えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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4章 三国鼎立

怒りの矛先

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 魏延を差し出し、数日が経った。魏延の言った通り蛮夷は武陵からも撤退し、山奥へと帰って行った。しかし、ここに魏延の選択に未だ納得できない男がいた。義賢である。確かに、魏延を差し出すことで荊州南部の動乱は治まった。しかし、槃李杏の行ったことで桂陽と零陵の民の多くが山賊と蛮族の餌食となったのも事実である。その中には、長沙にて立て籠もり徹底抗戦をしていた零陵兵や桂陽兵らの妻や娘も居たのだ。彼らにとっては、槃瓠族が攻めてこなければこうはならなかったというなんとも耐え難く許せない気持ちが渦巻いていた。そして義賢は決断する。魏延を助け出すため、桂陽兵や零陵兵らの無念を晴らすため、槃李杏の籠る山奥へと進軍する事を。しかし、これは義賢のエゴである。それゆえ、彼は桂陽兵と零陵兵、合わせて5万の兵と魏延に大恩ある黄忠・蛮族に遅れを取り一矢報いたい張郃の2将を連れ、進軍する事を決めた。
 潘濬「馬鹿な!?劉丁殿、御自身が何を言っているかお分かりか!」
 義賢「あぁ。蛮夷というのは言いにくいな。槃瓠族と呼ぶことにする。彼らの籠る山奥へと攻撃を開始する」
 桂陽兵「それでこそ劉備軍の方だ。俺たちも妻や娘・友人の仇を取るためお供する」
 零陵兵「元はといえば、あの野蛮な蛮族が色恋などで攻め寄せたのが発端。許せるわけがない」
 潘濬「勝手な事をして、また荊州の南を危険に晒すおつもりか!」
 田豊「劉丁殿、流石に此度は潘濬殿の言が最も。ここは一度、兵を退き。殿の判断を仰ぐのが良かろう」
 沮授「劉丁殿、御判断を誤りませんように」
 趙雲「劉丁殿、蛮夷の兵力は1万程です。ですが、対峙した俺にはわかります。あの強さは並大抵ではない。ここは一度退くのも良いかと」
 樊玉鳳「蛮夷とやるには、関羽殿・張飛殿の手も借りねばならないかと。ここは、どうかお退きください」
 陳応「アイツらの恐ろしさは、荊州に来た時から叩き込まれている。無謀だ」
 鮑隆「蛮夷の強さは並大抵ではない。趙雲様のいう通り、退くべきだ」
 張郃「常山の趙子龍ともあろう者が怖気ついたか。劉丁殿、俺は蛮族どもに一矢報いたい。是非、連れて行ってくれ」
 高覧「あぁ、アイツらのせいで張郃が。許せねぇ」
 麹義「高覧、気持ちはわかるが」
 藩鳳「やめておくべきだ」
 黄忠「ワシは、魏延に多大な恩がある。それを返すためならこの身を劉丁殿のために使わせてもらおう」
 義賢「皆の気持ちはわかった。潘濬殿、すまない。やっぱり俺には魏延を見捨てることも桂陽兵や零陵兵らのやり場のない怒りを鎮めてやることもできない。これは俺の単独行動だ。俺のせいでまた民を巻き込むわけにはいかない。潘濬殿、頼みがある」
 潘濬「最早、何を言っても聞き入れてはくれませんか。はぁ。頼みとはなんですか?」
 義賢「すまない。長沙・桂陽・零陵・武陵の民を束ね。襄陽へと運んでいただきたい。万が一、俺たちが敗れた場合、被害を最小限に食い止めるため兄上が一番嫌う民への陵辱を防ぎたいのだ」
 潘濬「えぇ、それは勿論。貴方の気持ちが変わらないのなら。もう一度蛮夷が押し寄せるのは明白ですから。その任はお受けしましょう」
 義賢「感謝する」
 張郃も配下の将たちに指示を出していた。
 張郃「麹義・藩鳳・田豊・沮授、お前たちは、ひと足先に襄陽へと戻るのだ。殿に民の受け入れを願ってくれ」
 麹義「わかった。張郃殿・高覧、死ぬなよ」
 田豊「こちらのことはお任せを。張郃殿、無理はなさいませぬように」
 藩鳳「殿に必ずお伝えする」
 沮授「高覧、張郃殿の事を頼む」
 高覧「おぅ。張郃のことは俺に任せておけ」
 趙雲が樊玉鳳と共に義賢に再度撤退するように伝えにくる。
 趙雲「このような無謀な策、劉丁殿らしくありません。どうか、一度襄陽へと退き、殿に援軍を乞うべき」
 樊玉鳳「子龍の申す通りです。蛮夷を侮ってはなりません」
 義賢「俺だって、そんなことはわかっている!これは、間違いなく俺の失策だ。だが、魏延殿を見捨てることも蛮族どもに虐げられ虐殺された桂陽兵や零陵兵のことを思うとどうしても許せないのだ!だからこそ、俺は付き従うもの以外を連れてはいかない。子龍、お前は玉鳳と共に民を護衛して、兄上の元に帰るのだ」
 趙雲「劉丁殿、貴方に何かあれば殿が悲しむとは考えないのか!」
 樊玉鳳「そうです。劉備様が悲しみます。どうかこんな無謀なことはおやめください」
 義賢「もう、決めたことなんだ。すまない2人とも。苦労をかける」
 趙雲「劉丁殿、、、、わかりました。どうか油断なさいませんように」
 樊玉鳳「民たちのことは必ず劉備様の元に送り届けます」
 義賢「ありがとう。お前たちがいてくれて助かった。安心して民の護衛を任せられるからな。俺のことを想ってくれてのことだとわかってはいるのだ。すまない」
 黄忠は息子である黄叙と話し合っていた。
 黄叙「父上、私も供を」
 黄忠「ならん。まだ幼い黄羽や母の翠蘭を守るのじゃ」
 公孫続「黄叙、黄忠様は次代を担うであろう我らに共に来るなとおっしゃった。その想いを汲んでやるべきだろう」
 袁燿「必ず無事に帰ってきてください黄将軍」
 黄叙「父上、どうかどうか無事に」
 黄忠「あぁ、わかっておるわい」
 こうして、義賢は魏延の救出と桂陽兵と零陵兵の怒りの矛先を蛮夷へと向け、進軍を開始するのだが、、、、
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