えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

江夏にて両軍が相対する

　蘆江への急襲作戦が失敗し、襄陽へと戻った劉表は荒れていた。
　劉表「何故、奇襲がバレていたのだ。何者かが漏らしたに違いあるまい。何としても探し出せ！」
　蔡瑁「義兄上、劉望之の件もだが何を焦っている」
　劉表「お前まで諫言するというのか！とっとと江夏にて、孫策攻めに参加している黄祖の代理をしている蘇飛と共に劉備軍を迎撃せんか！」
　蔡瑁「了解した(最近の義兄上の様子は何かおかしい。このままでは、可愛い甥である劉琮が全てを背負うことになろう。あのような弱気な性格の劉琮では、曹操に全てを奪われて殺されるだけか。孔明も全く痛いところを突いてくれる。甥に死んで欲しいと願う叔父がいるわけがないだろう。劉備との交渉材料があると言っていたが見当が付かん。今はこれ以上義兄上を怒らせぬよう江夏に向かうとしよう)」
　蔡瑁が立ち去ると曹操のためにできるだけ荊州戦線を膠着させたい王儁が劉表に告げ口をする。
　王儁「劉表様、劉備に奇襲のことを漏らした者こそ蔡瑁なのではありませんか？先程の口ぶりまるで劉望之と結託していたかのように見受けられましたが。そのような男に江夏を任せても大丈夫でしょうか？」
　劉表「何、蔡瑁がそのようなことをするわけがあるまい。我が息子劉琮の叔父なのだぞ」
　王儁「でしたらそれを利用して劉琮様も江夏に向かってもらうのは如何でしょう？そうすれば蔡瑁も劉琮様を危険に晒す真似はしないでしょう」
　劉表「うむ。それは良いかもしれんな」
　蔡勲「そういうことでしたら俺たちもついて行きやす。前から兄貴にはうんざりしてやした。変な動きをしたらとっつかまえてやりやすよ」
　蔡勲と蔡和と蔡中が蔡瑁の監視を言い出した。
　劉表「ほぅ。蔡瑁もまさか身内が密告者とは思うまい。良いだろう」
　こうして蔡瑁は退くことも許されない状態で江夏の戦いへと向かう。
　？？？「待てよ。親友の俺に相談もなく江夏に向かうなんて酷いじゃねぇか」
　蔡瑁「張允ではないか！親友だからこそ危険に巻き込みたくない俺の気持ちがわからないわけでもあるまい」
　張允「何言ってんだ。親友だからこそ隣で戦いたいって気持ちがわかんないのかよ」
　蔡瑁「全く、どうなっても知らんぞ」
　張允「おぅ。そもそも劉琮様は俺にとっても従兄弟に当たるからな」
　蔡瑁「そうだったな。お前の母は義兄上の亡くなった姉、劉蝶リュウチョウ様であったな。俺も可愛がってもらったので良く覚えている」
　張允「あぁ。そう考えると俺とお前の付き合いも長いな。俺も歳を取るわけだ」
　蔡瑁「お前が側に居てくれることを嬉しく思うぞ」
　張允「やめろやめろ。むず痒くならぁ」
　江夏では既に蘇飛が劉備軍と交戦する準備を整えていた。
　蘇飛「黄祖様はまだ戻らないか。江夏を失うわけにはいかん。速やかに防衛戦の準備を整えるのだ」
　江夏兵「はっ」
　劉表より江夏の援軍を任された劉琮たちが到着する。
　劉琮「ヒィ～。また劉備軍と戦えなど父上は鬼か」
　蔡瑁「義兄上が劉琮にそれだけ期待しているということだ(まさか劉琮と共に劉備軍と相対せよとは。義兄上は俺のことを相当疑っているようだな)」
　張允「俺たちも付いてるから頑張ろうや」
　劉琮「戦いたくないのだぁぁぁぁぁぁぁ」
　蘇飛「(こんなのを援軍に送るなど劉表様は何を考えている？)」
　蔡勲「(兄貴がボロを出したら背中からズブリと行かせてもらうぜ。幸いなことに許可なんて取る必要がねぇからなぁ)」
　蔡和「(蔡瑁の奴め。昔から色々こき使いやがってムカついてたんだ。良い機会だ。隙を見せたら謀反人に仕立て上げて殺してやる)」
　蔡中「(あの五月蝿い蔡瑁を始末する機会に恵まれるとはな。そもそも何故、劉琮様の叔父でありながら蔡嫉サイシツ従姉さんに従わないなんて何か企んでるに決まってるってんだ)」
　江夏に劉備軍が襲来する。
　劉備「やはり、あの程度の迎撃で済んだ以上、江夏の防備は整っていると見える」
　荀攸「殿、申し訳ございません。この俺がもっと殲滅していれば」
　劉備「荀攸、そんなに気を落とす必要はない。我が軍には暴れたりない雲長が居るからな」
　関羽「兄者、先陣は任せてもらいますぞ。袁燿、衝車を出すのだ」
　袁燿「はひぃ。ゴホン。俺の出番ですね」
　関羽「初陣なのだ緊張するなとは言わぬ。だがお前の衝車隊にかかっている。門を打ち破り早急に江夏を制圧するのだ」
　袁燿「おっお任せを」
　関羽「黄叙は、袁燿を援護せよ」
　黄叙「はい関将軍」
　関羽「うむ。先の戦いで良い面構えになったな黄叙よ」
　黄叙「あっありがとうございます」
　関羽「劉封は歩兵隊を率い衝車隊を守るのだ」
　劉封「はい関羽叔父上(これが戦場の空気。この戦いに勝利して父上に喜んでもらうのだ)」
　関羽「関平は門が開いたと同時に騎兵で突撃せよ」
　関平「はい父上に恥じぬ働きを(この戦にて手柄をあげなければ)」
　関羽「公孫続は、白馬義従を率いて、門が開いたら蹂躙せよ」
　公孫続「はっはい。(父上、見ててください。これが俺の率いる白馬義従です)」
　関羽「周倉・廖化・裴元紹・徐盛は、初陣の者たちを援護してやれ」
　周倉「じゃあ、オイラは関平様を補佐するぜ」
　廖化「元福。お前ずるいぞ。じゃあ、俺は公孫続を補佐してやる」
　裴元紹「(一番安全そうなのは黄叙かな)じゃあ、アッシが黄叙を補佐しやすぜ」
　徐盛「蘆江では暴れられなかったからな。劉封、お前を補佐してやる」
　こうして江夏攻めを関羽に任せることにした劉備。子供たちの成長を見たいという親心である。