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4章 三国鼎立

絶望の淵に沈む孫策?

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 江夏の様子を丘から見せられていた孫策の元に于吉が戻ってくる。
 孫策「于吉、見てみろ。劉備がそんなに簡単にやられるわけねぇだろ。お前の仕込みも大したことねぇな。やっぱり力でねじ伏せてこそだ」
 于吉「だそうだ周瑜様」
 周瑜?「伯符らしい考え方だな。やれやれ、君が于吉道士と戦うなどと言うからこのようなことをしなければならなくなった」
 孫策「公瑾?嘘だろ。何でお前がそっち側に居るんだよ」
 于吉「周瑜様、そろそろ打ち明けてあげれば良いかと」
 周瑜?「あぁ。伯符、君には大殿は殺せないだろう?このままでは江東は近いうちに劉備の傀儡となるだろう。俺は我慢ならないのだ。だから謀反を起こすことにした。大殿の勢力を一掃し、孫権様を盟主として新たな江東を作る。そのために伯符には、大殿に殺されたという我々のための大義名分が必要なのだ。伯符、俺に手を汚させてくれるなよ」
 孫策「公瑾。本気なのか?親父を殺すって、そんなことそれに権も承知したって言うのか?」
 周瑜?「孫権様は実に優秀だ。無鉄砲な伯符と違い、先を見通しておられる。だからこそ、俺は伯符を裏切ることに決めたのだ」
 孫策「成程な。一見、筋が通っているように見える。公瑾ならそう言うかもなって。だが、お前は公瑾ではない。于吉、貴様がどうやって紛い物を作ったか知らんがこれは真っ赤な偽物だ」
 孫策がそう言うと周瑜だったものは目の前で弾け飛び中から木人形が出てきた。
 于吉「やれやれ。やはり木人形では役に立たんかったか。貴様と周瑜殿の絆の力は偉大と言うわけだな。では、別の方法で絶望に落とせば良いだけのこと。そろそろ頃合いだな」
 于吉がそう言うと何処からともなく周瑜率いる軍が江夏を襲撃した。
 孫策「馬鹿な!?公瑾のやつ、何を考えてるんだ!」
 于吉「ククク。周瑜殿にはこう吹き込んだのじゃ。江夏を守る兵は甘寧と蘇飛だとな。それに共に元劉表軍の者だとも言ったかのぅ。あっこれも付け加えておきましたな。知らなかったで通し切れば良いとなぁ」
 孫策「そんなの通用するわけないだろう。今や張郃に趙雲も来ている。完全に劉備軍の手のものが混じっているのに突撃したというのかあの聡明な公瑾が?貴様、さては何かしたな」
 于吉「此度は何もしておらん」
 孫策「何もしていなければ聡明な公瑾がこんなことするわけがない」
 于吉「やれやれ、信じないのは勝手だが、目の前で周瑜が討ち取られる様を見て、絶望に堕ちるが良い」
 その頃江夏を攻めた周瑜の様子。
 周瑜「于吉は信用ならない。アイツは、黄祖が攻めてきた時も自分が解決すると良い。此度も伯符の居場所を知っておきながら自分が探すから劉備軍を攻めよと。まるで誘導しているかのようにな」
 呂範「それで、凌操と鄧当に于吉の後を追うように命じたのですね」
 周瑜「アイツは怪し過ぎだ。何故、誰も知らない伯符の居場所を知っている?しかも俺は一言も伯符が攫われたとは言ってない。こうは言ったがもしかして伯符の居場所が?としか言ってないのにアイツは伯符が連れ去られたと言った。それは、アイツが犯人である決定的な証拠だろう」
 呂範「では、我々があえて于吉の策に乗ったのも」
 周瑜「全ては、伯符を助けるため。そして、于吉を油断させるためだ」
 江夏に現れた孫策軍に戸惑う劉備軍だったが様子が違うのを見て、田豊が打って出ようとしていた甘寧たちを止めていた。
 甘寧「アイツらは孫策軍?まさか約束を反故にして攻めてきたってのか。許せねぇ。蹴散らしてやる」
 田豊「それにしては、周瑜殿らしくない。まるで戦うそぶりがない。そもそも無策で突撃するような御方でもない。ここは様子を見るべきかと」
 蘇飛「相手を油断させるのが周瑜の策だったらどうする。興覇の言う通り、打って出て排除するのが良いだろう」
 劉曄「いや、ここは俺も田豊殿を推しますよ。周瑜なら、この時点で行動を起こしてくるでしょ。最悪、ここを奪っても、知らぬ存ぜぬで通せば良いわけですから」
 張郃「あれは、何だ弓?」
 高覧「敵さんやる気か?」
 趙雲「全員。盾を構えよ」
 鮑隆「姐さん、危ない」
 樊玉鳳「いえ、矢に何か付いてるわね。矢文かしら」
 陳応「矢文?」
 樊玉鳳「えぇ、読んでみるわね」
 親愛なる劉備軍の皆様へ。江夏の制圧、深くお喜びを申し上げる。付きましては、囚われた我が主君孫策を助けるため少し茶番にお付き合いしていただきたい。なーに、簡単なことです。小競り合いを演出してもらいたい。まるで、我らが相手の掌で踊っているかのように見せて、その隙に孫策を救出したいのだ。御協力頂けるなら、此度の荊州切り取りの件、我らは身を引かせて頂く。我らにとっては、荊州よりも孫策の命の方が重いので。準備ができたら軽く罵詈雑言を浴びせてもらいたい。孫策軍軍師、周瑜公紀。
 田豊「成程、主君の命を助けるためにそれでいて我らを傷つけぬように手紙をよこすとは、流石美周郎と称される御方ですな」
 甘寧「泣かせるじゃねぇか主君を助けるために協力して欲しいなんてよ。おぅおぅ、敵じゃねぇなら協力してやるよ」
 張郃「では、その任務。我らにお任せを」
 趙雲「ずるいぞ張郃。どうか我らに」
 甘寧「趙雲に罵詈雑言はなんか向いてねぇ気がするな。張郃、1つ頼むわ」
 張郃「それは、喜んで良いのか?だが与えられた任務はきっちりこなそう」
 周瑜軍と劉備軍による孫策を助けるための一度きりの茶番劇が始まろうとしていた。
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