお救いしていただいたその日から側に居ますもの。それこそ王栄様の想いなんて踏みにじっていますわよ」
王栄「えぇ、本当に。でも助かっているのも事実ですよ。劉宏様の下の世話は1人では大変なので」
劉宏「そこ?」
王栄「えぇ、クスクス」
董白「私、アイツの側に居て良いのかな?何でもかんでも背負いこむアイツの側に」
劉宏「どうしたいかは董白や。お前が決めることじゃ」
この間にも義賢は毌丘毅・毌丘興により、殴られ続けていた。だが、董白のことを諦めて帰らない。殴り返さず、ただひたすらに殴られているのだった。
劉宏「こんな夜更けに誰かの?」
義賢「劉義賢です。董白を迎えにきました」
劉宏「そんな男は知らん。帰れ。2度とここに来るでない」
義賢「待ってください。董白に合わせてください。董白に」
劉宏「くどい。ワシとの約束を忘れたわけではあるまい」
義賢「うぐっ。あの時は自分のことでいっぱいいっぱいで、董白のことを考えてあげる余裕がなかったのです」
劉宏「だから許せと。そう言っておるのではあるまいな」
義賢「いえ、俺はどうなっても構いません。ですが俺は今でも董白のことが大好きなんです。失って、どれだけ董白が俺のためにしてくれていたかを再認識したんです。誤って許されることではないですがどうしても董白に謝りたいんです。どうか、どうか、お願いします」
劉宏「ワシはお前のことなど知らんと申している。まだ、騒ぐのであれば、容赦なく役所に届ける。とっとと帰るが良い」
義賢「そんな、霊帝様、話を話だけでも」
しかし扉が開くことは無かった。だが、義賢は諦めない。その場でずっと立っていた。
王栄「アナタ、そんなに頑なにならなくても良かったのではなくて」
劉宏「今は董白を休ませてやることの方が先決じゃ。あの大馬鹿者がよりによって、間の悪い時に来おってからに」
王栄「劉丁殿がこれで帰るようなお人でしたらそれまでのことですものね」
劉宏「アヤツは帰らんじゃろう。良い目をしていた。董白から聞いていた死んだ魚のような目では無かった。ようやく立ち直ったのじゃろう」
王栄「それがわかっていながらアナタは追い返したと?」
劉宏「大事な大事な孫娘を泣かせよった。許せるわけが無かろう。あのまま、しばらく冷たい風に晒されて居れば良いのじゃ」
冷たい風に晒されながら雨が降ってきた。しかし、その雨にも負けずに義賢は、ずっと扉の前で立っていた朝になるまで。
董白「お爺様?」
劉宏「おお、目が覚めたか董白よ」
董白「私、気を失って、赤ちゃんは?」
張宝「大丈夫ですよ董白様。こちらに元気な女の子ですわ」
董白「そうだった。陣痛が始まったから張宝様に来てもらって、その後とても辛くて、産んだ後に気を失ったんだ」
扉を叩く音が聞こえる。
董白「お爺様、お客様のようです」
劉宏「今は、お前の方が大事だ」
董白「お爺様ったら、そんなこと言ってはダメ。ほらほら」
義賢「劉義賢です。董白と話を話をさせてください。どうか。クシュン」
董白「義賢!?なんで、ここに」
王栄「大事な大事な董白ちゃんを迎えに来たようですよ」
董白「あんな奴なんて知らない」
劉宏「毌丘毅よ。一つ頼まれてくれるか?」
毌丘毅「もう俺も歳なのですがね。息子の毌丘興も連れて行ってきますかな。追い返したらよろしいのですな?」
劉宏「うむ。ワシの大事な孫娘を泣かせおった不届き者じゃ。殴っても構わんが殺してはならんぞ」
毌丘毅「そのようなことはわかっておりますわい。興、そういうことじゃ。父の供を頼むぞ」
毌丘興「はい。父が昔を懐かしむように楽しそうに話す劉備殿の弟君でしたね」
毌丘毅「あぁ、とても懐かしい話だ。あれはもう17~18年ほど前になるのか。ワシも老いるわけじゃ。それにしても劉宏様は、75を超えるのに帝の頃よりも生き生きとしていて元気で有らせられるとは、朝廷での暮らしが相当、心身を削っていたのであろうな」
劉宏「本人の前でそのようなことを言うとは、お前もまだまだ現役で居てくれんと困るぞ。先に逝った朱儁や皇甫嵩に会うのはまだ早いぞ」
毌丘毅「ハッハッハ。よしてくださいや。ワシは、もう武器を握る力も衰えておるのです。お迎えは近いでしょうな。これが最後のご奉公となるやもしれませぬ」
冗談っぽく言っているが衰えているのは事実である。そんな2人が入り口を開け、義賢を殴った。
義賢「うっ。毌丘毅殿、何を?」
毌丘毅「散々、泣かせておいて、今更、どの面下げて、やってきた」
義賢「だから、謝りたく。うぐっ」
毌丘興「謝れば自分のやったことが許されるとでも。謝った自分の行動に酔いたいだけであろう」
義賢「誰だか知らないが言いたいことを言ってくれる。俺の気持ちも知らないで」
毌丘興「あぁ、知らん。だが、父上から話を聞いていた憧れていた劉備殿の弟君が、身近でずっと支えてくれていた大事な存在に気付かない程のクズだったことに、心底失望している」
義賢「あぐっ。気付いたからこそ。また一緒にいたいと想うことは遅いのか!」
毌丘毅「失ったから気付くことも確かにあろう。だが、お前は気付くのが遅すぎたのじゃ。董白様の心は既にお前にはない。会いたくないとのことじゃ。帰られるがよい。帰らないと申すのなら、徹底的に叩き潰して、追い出すまでじゃ」
義賢「何度、殴られようとも。俺は、董白を決して諦めない。がぁ」
そのやり取りを中で聞いている董白。
董白「気付くのが遅いのよ。私は貴方を癒してあげられなかった。もう帰って帰ってよ。傷付く必要なんてないじゃ無い」
劉宏「董白や。人は過ちを犯す者じゃ。ワシも大事な孫娘を泣かせたあの大馬鹿者を許せそうに無い。じゃがお前はまだ彼奴のことを想っているのでは無いか?」
董白「!?そうよ。大好きよ。だからこそ、また一緒になるのが怖いのよ。アイツが傷ついている時に私は癒してあげられなかった。そんな私にアイツの側に居ていい資格なんて無いのよ」
王栄「それは違いますわ董白ちゃん。大好きな人の側にいることに資格なんて必要ありませんもの。ね冥?」
冥冥「えぇ、王栄様の言う通りです。私は元人妻ですが董卓様、いえ劉宏様にお救いしていただいたその日から側に居ますもの。それこそ王栄様の想いなんて踏みにじっていますわよ」
王栄「えぇ、本当に。でも助かっているのも事実ですよ。劉宏様の下の世話は1人では大変なので」
劉宏「そこ?」
王栄「えぇ、クスクス」
董白「私、アイツの側に居て良いのかな?何でもかんでも背負いこむアイツの側に」
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