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4章 三国鼎立

江夏攻略戦(破)

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 衝車を動かしていた兵が離れて盾で身を守るのを見て、ガラ空きの衝車に火矢を浴びせかけて燃やそうと考える蘇飛。
 蘇飛「アイツらは馬鹿なのか?衝車で門を破壊するのが攻城戦の常套手段だろう。だからこそ死に物狂いで突撃する。それなのに自分たちの身を守るため衝車から離れて矢を防ぐなど。ガラ空きとなった衝車に火矢を浴びせて燃やしてやれ」
 守備兵長「はっ」
 しかし、衝車に命中した火矢により燃え上がると考えていた蘇飛の思惑を打ち砕く。
 蘇飛「何故、火が付かない。一体何をした!?」
 何故木でできた衝車が燃えないのか。簡単なことだ衝車に使用した木を燃えにくいように耐火性を取り入れ。さらに周りに少し水分を纏わせることで、火矢程度の火なら当たって打ち消す。流石に油壺とかの強力な火なら燃えるが。
 袁燿「そんなもの効かんぞ。間も無く井闌車隊が所定位置に到着する。それまで耐えるのだ」
 黄叙「どうしたんです裴元紹殿?」
 裴元紹「いやぁ何もありやせんよ(おいおいおい。一番安全じゃなくて一番危険じゃねぇか。ヒィッ、弓の撃ち合いに巻き込まれて流れ矢で討ち死になんてごめんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)」
 衝車に気を取られ井闌が近付いていることに気付くのが遅れた時には遅かった。江夏を守る城兵に井闌車の上から弓の雨が降り注ぐ。
 守備兵「矢が矢が降ってくるぞ。グワァ」
 蘇飛「まさか。井闌車で橋をかけるのではなく。弓矢でこちらの城兵を確実に削るなど。何という弓の腕前を持っているのだ」
 守備兵「蘇飛様、このままでは上は持ちません。下に。グッ」
 蘇飛「ここまで精強だというのか。やむおえん。下に行き城門を死守する。皆の者、すまぬ」
 城門の上から衝車隊への矢が止む。それどころか城門の上を事実上制圧した。
 黄叙「こちらは片付いた。袁燿、後は任せるよ」
 袁燿「あぁ、衝車隊。進軍を開始せよ。江夏城の門を破壊するのだ」
 衝車兵長「はっ、我々にお任せを」
 衝車兵「さーてと、俺たちの力を見せつけてやるとしますか」
 衝車により江夏城の門がギギギと音を立て崩れそうになる。
 蘇飛「耐えるのだ。ここを失えば劉表様の治める首都襄陽への道が切り開かれてしまう。何としても阻止するのだ」
 劉琮「ヒィーーーー。来るのか劉備が来るのか。嫌だ死にたくない死にたくない」
 蔡瑁「劉琮、安心せよ。この叔父がついている。殺させはせん(劉表様は晩年で往年の冴えを失ってしまわれた。劉琮に荊州は荷が重かろう)」
 蔡勲「兄貴、そんなこと言うならよ。劉備軍を食い止めてきたらどうなんだ(討ち死にせず逃げ帰ってきた時が貴様の最後だ)」
 蔡和「そうですよ従兄上。劉琮様のことなら我々が見ておきますよ(せいぜい派手に散ってくださいよ。そしたら俺たちの天下だ)」
 蔡中「従兄上ならなんとかできるぜ。ここは俺たちに任せてさ(ヒヒヒ、劉備軍に挑んで無傷で帰れるわけがない。この隙に我々は劉琮様を連れて襄陽に帰るぜ)」
 張允「おいおい、蔡瑁1人でなんとかできるわけねぇだろ。お前らも来いよ」
 蔡勲「では、誰が劉琮様を守るというのだ。この馬鹿者が、そんなにいうなら貴様が共に行けば良いだろう(コイツは蔡瑁と共に育った男だ。ついでに一緒に死んでくれ)」
 蔡瑁「いや、俺1人で充分だ。お前たちは劉琮様のことを頼む」
 張允「チッわかったよ。気を付けろよ蔡瑁」
 蔡勲「それでこそ兄貴だ(チッ張允の奴をこっそり俺たちの監視においときやがったな。兄貴も俺たちを疑ってるってことか。だが、劉表様に逆らったお前と従順な俺たち。劉表様がどっちを選ぶかなんてわかりきってるよなぁ)」
 蔡瑁「(俺が何も知らないと思っているのか?王儁に何を言われたかわからないがお前たちは国どころか劉琮の命を差し出そうとしているのだぞ。徐州における曹操の虐殺を聞いたならわかっているだろう。俺は気弱な劉琮には平穏に暮らして欲しいのだ。孔明、お前にかかっている。どうやって劉備殿を説得するのか知らんが)」
 その頃、諸葛亮は自身の存在がバレないように徐庶と接触を図ろうとしていた。
 諸葛亮「見事な攻めですね。堅牢な江夏城をこうもあっさり落とそうとするとは、人材面においても整いつつある劉備殿を劉表では止められないでしょう。蔡瑁、貴方の判断は間違っていませんよ。劉琮を守りたいのなら劉備殿に付くのが最適解です。曹操による徐州虐殺を知るものとしては。どうにかして徐庶と接触をしなければ」
 徐庶「(あそこにいるのは孔明?まさか、庵から出てきたのか?君も頼まれて助言に赴いたら別のことを頼まれたってことか。それにしても誰を探しているのだろう。目立ちすぎて逆に怪しく見えるんだが。声をかけるべきか。巻き込まれでもしたら大変だからな)関羽殿、少し離れます」
 関羽「徐庶、どうしたのだ?」
 徐庶「少し、友人に似た人を見かけた気がして」
 関羽「なんと!このようなところにいては、我々の突撃に巻き込まれかねん。そういうことなら避難させるのだ」
 徐庶「関羽殿、助かります」
 関羽「うむ。江夏城はもう落ちたも同然。後は中に籠って徹底抗戦する者たちも城門が開けば士気がガタリと落ち降伏を決めるだろう」
 徐庶「そうですね。それでは少し行ってきますよ」
 徐庶は江夏城の近くで、ウロウロと動き回ったり誰かを探しているそぶりを見せている男に近付いていくのだった。
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