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4章 三国鼎立

寡兵にて襄陽城を占拠した天才軍師

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 蔡勲に連れられまるで連行されるかのように縄に繋がれている蔡瑁と張允。
 蔡瑁「(ホントに上手くいんだろうな孔明)」
 劉琮「蔡瑁叔父上ぇぇ」
 蔡瑁「すまないな頼りない叔父で」
 張允「(蔡瑁のやつ、ホントに何もしなくて良いのか?)」
 だが場外へと出る門が開かない。
 蔡勲「俺は劉表軍が配下、蔡勲。眼前に迫る劉備軍の迎撃のためこの門を出たい。開門されよ」
 門兵「申し訳ありません。この城から出ることは許さぬと新しい城主様の御命令でして」
 少し前の襄陽城内の様子。諸葛亮は、弟の諸葛均・姉婿の龐山民・姉の諸葛笑鈴・司馬徽の門下生仲間の石韜・孟建と共に寡兵にて、襄陽城を占拠したのである。
 劉表「お前は姪婿殿、何故このような暴挙を。ひぃ」
 諸葛亮「お前は荊州を曹操に譲り渡すつもりか!」
 伊籍「それは何かの間違い。その剣を降ろしてください。ひぃ」
 諸葛均「黙れ、今兄上が話しているだろう」
 ???「このような暴挙が許されると思っているのか孔明」
 諸葛亮「旧知の間柄の韓嵩カンスウと言えどそれ以上口を開けば、命はないものと思ってください」
 向朗「まさか、こんな寡兵で襄陽城が占拠されようとは、何が目的なのですかな孔明殿」
 黄月英「孔明様が黙りなさいと言ったはずです」
 王威「聡明な臥竜殿と思えぬ暴挙ですぞ」
 龐山民「やれやれ、黙っておけと言ってるだろう」
 劉琦「このような目に遭わされて、一方的に黙っておけと言われるのですか」
 諸葛笑鈴「えぇ、何か問題があるかしら」
 劉表「わかったわかった。要求を飲むからどうか命だけは助けてくれぇい」
 諸葛亮「良いでしょう。では、襄陽城を明け渡し、すぐ様門を全て閉め、人の往来を禁じてもらいます」
 劉表「ひぃ。わかったわかったから剣をこちらに向けんでくれぇい」
 石韜「早くしろ孔明」
 孟建「グズグズしてたら逃げられるぞ」
 諸葛亮「今、全ての策が成りました。後は文聘殿次第」
 韓嵩「やれやれ、説明してくれるんだろうな孔明」
 諸葛亮「徳高トクコウ、全ては謀。劉表殿もお疲れ様でした」
 劉表「ふぅ。ワシの鬼気迫る演技はどうであった?」
 伊籍「殿、どう言うことですか?」
 劉琦「父上、寿命が少し縮まりましたよ。ゴホゴホ」
 向朗「孔明殿のこと。このようなことをする意味をずっと考えておったが成程、蔡勲を逃さぬ為であったか」
 諸葛亮「流石、巨達キョタツです。これで、蔡勲は。いえ、曹操に与しようとした者たちは、袋の鼠となりましょう」
 そして、門前で足止めされている蔡勲たち。
 蔡勲「そんなの知るか。とっとと開けろ。俺を誰だと思ってんだ。劉琮の叔父だぞ」
 蔡嫉「さっさと開けなさい下民」
 門兵「蔡嫉様!例え、劉表様の奥方様であったとしてもこの門を開けることはできません」
 蔡中「こうなったら強行突破しかねぇよ蔡勲従兄にぃ」
 蔡和「幸いなことに俺たちを足止めしてるのは目の前の門兵だけだ」
 蔡勲「それしか無いな」
 門兵「なっ何をするつもりだ。ひぃ」
 そこに文聘が兵を率いて到着する。
 文聘「劉琮様、ここにおられましたか。これは一体?蔡勲、貴様何をしている!」
 蔡勲「チッ厄介な忠犬が来やがった」
 文聘「俺は何をしていると聞いているのだ!」
 蔡嫉「煩いですよ文聘」
 文聘「蔡嫉様、これは一体どういうことですか?」
 蔡嫉「襄陽城に劉備軍が迫っていると聞いて逃げる準備をしていただけです。何か問題でも」
 文聘「そうでしたか。では、今から罪状を読み上げる」
 蔡嫉「はっ?」
 文聘「蔡勲、蔡嫉様を誑かし劉琮様を曹操に売り渡す暴挙、甚だ許されざることなり、軍規に則り、処分する」
 蔡勲「おいおい、待てよ。これは全部。そうだ蔡瑁の兄貴の命に従っただけなんだ」
 蔡瑁「往生際が悪いぞ蔡勲。姉上を誑かし劉琮の首を曹操に渡そうとした罪、償ってもらうぞ」
 張允「やっと暴れられるってわけだ」
 蔡勲「クソ。蔡中・蔡和、俺を守れ。相手は陸戦に慣れてない奴らだ」
 蔡中「ギャァ」
 蔡和「あがが」
 文聘「残念ながら、お前たちの生死は問われていない」
 蔡勲「嘘だろ」
 蔡瑁「大罪人、蔡勲。我が弟の不始末。俺が介錯してくれる」
 蔡勲「ほざけ。クソ兄貴が。少し早く生まれただけで、何でも命令しやがって、殺してやるよ」
 蔡瑁「言いたいことはそれだけか?」
 蔡勲「馬鹿な!何で、陸戦に苦手な兄貴に俺が」
 蔡瑁「大罪人、蔡勲。蔡瑁が引導を渡した」
 蔡嫉「まさか。蔡勲が私と劉琮を売ろうとしていたなんて知らなかったんです」
 蔡瑁「えぇ、姉上には何の罪もありませんよ。これからも義兄上の側で。曹操の妾になろうとしたなんて俺は聞いて無いですよ」
 蔡嫉「そっそれは!言葉のあやよ。劉表様を裏切るわけないじゃ無い。ねっ蔡瑁」
 蔡瑁「さぁ。今となっては、姉上の上っ面の言葉など届きませんな。身の振り方をよくよく考えられると良い」
 蔡嫉「うぐぐ」
 劉琮「蔡瑁叔父上ぇぇぇぇぇ」
 蔡瑁「このような目に合わせてしまい申し訳ない劉琮」
 劉琮「ううん。僕、きっと蔡瑁叔父上が何か手を打ってくれるって信じてた」
 文聘「御無事で何よりです若」
 劉琮「仲業、ありがとう。本当にありがとう」
 文聘「いえ、私は若の剣であり盾ですから当然のことをしたまで」
 全ての責任は蔡勲・蔡中・蔡和の3名にあるとして、蔡瑁と蔡嫉は罪には問われなかった。しかし、蔡瑁は親族の冒したこの罪を受け、職を辞し、隠居。蔡嫉は、劉表様から離縁を命じられ、庶民に降格となる。劉琮は、劉表の後継者から外れることで、初めて自由を手にした。そして、事が全て終わった後、諸葛亮たちは襄陽城から忽然と姿を消した。そして、劉備軍が襄陽城の門が開門されていて、怪しみながらも入ってきたのは今しがたである。
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