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4章 三国鼎立

庵にて天下を論じる3人の男

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 時は200年、曹操と袁紹による天下分け目の大戦、官渡の戦いを間近に控えた荊州南陽郡にある臥竜崗がりょうこうの様子から始まる。ここに天下を論じる3人の男がいた。1人は未だ天下に名も知られていない伏せる龍を縮めて伏龍と称される賢人、諸葛亮孔明ショカツリョウコウメイ。1人は鳳凰の雛を縮めて鳳雛と呼ばれる賢人で、諸葛亮の次姉を妻にした龐徳公ホウトクコウの甥、龐統士元ホウトウシゲン。1人は義侠心に厚く、人の仇討ちを引き受け、役人に捕まるも仲間たちに助けられ、学問に励み、時に蛇のように獰猛かと思ったら亀のように耐える蛇亀だきんと称された賢人、元の名を単福ゼンフクこと徐庶元直ジョショゲンチョクである。この3人は、同じ師である司馬徽の元で学んだ兄弟のような間柄でお互いを字名で呼び合う仲であった。
 龐統「やれやれこの道中は、楽じゃないねぇ」
 徐庶「あぁそうだね。孔明は元気だろうか?」
 龐統「噂では何度も蔡瑁を通して劉表から仕官を受けているみたいだが断っているみたいだねぇ」
 徐庶「そういう士元は、今は孫策殿に仕官しているんじゃなかったかい?」
 龐統「周瑜殿の勧めでねぇ。まぁ孫策殿は、こんな容姿のアッシを重く用いてはくれないがねぇ」
 徐庶「勿体無いことをしているね」
 龐統「そう思ってくれんのは元直ぐらいなもんさ」
 2人が庵に辿り着きドアをノックすると頭に綸巾を被り、手に羽扇を持ち白い鶴氅を着た男が出迎える。
 諸葛亮「士元・元直、よく来てくれましたね。司馬徽先生の元を卒業して以来ですから半年ぐらいでしょうか。また3人で集まれて嬉しく思いますよ」
 龐統「孔明、こんな手紙を貰って、来ないわけには行かないねぇ」
 徐庶「孔明がまさか1番早く結婚するなんて、驚いているよ」
 諸葛亮「私自身、1番驚いていますよ。ですが良い縁を頂いたのです。士元と元直には、1日早く来てもらいましたが」
 龐統「孔明、おめでとうは明日に取っておくさ。1日早く呼んだってことは天下の情勢について議論したいってことじゃないかい?」
 諸葛亮「流石、士元ですね」
 徐庶「でも孔明、俺はこの通り罪人で逃げている最中。天下の情勢なんてわかるわけが無いじゃないか」
 諸葛亮「元直、フフフ。隠しても無駄ですよ。単福と名乗り、劉備殿にお仕えしたと聞いたのですが」
 徐庶「!?全く孔明には敵わないよ。あぁ、軍師として劉備殿に登用して貰ったよ。孔明の兄にもお会いした。元気そうだったよ」
 諸葛亮「それはそれは良いことをお聞きしました。劉備殿は、今1番力がある勢力の一つでしょう」
 徐庶「内部に入ってよくわかったよ。華北の名士、田豊殿に沮授殿。董卓軍随一の謀略家、李儒殿。王佐の才と謳われし荀彧殿。荀彧殿の甥で軍略家の荀攸殿。孔明の兄である諸葛瑾殿。それに何と言っても驚いたのは劉備殿の弟である劉丁殿だ」
 龐統「周瑜殿を策にて破った劉備の実の弟だねぇ」
 諸葛亮「先生の1番弟子で、翼虎と称されし策略家ですね。ですが彼の将星は不思議なのです。一度落ちた後、もう一度天に上がり前よりも強く光輝いているのです」
 徐庶「落ちた将星は上がらないよ孔明」
 諸葛亮「元直の言う通りです。ですが彼の将星は、確かに一度落ちたのです。こんなことは有り得ませんが彼の中に別の何かがいるのでは無いかと思っているのですよ」
 徐庶「ハハハ。実に孔明らしい考え方だよ」
 諸葛亮「士元、揚州では一悶着あったと噂で聞いていますよ」
 龐統「耳が速いねぇ。孫堅殿と孫策殿が親子喧嘩をしちまってねぇ。そこにも劉備殿が絡んでるのさ」
 諸葛亮「さしずめ娘を劉備殿に嫁がせたい孫堅と劉備を危険視している孫策の意見の相違ってところでしょうか?」
 龐統「!?全く、見ていないのに完璧に言い当てるとはねぇ。その通りさ。結果は、孫堅殿は娘の孫尚香殿を劉備に輿入れさせ、代わりに劉備の養女である橋国老殿の娘大喬を孫策殿の妻に小喬殿を周瑜殿の妻として、取り敢えずこれ以上の衝突の回避はしたってところさ」
 諸葛亮「賢明な判断でしょう」
 龐統「アッシもそう思うねぇ。劉備とは事を構えるべきではないさ。底知れぬ何かがある気がするさね」
 徐庶「こんなところだよ孔明」
 諸葛亮「えぇ、有意義な時間でした」
 話も終わろうとしたところで龐統が華北の情勢について諸葛亮に尋ねた。
 龐統「孔明、お前さんは曹操と袁紹どっちが勝つと見ているんだい?」
 諸葛亮「圧倒的に曹操とこの前までなら答えていましたが、今袁紹の隣で光り輝く3つの将星があります。互いに離れていた3つの将星がまるで寄り添い合うように。それがどちらに転ぶのか全く予想できません」
 龐統「あの仲の悪いと噂で聞いていた兄弟がねぇ」
 徐庶「心境の変化でもあったんじゃないかな」
 諸葛亮「1~2年で決着が着くと思っていたのですが長期戦になるんじゃないかと思っています」
 龐統「まぁ、周瑜殿に良い土産ができたさ」
 徐庶「士元、やはり周瑜殿も荊州を?」
 龐統「おっと、アッシとした事がうっかりだねぇ。忘れとくれよ元直」
 徐庶「わかった。ここだけの話にしておくよ」
 龐統「ありがとう。数多いた群雄も淘汰され、華北の情勢次第では、次は南さ。曹操一強にしないためにも頑張らないとねぇ。その前に今はめでたい孔明の結婚だけどねぇ」
 徐庶「あぁ、士元」
 諸葛亮「士元・元直、ありがとう」
 当初もっと乱れるかと思っていた天下も華北の袁紹・遼東の公孫度・中原の曹操・涼州の馬騰・益州の劉璋・漢中の張魯・徐州の劉備・江東の孫堅・交州の士燮・荊州の劉表の10勢力となった。そしてこれから始まるは、今までよりも熾烈を極める戦乱の世である。
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