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4章 三国鼎立

桂陽奪還作戦(破①)

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 趙雲軍が零陵蛮の部族長と交戦していた頃、張郃は慚戯に打ち負かされていた。
 慚戯「良いぞ。その強さ。良い」
 張郃「化け物め。ハァハァハァハァ」
 慚戯「どうした。やれやれ、おなごの力ではこの程度が限界か。では、次はこちらの番だ」
 慚戯は一瞬で張郃に詰め寄ると掌底を鳩尾に叩き込んだ。
 張郃「うぐっ。この私がま・け・た?」
 バタリと倒れた張郃を肩に抱えて立ち去ろうとする慚戯。
 高覧「張郃を連れて、どこに行く気だ。お前、俺が相手をしてやる」
 慚戯「煩い蠅だ。峨瘻・飂・犇鱓、相手をしてやれ。俺は、この女と楽しむんでな」
 高覧「!?許さねぇぞ」
 麹義「張郃殿が女?」
 藩鳳「アイツ何言ってるんだ?嘘だよな高覧?」
 高覧「そんなことある訳ねぇだろ。アイツの戯言を真に受けんな!」
 慚戯「そうかそうか、コイツはお前の女だったか。だが残念だが俺に負けた時点で、コイツはもう俺の女だ。諦めるんだな」
 高覧「さっきから訳のわからねぇこと言いやがる。良いから置いてけよ蛮族」
 慚戯「蛮族だと。この俺を蛮族だと。良いだろう。桂陽城で待っててやる。お前が無事に辿り着くことができたらの話だが。その時は、お前とこの女を賭けて、勝負してやる」
 高覧「待てって言ってんだろうが!」
 峨瘻「残念だが慚戯様はお忙しい。お前の相手をしてやるよ。俺たちがな」
 麹義「よくは分からんが張郃殿を助けることに変わりはない。手を貸すぞ高覧」
 藩鳳「あぁ、この2人はオレたちに任せとけ。お前はそいつをさっさと倒して、慚戯とやらを追え」
 高覧「麹義殿・藩鳳殿、すまない」
 麹義「ということで、お前の相手は俺だ」
 飂「誰でも構わない。慚戯様に勝つのは不可能だからな」
 藩鳳「一騎討ちは久々だぜ」
 犇鱓「俺様とやりあおうなんざ。百万年早いぜ」
 峨瘻は鎖に棘の付いた鉄球を取り出した。
 峨瘻「今宵も俺の相棒が血を求めてるぜ」
 高覧「なんだあの武器は!?」
 峨瘻はそれを軽々と振り回し、高覧に投げつける。
 峨瘻「一撃で死んでくれるなよ。楽しみてぇからなぁ」
 高覧「うおっ。危ねぇ。お前、さっきから滑舌が悪すぎて、何言ってっかわかんねぇんだょぉぉぉぉ。俺の邪魔すんじゃねぇぇぇぇ」
 峨瘻「ムキになって、そんなにあの女が大事か?今頃、慚戯様とお楽しみだろうなぁ」
 高覧「あっ?お前、今なんつった?あの女?慚戯?テメェ、もういっぺん言ってみやがれ。このアホンダラが」
 高覧は鉄球の棘を気にせず詰め寄り、峨瘻を突き刺した。
 高覧「ぐっ。肩に棘が刺さっちまったか」
 峨瘻「激昂で無鉄砲とは、死にたがりだな。すぐに楽にしてやる」
 高覧「(こうしてる間にも俺の張郃が慚戯だか懺悔だか知らないが。慰み者にされちまう。こんな傷どうした。張郃のこと諦めんのか。俺がずっと側に居たのに?)そんなことできるかぁぁぁぁ」
 峨瘻「なんだアイツ、あの棘をもろともせずに突っ込んでくるだと。しかもどんどん大きく(なんだ、あの血塗れの怪物は。噂に聞いたチマミレだと言うのか?)来るなぁ。来るなぁ。来ないでくれぇぇぇぇぇぇ。ガハッ」
 高覧「余計な時間を取られちまった。急がねぇと。張郃が」
 しかし、麹義も藩鳳も苦戦していた。
 高覧「アイツらを見捨てて張郃のところに行ったら張郃に嫌われちまうな。お前ら、待ってろ。今、助ける」
 麹義「馬鹿を言うな!お前はとっとと張郃殿を救いに行け!ここは、俺たちで十分だ。ハァハァハァ」
 高覧「馬鹿野郎。息切れしてるじゃねぇか。それに張郃にお前らを見捨てて来たなんて言えるかよ!」
 藩鳳「見捨てる?どうやら高覧は勘違いしているようだぞ麹義。ハァ、ハァ、ハァ」
 麹義「全くだ。見捨てるじゃない優先順位だ。お前が俺たちを助ける間にも張郃殿は、あの野蛮な蛮族に弄ばれるのだぞ。それも平気で人を喰らう蛮族にだ。わかったら、とっとと行け!ハァハァハァ」
 高覧「!?お前ら、死ぬんじゃねぇぞ」
 高覧が桂陽城へと向かう道中にも零陵蛮が高覧の行手を遮る。
 零陵蛮「イカセナイ。コロシテ。ニクスル」
 高覧「どんだけ嫌がらせしやがる(クソッ肩がヒリヒリするぜ)」
 第一防衛戦の零陵蛮共を片付け先に進む高覧を第二防衛戦の零陵蛮が発見し仲間を呼び集める。
 零陵蛮「キタゾ、ナカマ、ヨブ」
 高覧「おい、ワラワラと邪魔するんじゃねぇ。鬱陶しい奴らだな(クソッ、あの部族長にやられた肩の痛みが酷くなってやがる)」
 肩の痛みに耐えながら第二防衛戦を突破し、城に差し迫ったところで、入り口から残りの零陵蛮共が出て来た。
 零陵蛮「シロ、ハイレナイ。ザンギ様、ジャマ、サセナイ」
 高覧「えぇい、慚戯だか懺悔だか知らねぇけどよ。崇め奉ってる狂信者の蛮族共が、俺の愛する女を返しやがれってんだ」
 零陵蛮「アイツ、バケモノ。チマミレ」
 高覧「どいつもこいつも血塗れだ。全部お前らの返り血だってんだ」
 ???「やれやれ、この防衛戦をもろともしないとは、しかし慚戯様はお忙しい。新しく手に入れた女の身体を隅々まで確認するためにな」
 高覧「お前、何者だ?」
 ???「我が名は穢麩。慚戯様の軍師であり、弟だ」
 高覧「そうかい、要はここに転がってる蛮族の狂信者共が崇め奉る懺悔とやらの弟ってわけだ。じゃあ、帰って兄ちゃんに伝えろや。俺の張郃に何かあったらタダじゃおかねぇぞってなぁ」
 穢麩「全く、その傷だらけの身体で、慚戯様に刃向かうなど身の程知らずと言わざるおえん。その命、この俺が貰い受ける」
 高覧「望むところだ。テメェも殺して前に進んでやるよ。俺の愛する女に手を出した者がどうなるかをその身を持って教えてやるよ」
 高覧と穢麩による戦いが幕を開けようとしていた頃、麹義と藩鳳の方も決着を迎えようとしていた。
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