えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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4章 三国鼎立

官渡前哨戦 烏巣の戦い(急)

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 曹純は朝を待ち、商人の扮装をした兵たちを数人、烏巣に送り込む。
 曹純「恐らく帰ってこられない死地へとお前たちを送り出すことを許してくれ」
 虎豹騎隊「何をおっしゃいます。我らにも精鋭騎馬隊としての誇りがあります。必ずこの任務、果たして見せます」
 曹純「お前たちの働きは俺がずっと覚えておこう」
 虎豹騎隊「その言葉だけで十分です」
 数人の虎豹騎隊が商人の格好をして、馬で荷車を引き、烏巣に向かう。
 虎豹騎隊「近くで商いをしているものなのですが物資にお困りではないですかな」
 淳于瓊「これはこれは、これぞ天の助け。どうぞ中へと」
 虎豹騎隊「では失礼致します(うむ、あの大きな藁束が恐らく兵糧だろうな。機を見て焼くとしよう)」
 淳于瓊「どうかされましたか?」
 虎豹騎隊「いえ、なんでもありませんよ」
 淳于瓊「あぁ、あの藁俵ですか。ここは、兵糧だけは山のようにありまして、金銭ではなく兵糧でやり取りしますか?」
 虎豹騎隊「いえいえ、お金で構いませんよ(俺としたことがキョロキョロとしてこれではまるで不審者扱いされてもおかしくはない。機を引き締めねば)」
 事前に仕入れていた情報をもとに不足していた物資を渡しお金を受け取り、帰り際に藁俵に松明を投げ入れることに成功した。
 虎豹騎隊「良い取引ができました。これにて」
 淳于瓊「こちらもです」
 伝令「淳于瓊様、藁俵が兵糧が燃えております」
 淳于瓊「なっなんだと!?あれだけ藁俵の周りで火を使うなと言ったであろう。誰だ!かつ
 伝令「それが、芋を焼いていたらしくて」
 淳于瓊「馬鹿者!すぐに火を消すのだ」
 伝令「火の勢いが凄まじく、最早、諦めるしかないかと」
 淳于瓊「この責任は、後でしっかりと追求するぞ」
 伝令「はい」
 曹純の元に誰1人かけることなく帰ってきた虎豹騎隊に驚きつつもその報告を聞き喜ぶ。
 曹純「よくやった。これで、再起は最早叶わないであろう。我らもこのことを報告しに帰るぞ」
 虎豹騎隊「我らも役目を果たすことができて安堵しております」
 曹休「慌てふためいている袁紹軍の残党が目に浮かびますね」
 役目を果たしたと笑いながら烏巣を後にする面々。その頃、烏巣内部では。
 淳于瓊「まさか、こんなに上手くいくとは、さらに物資まで得られるとは」
 郝昭「相手は完全に撤退しましたね。今こそ、烏巣を放棄し、我らもこの兵糧とさらに手に入れた物資を持って、倉亭へと向かいましょ」
 淳于瓊「安全に撤退まで」
 郝昭「その前にここを完全な平城に戻しておいてと火を放つのを忘れずに」
 全ての物資を運び出し、烏巣を燃やす。それを遠くから見る曹純。
 曹純「よーく燃えてるな。良し、完璧だったってことだ。これでもう完全に殿の勝利は揺るぎない」
 曹休「俺も叔父上のお役に立てて喜ばしい限りです」
 虎豹騎隊「(何かがおかしい?松明だけであんなに色んなところに燃え移るだろうか?いや、疑うのは良くないな。成功を喜ぶとしよう)」
 この虎豹騎隊の申すことはもっともなのだが。そんなこととは露知らず。曹操の待つ白馬へと引き返すのだった。
 同じく遠くからこの火を見ていた袁譚たち。
 袁譚「クソったれ。俺の馬鹿野郎、間に合わなかったってのか」
 文良「そう自分を攻めるな袁譚」
 顔醜「まだ負けたわけじゃねぇ。生き残ってる奴らもいるかも」
 朱霊「あの火では絶望的に思えるが」
 蒋義渠「しかし、簡単に諦めるわけには行かない。生きている人間がいるのなら助けてやらねば」
 そこに荷駄を押す淳于瓊たちが現れる。
 袁譚「淳于瓊、無事だったか?」
 淳于瓊「袁譚様?ということは、貴方が新たな党首に?」
 袁譚「違う、俺たち兄弟は和解した。俺が袁家の武を担い、煕が袁家の智を担い。尚が袁家の顔となる」
 郝昭「それはとてもいいですね。そんな袁家になら僕の友人を推挙したいと思いますね。それは帰ってから後ほど」
 袁譚「馴れ馴れしいガキだな!まぁ。んなことで怒らねぇけどよ。規律を遵守する淳于瓊が何も言わねぇってことは優秀ってことだろ?帰ってからその辺りも詳しく聞くとするか。兎にも角にもお前たちが無事で良かったぜ」
 淳于瓊「袁譚様、申し訳ない」
 呂威璜「袁家の新しい形か。歪みあっていた三兄弟が仲良くなったのだ。俺も過去のことは水に流そう」
 眭元進「この姿を見たら袁紹様もさぞ驚かれるでしょうな」
 韓莒子「全くだ」
 趙叡「これぞ理想の形といえましょうぞ」
 文良「これでまだ建て直せる。皆兵糧を共に運ぶぞ」
 顔醜「おぅよ。こっちにも乗せろ。お前らもしっかり付いてこいよ」
 朱霊「袁家の新しい形か。曹操殿に仕えるのも悪くないと思ったが。中々、袁尚様も居心地は悪くない」
 蒋義渠「袁紹様が死んだと聞いた時には、これで終わりかと思ったがここからが新たな始まりだ。必ず曹操軍を押し返さねばならないな」
 皆で協力して、物資の全てを倉亭へと持ち帰るのだった。
 袁尚「袁譚兄さん、無事で良かった」
 袁譚「おい。抱きつくんじゃねぇ尚」
 袁煕「兵糧だけでなく物資まで得られるとは、朗報だ」
 甄姫「旦那様、先程まで兄上は御無事であろうかとウロウロと落ち着かなかったのは誰かしら」
 袁煕「ばっ馬鹿!何言ってるんだ甄」
 袁譚「そうなのか煕?ほら、お前も飛びついてきても構わないぞ」
 袁煕「そんなことせん」
 袁尚「これで、この倉亭を新たな拠点として、曹操軍を迎え撃つことができるんだね袁煕兄さん」
 袁煕「いや、まだ不十分だ」
 郝昭「そうだね。ここで迎え撃つにはあまりにも脆弱かな。でもだからこそ手の入れようはありそうだけどね」
 袁煕「この子供は?」
 郝昭「子供子供って、みんなして馬鹿にすんなよ。これでも16歳だ」
 袁煕「そうか。すまなかったな」
 これが202年の出来事であった。袁紹の死、袁家三兄弟の和解。兵糧拠点烏巣の消失。そして、舞台は再び劉備軍へと戻る。
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