上 下
190 / 531
4章 三国鼎立

諸葛亮の婚姻

しおりを挟む
 荊州にて大規模な戦が始まる少し前のこと。臥竜崗にて、諸葛亮が黄承彦の娘である黄月英コウゲツエイと身近な人たちを集めたささやかな宴を開いていた。そんな2人の出会いは、研究が大好きで結婚は二の次と研究に没頭する黄月英は、お見合いをボサボサの髪に汚れた服で行き断られ続けた。黄承彦も半ば諦めていた。そんな矢先、最後に1人だけどうしてもあって欲しいと頼み込んだのがきっかけだった。諸葛亮は生まれつき足が悪く馬に乗れなかった。立っている分には何も問題ないのだが歩く時は跋扈を引いていた。そんな諸葛亮と黄月英の出会いも唐突だった。会って欲しいと頼まれたにも関わらず現れないので、外に出た。そこで足を引き摺って、満開の桃の木を見上げる青年がいた。彼こそ伏龍と称される天才軍師の諸葛孔明であった。不思議と興味を持った黄月英が諸葛亮へと歩み寄り、尋ねた。
 黄月英「脚がお悪いのですか?」
 諸葛亮「これは、失礼しました。産まれついてのものです。この通り立っている分にはなんともないのですが歩くとなると乗り物みたいなのがあれば良いのですが」
 黄月英「それ、良いですわね」
 諸葛亮「ところでお嬢さんがこのようなところで1人どうされたのです?」
 黄月英「お見合いだったのですけれど、お相手の方にすっぽかされたみたいで、まぁ結婚するつもりは有りませんし、良いのですけど」
 諸葛亮「お見合い。お見合い。お見合い!?そうだったうっかりあまりにも美しい桃の木に見惚れてしまい時間に遅れてしまったようです」
 黄月英「では、貴方様が?」
 諸葛亮「初めまして、性を諸葛、名を亮、字を孔明と申します」
 黄月英「これは御丁寧に黄月英と申します。あの孔明様は私のこの姿を見て何とも思わないのですか?」
 諸葛亮「この姿とは?」
 黄月英「この髪と汚れた服のことです」
 諸葛亮「そのことでしたか。畑仕事をしていたらそれよりももっと汚れます。それに見て呉れがそれほど重要でしょうか?貴方は、私の脚のことを気にかけて話しかけてくださいました。私にとってはそっちの方が重要なことです」
 黄月英「プフフ。見て呉れは重要ではないですか。実に面白いですね孔明様は。決めました。私、この縁談をお受けします。孔明様、どうかこんなので良ければ貰ってください」
 諸葛亮「こちらこそ。こんなので良ければ」
 こうして2人は、今日めでたく結ばれることとなる。
 黄月英「それにしても孔明様はとんだ策士でしたわね。脚の悪いフリをして、私を騙すなんて」
 諸葛亮「黄承彦殿から話を聞いた時にどうしても妻に欲しかったもので悪いと思いながら一芝居打ったのです。でも馬に乗れないのは本当ですよ。そして、そんな私に貴方は四輪車を開発してくれました。移動が幾分か楽に」
 黄月英「どうしても私をポッ。っていやいやなってませんよね。人が居ないと動かせない代物なんですから」
 諸葛亮「そういう表情が豊かなところが大好きですよ月英」
 黄月英「もう、はぐらかさないでください」
 諸葛亮「(安心してください月英。この発明品もいつか役に立つ時が来るとそう思っているんですよ)」
 黄月英の親族で蔡瑁や劉表。諸葛亮の方からは親友の崔州平サイシュウヘイ・徐庶・龐統。学友である石韜セキトウ孟建モウケン。諸葛亮の長姉の諸葛愛鈴ショカツアイリン、その旦那である蒯祺カイキ。従兄弟である蒯越・蒯良。龐徳公ホウトクコウの息子である龐山民ホウサンミンの妻で諸葛亮の次姉の 諸葛笑鈴ショカツショウリン。諸葛亮の兄である諸葛瑾。諸葛亮の弟である諸葛均ショカツキンが来ていた。
 劉表「お前が結婚できるとはな」
 黄月英「その言い方は酷いです劉表叔父様」
 蔡瑁「俺も黄承彦から話を聞くたびにダメだと思っていた」
 黄月英「蔡瑁叔父様まで」
 劉表「まぁ良いではないか。幸せになるのだぞ」
 黄月英「はい」
 崔州平「今日はめでたい。孔明が結婚するとは。いやぁめでたい」
 諸葛亮「崔州平、もう酔っていますね」
 崔州平「何のことだ。ハッハッハ」
 石韜「まさか同期の中で1番早く結婚するとは、おめでとう」
 孟建「全くだな。おめでとう」
 諸葛亮「石韜・孟建も来てくださり嬉しいですよ」
 蒯祺「我が義弟よ。久しいな。おめでとう」
 諸葛亮「蒯祺義兄上、わざわざありがとうございます」
 諸葛愛鈴「私もいるわよ。亮ちゃん、おめでとう」
 諸葛亮「愛姉、ありがとうございます」
 龐山民「従兄弟の龐統と仲良くしてくれて感謝している。結婚おめでとう」
 諸葛亮「龐山民義兄上もわざわざありがとうございます」
 諸葛笑鈴「私もいるんだけどなぁ」
 諸葛亮「笑姉、ありがとうございます」
 諸葛瑾「亮、おめでとう」
 諸葛亮「兄上、忙しい中ありがとうございます」
 諸葛均「亮兄上、そろそろ」
 諸葛亮「そうであった」
 諸葛亮と黄月英が集まった皆の前で挨拶をする。
 諸葛亮「本日はお忙しい中、私たち2人のささやかな宴に来ていただきありがとうございます。願わくばここに集まりの皆様が敵味方に分かれることが無いように切に祈っています」
 黄月英「父様・劉表叔父様・蔡瑁叔父様、今までありがとうございました。私は今日より孔明様の妻となります」
 黄承彦「うっうっ。婿殿、月英のこと、宜しく頼みましたぞ」
 劉表「泣かしたら荊州兵を動員して、お前を捕らえてやるぞ」
 蔡瑁「フン。これを機にお前も劉表様に仕えるのだな」
 諸葛亮「いえ、私のような者は畑を耕すので精一杯です。天下などとてもとても」
 蒯越「その通りだな」
 蒯良「いや、彼こそ天下の賢人であろう」
 この日、諸葛亮の願ったことは叶わず。この1ヶ月後。劉表軍と劉備軍は江夏にて激突するのである。荊州の戦いの勃発である。だが、諸葛亮は久しぶりに数年離れ離れとなっていた兄弟姉妹と会うことができたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

処理中です...