えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
上 下
255 / 644
4章 三国鼎立

桂陽奪還作戦(序②)

しおりを挟む
 劉備軍よりも先に交戦を始めていたのは、沙摩柯率いる武陵蛮である。武陵蛮たちは、桂陽城の左にて、穢麩・堕漊・鸍梦の3将率いる。7万と交戦を開始した。数では、2倍多い武陵蛮であったが、腕利揃いの零陵蛮相手では、数などあってないようなもの。みるみると差が縮まっていた。
 沙摩柯「クソ。あの強さだけは、賞賛に値するぜ零陵蛮どもめ。孤立するな。狙われるぞ。囲んで確実に倒していけ」
 堕漊「アイツ、オヤダマ」
 鸍梦「クライ、ツクシテ、ヤル」
 堕漊と鸍梦が沙摩柯を視界に捉える。
 沙摩柯「2対1かよ。きたねぇな」
 堕漊「オレタチ。フタリ、ヒトツ。コンビ」
 鸍梦「オマエ、コロシテ、オンナ、ムサボル」
 沙摩柯「良いぜ。相手になってやるよ。俺がお前たちにすら勝てない程度なら。慚戯には、到底敵わないだろうからな」
 堕漊「ザンギ様、サイキョウ」
 鸍梦「オマエ、サカダチ、シテモ、ムリ」
 沙摩柯「だろうな。だがよ。お前たち程度なら余裕だぜ」
 堕漊「ンン?」
 鸍梦「ムリ、ムリ、オレタチ、コンビ、サイキョウ」
 堕漊が2本の短刀、鸍梦が2本の斧の合計4本の攻撃に対して、沙摩柯は槍一つで応戦していた。
 堕漊「オレタチ、テカズ、サイキョウ」
 鸍梦「ウデ、ヨッツ、アワセテ、ヤッツ?」
 沙摩柯「お前ら、馬鹿だろ。腕は2本だ。合わせても4本だろうが!」
 沙摩柯の槍の薙ぎ払いで飛ばされる短刀と斧。武器の無くなった2人と思われたが、新しいのを腰から取り出す。
 堕漊「ブキ、マダマダ」
 鸍梦「ヨビ、タクサン」
 沙摩柯「マジかよ」
 この間にも、穢麩の指揮の元、零陵蛮たちの苛烈な攻撃を前に敗戦を重ねていく武陵蛮たち。
 穢麩「そっちに行きましたよ。次はあっちです。所詮、この程度。我ら零陵蛮に挑むなど、愚の骨頂と言わざるおえません。堕漊と鸍梦に武陵蛮の王の動きを止めさせれば、こんなに簡単に駆逐できてしまうのですよ」
 零陵蛮「ウオオオオオオオオオ、ツブス。ツブス」
 武陵蛮「沙摩柯様はまだか。コイツら強い」
 当初、数十万いた武陵蛮たちだがもうその差は零陵蛮の方が多くなっていた。実に半分の武陵蛮たちが討ち死にしたことになる。零陵蛮には情け容赦という言葉はない。対峙すれば、殺されるまでその身を切り刻まれる。それは、流れを汲むのが同じである武陵蛮に対しても変わらない。
 沙摩柯「クソ、この間には、アイツらがやられてるってのによ。俺ときたら全く情けないぜ」
 堕漊「アキラメロ。ソシテ、キリキザマレロ」
 鸍梦「ニク、ニク」
 沙摩柯「ハァ、この手は使いたくなかったんだが仕方ない。俺の力量不足だ。やっぱり副武器の槍じゃダメだよな。こっちを使わねぇとよ」
 沙摩柯が背中から弓を取り出した。
 堕漊「オマエ、バカ」
 鸍梦「シキンキョリ、ユミ、フリ」
 沙摩柯「試してみるか?」
 沙摩柯は堕漊と鸍梦に矢を構える。突っ込んでくる堕漊と鸍梦。沙摩柯は、堕漊と鸍梦の攻撃を転がって避け、立ち上がり様に、続けて2本の矢を放った。
 堕漊「サセナイ」
 鸍梦「チカヅケバ、ユミ、ウテナイ」
 沙摩柯「(もう少し。もう少し惹きつける。好機は一瞬だ。見逃すな。目を見開け。時は来た)」
 堕漊「ヤッパリ、カマエ、カイジョ、ヨケタ」
 鸍梦「ユミ、フリ、ムリ」
 沙摩柯「残念だったな。お前らが馬鹿で助かったよ。要は、隙だらけって事だ」
 堕漊「オマエ、ソノジョウタイカラ。ヌハッ」
 鸍梦「ダル、ヨクモ、ユルサナイ。ギョエ」
 沙摩柯の放った弓は、2本とも堕漊と鸍梦の額を捉えていた。即死だ。ヘッドショットである。
 沙摩柯「だから、この手は使いたくなかったんだ。さて、俺がいない間に散々やられただろうからな。早くアイツらを助けねぇと」
 指揮をとりながら堕漊と鸍梦の方も気にかけていた穢麩は、驚愕の表情を浮かべる。
 穢麩「まさか、堕漊と鸍梦がやられたというのか。俺までやられては、慚戯様に合わせる顔がない。ここは仕方がない。深追いはせず、半分の武陵蛮どもの命は葬った。最早、脅威では無い。一度退き。慚戯様に合流する。全軍撤退です」
 零陵蛮「ウオオオオオオオオオ。マダ、クイタリナイ。ニク、ニク」
 武陵蛮「アイツラ、急にどうした?退いていく。勝ったのか俺たち?」
 沙摩柯「お前ら無事か。うっこれは、嘘だろ」
 武陵蛮「沙摩柯様、申し訳ありません。零陵蛮の奴ら、思った以上に手強く、半数の兵を失いました」
 沙摩柯「殺して、焼いて、食い散らかしたってのか。それも、骨だけになるまで。嘘だろ」
 武陵蛮「あの光景を見て、突撃した者も絡み取られ、被害ばかりが増大しました。申し訳ありません」
 沙摩柯「すまない。すまない。同胞たちよ。この仇は、必ず俺が俺が取ってやるからな。残った兵を纏めよ。奴らを追撃し、劉備軍に合流する」
 武陵蛮「正気ですか沙摩柯様!我らの被害は甚大なのですぞ。その上、追撃して、更に被害を出すなど何を考えておられるのです」
 沙摩柯「こんな悲しい思いを他の者たちにも味合わせるのか?それも女子供を道具としか思わない輩に。誰かが変えないといけないなら俺はその道が荊であろうとも突き進み、必ずより良い未来を勝ち取る」
 武陵版「!?沙摩柯様、俺たちが間違っていました。あの強さを見て、畏れを抱かない貴方こそ、我らが王。王を支えるのは、我らの務め。最後まで供を致します。お前たち、腰を砕いている場合ではないぞ。立ち上がり、沙摩柯様に続けーーーーーー」
 武陵蛮たち「オオオオオオオオオオ。零陵蛮の奴ら、次はこうはいかねぇ」
 沙摩柯「(なんとか士気を保つことには成功したか。しかし、零陵蛮の奴ら。同族でも情け容赦なしか。全く、畏れを抱かないか。いや、畏れを抱くからこそ。俺と同じ痛みを他の者たちに与えたくないと思えるのだ)全軍、追撃を開始せよ」
 沙摩柯の掛け声で武陵蛮たちは、進軍を再開する。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

処理中です...