えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
上 下
243 / 644
4章 三国鼎立

官渡前哨戦 烏巣の戦い(序)

しおりを挟む
 袁紹は烏巣を巨大な兵糧拠点として、ここから前線に物資を運んでいた。袁紹が討ち死にしたという情報はここにももちろん流れていた。
 淳于瓊「だから後悔すると言ったのです殿(引き上げの連絡も何もない。ここを守るのが俺の今の役目であろう。持ち場を離れることはできんな)」
 呂威璜「袁紹様が死んだ!?(おいおい、あの仲の悪い三兄弟だぞ。今頃、誰が利権を取るかで揉めてるんじゃねぇか。乗り遅れないためにも俺も行くべきか)」
 眭元進「曹操侮りがたしか(この烏巣までやられれば多くの兵糧を失うこととなろう。それだけは避けねばならん。持ち場を離れるべきではなかろう)」
 韓莒子「袁紹様が?そんな馬鹿な!?あり得ない!(兵数も物量もこっちが圧倒的だったのだ。何故、袁紹様が討たれる。この烏巣の守備を固めなければ)」
 趙叡「なんと、そのような(袁紹様が亡くなられるとは、この5人でこの烏巣を守らねばなるまい)」
 この5人の判断が明暗を分けることとなる。ここで5人が烏巣を放棄して、袁尚の元に向かっていたら恐らく袁紹軍から袁尚軍となって立て直しを図るのがもっと困難となったであろう。三兄弟は倉亭そうていというところに陣を張り、曹操軍に抵抗を続けることを決める。
 袁煕「袁譚兄さん・尚、先ずはなんとかなったな」
 袁譚「あぁ。取り敢えず皆をまとめることができた。尚、よくやったな」
 袁尚「袁譚兄さんと袁煕兄さんの支えがあってこそだよ。で、この後は烏巣を救援するんだよね袁煕兄さん?」
 袁煕「うむ。父上の死で少なからずの動揺があり逃げ出したものも多く、我が軍の兵糧拠点であった烏巣が孤立してしまった。あの兵糧を失えば先ず間違いなくこのまま我らは曹操軍に近い未来滅ぼされるであろう」
 袁譚「そいつはわかるが。煕よ策はあるんだろう?」
 袁煕「我が軍の武と騎兵の全てを使って烏巣を迅速に救援し、この倉亭に退く。父上を失った我が軍の動揺は凄まじい。実質、尚に仕える将は多けれども民や兵は強きものに従う。判断を謝れば大量離脱となりかねん」
 袁尚「そうなったら父上の守ってきた華北は」
 袁譚「地に堕ちるな」
 袁煕「あぁ、だからこそ我が軍の新たな武の象徴、袁譚兄さんの出番なんだ。文良・顔醜・蒋義渠・朱霊を連れて、烏巣の救援を頼む」
 袁譚「まぁ、そうだろうな。まぁ、袁尚軍に武の袁譚・智の袁煕ありと知らしめてやろうや」
 袁尚「袁譚兄さん、相手は勇猛揃いの曹操軍だ。無事に帰ってきてよ」
 袁譚「当たり前だろう。我らは3人で歩むと決めたのだからな」
 袁煕「今の袁譚兄さんは、信用できる。その武で暴れて蹴散らしてやってくれ」
 袁譚「熙は相変わらず手厳しいな。まぁ、無理もないか」
 袁譚が烏巣の救援に向かった。
 袁尚「袁譚兄さん、頼んだよ」
 袁煕「そう心配するな尚。今の兄上なら全盛期の顔良叔父上や文醜叔父上を凌駕するかもしれん。曹操軍の猛将たちとも渡り合ってくれるだろう」
 袁尚「信じるしかないよね。ここで、兵糧を失ったら全てが終わるんだから」
 袁煕「そういうことだ」
 袁譚が文良たちの元に来る。
 文良「袁譚様?」
 袁譚「文良、お前と俺は従兄弟みたいなもんだ。様なんていらねぇ。烏巣の救援に行くぞ。文良・顔醜付いてこい」
 文良「後方待機は暇しておりました。お供致す」
 顔醜「暴れてやらぁ」
 次に袁譚は、幽州の防衛を固めるためここを後にしようとしていた蒋義渠。同じく冀州の防衛を整えるために帰る準備をしていた朱霊の元に向かう。
 袁譚「邪魔するぜ」
 蒋義渠「袁譚様!?わざわざお見送りに」
 袁譚「いや、まだお前が居てくれて助かった。蒋義渠、手を貸してくれ、烏巣の救援に向かう」
 蒋義渠「成程、すっかり烏巣の存在を忘れておりました。確かにあの兵糧を失うことの方が死活問題と言えましょう。喜んで、手を貸しましょう」
 朱霊「話は聞いた。今こそ袁煕様より受けた恩を返す時、共に行こう」
 袁譚「朱霊!?お前は曹操のことを高く買っていたから父上が亡くなれば曹操の元に行くと思っていた。煕と何があったか詳しくは知らんが協力感謝する」
 朱霊「頭を上げられよ」
 袁譚が各将のところを回っている間にも烏巣には危機が迫っていた。
 淳于瓊「ここより数里先に怪しげな軍勢を発見しただと!」
 烏巣の兵「はい。恐らく曹操軍の手のものかと」
 淳于瓊「やはり烏巣を狙ってきたか。だが、松明を持っていたというのが気になるな。まさか、夜襲でこの烏巣を焼くつもりか!呂威璜・眭元進・韓莒子・趙叡、すぐにありったけの水を用意するのだ。夜襲に備えるぞ」
 呂威璜「仕切るんじゃねぇと言いたいが孤立した俺たちが協力しないことにはこの危機を乗り越えられねぇな。わかった。近くの井戸の水が空になるまで、桶に水を汲むぜ」
 眭元進「近隣住民からも水を分けてもらえないか頼むことにしましょう」
 韓莒子「燃えにくいように藁に水を染み込ませておきますぞ」
 趙叡「烏巣を失うわけにはゆかん。ワシは近くの川に兵たちと共に向かいありったけの水を汲んでこよう」
 淳于瓊「皆の協力に感謝する。共に、この窮地を脱するのだ」
 淳于瓊、酒さえ飲まなければ優秀な現場監督官である。この時、誰が跡を継いだか知らないが袁紹軍のため最善を尽くそうとしている。それが防戦にかけて最強と称されるある男の心を動かしていたことをこの時は知らなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...