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3章 群雄割拠
間話休題15 青空塾の開校
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これは、第二次徐州侵攻を耐え抜いた直後の下邳の話である。義賢が次代を育てるため子供達に学びの場を提供すると言い出したのである。
義賢「子供たちは国の宝です」
劉備「突然どうした丁?」
荀彧「話が見えませんね」
義賢「えっ?子供達は国の宝だ」
荀彧「それはわかりました」
劉備「丁、大丈夫か?」
義賢「ということで、子供たちの学びの場を作りたいと思います」
荀彧「そう来ましたか」
劉備「学びの場?」
義賢「俺や兄上ももう30代なんですよ」
劉備「あぁ。そうだな」
義賢「僕たちの代で戦乱が治まらない時のことをそろそろ考える時に差し掛かっているんです」
劉備「考えたくも無いがそうだな」
荀彧「だから次代を育てたいとそういうことでしょう?」
義賢「流石荀彧殿」
荀彧「馬鹿にしてるんですか劉丁殿?」
義賢「滅相もありません」
荀彧「しかし、次代を育てると言っても簡単ではありませんよ。そもそも、余分なお金など持ってる民など居ないでしょう」
義賢「勿論、タダで」
荀彧「無料!?それでも問題があります。多くの民が読み書きをできません。どうするつもりですか?まさか身体で教えるとかでは無いですよね?」
義賢「えぇ、話すことはできても書くことはできない。なら識字率を上げれば良いんです」
荀彧「簡単に言いますが具体的にどうするつもりですか?」
義賢「青空塾の開校です」
荀彧「青空塾?」
義賢「はい」
荀彧「あの劉丁殿、説明が無いのですが、、、」
義賢「あぁ。そうでした。青空塾とは要は部屋とかそういう閉ざされた空間でやるのではなくて、外に木で作った机と椅子を並べて、要らない紙を使って」
劉備「丁、要らない紙など存在しない。書物を書き写したりするときに紙は使用するが教えるときにまで紙を使うのはな」
義賢の中身は現代人の劉義賢だ。それゆえ、この時代では紙が貴重なことを知らなかったのである。
義賢「そんな?じゃあ、文字をどうやって書けば黒板は?」
荀彧「黒板?なんですそれは?」
義賢「緑色の板にチョークで文字を書いて、スポンジの塊で作ったようなやつで拭いたら綺麗に消えるんです」
荀彧「白墨?海綿?なんのことを言っているのかさっぱりわかりません」
義賢「(マジかよ。どうやって文字教えたら良いんだ。このままだと劉封は関羽殿を見殺しする馬鹿に育つし、阿斗は暗愚と呼ばれる未来を回避できないぞ。困ったな)」
そこを諸葛瑾が入ってきた。
諸葛瑾「簡単では無いですか。要は大きい板と机と椅子があれば良いということでしょう」
義賢「そうです」
諸葛瑾「それなら、何も問題ないのでは?」
荀彧「確かに」
劉備「場所はどうする?」
諸葛瑾「それこそ、今の話ではどこでもできそうなものです。寧ろ画期的とさえ言えるでしょう。それに識字率を上げたいのなら大人にも文字の読み書きを教えるべきです。まだ見ぬ才を持つ者がいるかも知れませんよ」
荀彧「確かに諸葛瑾殿の言う通りです。文字の読み書きについては、大人にも学んでいただきましょう」
義賢「それで良いなら」
荀彧「名前は何でしたっけ?青空塾で良いのですか?」
義賢「いえ、決めている名があるんです。ヨシカタ塾と」
荀彧「ヨシカタ?変な名前ですが良いでしょう」
義賢「アハハ(変な名前か。僕の本名なんだけどな。この時代に来たのも何かの縁と思って少しでも爪痕を残しておきたくて)」
こうして始まったヨシカタ塾の最初の生徒は、劉封・関平・袁燿・袁紅姫・公孫続・公孫凛風・黄叙の劉備軍の次代を担うであろう面々と徐州各地から読み書きを学びたい子供たちであった。塾長として、そして先生として挨拶をするため登壇する義賢。
義賢「本日は、暑い中こんなにたくさんの子供達に本校ヨシカタ塾にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。本校の特徴としまして、、」
劉封「叔父上、話長いぞー」
関平「叔父上、日が暮れちまうー」
袁燿「叔父上、早く始めましょう」
袁紅姫「叔父上様ー」
公孫続「叔父上、学びたいことがたくさんあるのです」
公孫凛風「叔父上様、早く早く」
黄叙「劉丁様、話はその辺で」
義賢「そうだな(いつの時代も校長先生の話は長い。それを自分がやるとは。全く、感慨に更けさせてももらえんか)」
そして、本日一限目の文字の読み書きを教える。そして、もともと文字の読み書きができる7人のうち劉封・関平・公孫続・袁燿・黄叙は二限目の荀彧による戦術指南へ。他の徐州の子供たちは引き続き文字の読み書きを学ばせた。そこで早速、効果が出たのだ。荀彧のとある設問に劉封が答えた回答をバッサリと切り捨てたのだ。
荀彧「では、関羽殿がピンチに陥ったとしましょう。援軍を送れば関羽殿は助かるかも知れません。ですが土地は失地するとします。この時、どうするのが良いと思いますか?」
みんなが悩む中劉封がいの一番に答える。
劉封「関羽叔父上1人の命よりもその土地を選びます」
荀彧「劉封、それは何故です?」
劉封「援軍を率いて助けに向かい、民が戦火に晒されるなら、俺は民を守りたい」
荀彧「その志は立派だと思います。ですが答えとしては大間違いです。関羽殿を失うことは結果的により多くの民と土地を失うことに繋がるでしょう。時には切り捨てることも大事です。ですが関羽殿の武勇は天下に轟いています。その名将を失うということは、名声の失墜に繋がり、結果衰退は免れないでしょう。よく覚えておきなさい劉封。選ばなければいけない時が来るでしょう。その時、何が殿にとって1番かを考えるのです。勿論、劉封貴方が関羽殿を超える武の強者になるというのなら話は別ですがね。フフッ」
劉封「肝に銘じます。それにしても最後鼻で笑うなんて酷いよ荀彧先生」
関平「父上はやっぱりとんでもないのだな」
荀彧「劉封、失礼しましたね。でも次代を担うことになる貴方たちはこれから切磋琢磨し、腕を磨きその大きな背中を超えて行けば良いのですよ。そのための協力なら皆惜しみませんから」
公孫続「はい(父上、見ていてください。必ずや劉備軍に公孫続ありと轟かせて見せますから)」
袁燿「できるだろうか(父上、養父殿や叔父上殿の役に立ちたいと学びに来ましたが、こんな怯えてばっかりの俺が天まで轟かせられるでしょうか?)」
黄叙「頑張らないと(背が小さくて非力な僕でも父上たちの役に立つ道を探すんだ)」
この青空塾ことヨシカタ塾のお陰で徐州における大人も子供も文字の読み書きができることとなり、多くの書物の写しがこの徐州に集まることとなった。そして、この教えを胸に刻んだ劉封があの劉備軍最大のピンチに活躍することをヨシカタ塾を開いた義賢はまだ知らない。
※作者の後書き
今日の投稿で間話休題終わりとなります。明日から登場人物紹介ページが更新されるので、そちらの方を読んでお待ちいただくか。面白かったシーンを見直すなりしていただけると幸いです。執筆再開は19日の日曜を予定しています。頑張って続き書くどー٩( 'ω' )و
義賢「子供たちは国の宝です」
劉備「突然どうした丁?」
荀彧「話が見えませんね」
義賢「えっ?子供達は国の宝だ」
荀彧「それはわかりました」
劉備「丁、大丈夫か?」
義賢「ということで、子供たちの学びの場を作りたいと思います」
荀彧「そう来ましたか」
劉備「学びの場?」
義賢「俺や兄上ももう30代なんですよ」
劉備「あぁ。そうだな」
義賢「僕たちの代で戦乱が治まらない時のことをそろそろ考える時に差し掛かっているんです」
劉備「考えたくも無いがそうだな」
荀彧「だから次代を育てたいとそういうことでしょう?」
義賢「流石荀彧殿」
荀彧「馬鹿にしてるんですか劉丁殿?」
義賢「滅相もありません」
荀彧「しかし、次代を育てると言っても簡単ではありませんよ。そもそも、余分なお金など持ってる民など居ないでしょう」
義賢「勿論、タダで」
荀彧「無料!?それでも問題があります。多くの民が読み書きをできません。どうするつもりですか?まさか身体で教えるとかでは無いですよね?」
義賢「えぇ、話すことはできても書くことはできない。なら識字率を上げれば良いんです」
荀彧「簡単に言いますが具体的にどうするつもりですか?」
義賢「青空塾の開校です」
荀彧「青空塾?」
義賢「はい」
荀彧「あの劉丁殿、説明が無いのですが、、、」
義賢「あぁ。そうでした。青空塾とは要は部屋とかそういう閉ざされた空間でやるのではなくて、外に木で作った机と椅子を並べて、要らない紙を使って」
劉備「丁、要らない紙など存在しない。書物を書き写したりするときに紙は使用するが教えるときにまで紙を使うのはな」
義賢の中身は現代人の劉義賢だ。それゆえ、この時代では紙が貴重なことを知らなかったのである。
義賢「そんな?じゃあ、文字をどうやって書けば黒板は?」
荀彧「黒板?なんですそれは?」
義賢「緑色の板にチョークで文字を書いて、スポンジの塊で作ったようなやつで拭いたら綺麗に消えるんです」
荀彧「白墨?海綿?なんのことを言っているのかさっぱりわかりません」
義賢「(マジかよ。どうやって文字教えたら良いんだ。このままだと劉封は関羽殿を見殺しする馬鹿に育つし、阿斗は暗愚と呼ばれる未来を回避できないぞ。困ったな)」
そこを諸葛瑾が入ってきた。
諸葛瑾「簡単では無いですか。要は大きい板と机と椅子があれば良いということでしょう」
義賢「そうです」
諸葛瑾「それなら、何も問題ないのでは?」
荀彧「確かに」
劉備「場所はどうする?」
諸葛瑾「それこそ、今の話ではどこでもできそうなものです。寧ろ画期的とさえ言えるでしょう。それに識字率を上げたいのなら大人にも文字の読み書きを教えるべきです。まだ見ぬ才を持つ者がいるかも知れませんよ」
荀彧「確かに諸葛瑾殿の言う通りです。文字の読み書きについては、大人にも学んでいただきましょう」
義賢「それで良いなら」
荀彧「名前は何でしたっけ?青空塾で良いのですか?」
義賢「いえ、決めている名があるんです。ヨシカタ塾と」
荀彧「ヨシカタ?変な名前ですが良いでしょう」
義賢「アハハ(変な名前か。僕の本名なんだけどな。この時代に来たのも何かの縁と思って少しでも爪痕を残しておきたくて)」
こうして始まったヨシカタ塾の最初の生徒は、劉封・関平・袁燿・袁紅姫・公孫続・公孫凛風・黄叙の劉備軍の次代を担うであろう面々と徐州各地から読み書きを学びたい子供たちであった。塾長として、そして先生として挨拶をするため登壇する義賢。
義賢「本日は、暑い中こんなにたくさんの子供達に本校ヨシカタ塾にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。本校の特徴としまして、、」
劉封「叔父上、話長いぞー」
関平「叔父上、日が暮れちまうー」
袁燿「叔父上、早く始めましょう」
袁紅姫「叔父上様ー」
公孫続「叔父上、学びたいことがたくさんあるのです」
公孫凛風「叔父上様、早く早く」
黄叙「劉丁様、話はその辺で」
義賢「そうだな(いつの時代も校長先生の話は長い。それを自分がやるとは。全く、感慨に更けさせてももらえんか)」
そして、本日一限目の文字の読み書きを教える。そして、もともと文字の読み書きができる7人のうち劉封・関平・公孫続・袁燿・黄叙は二限目の荀彧による戦術指南へ。他の徐州の子供たちは引き続き文字の読み書きを学ばせた。そこで早速、効果が出たのだ。荀彧のとある設問に劉封が答えた回答をバッサリと切り捨てたのだ。
荀彧「では、関羽殿がピンチに陥ったとしましょう。援軍を送れば関羽殿は助かるかも知れません。ですが土地は失地するとします。この時、どうするのが良いと思いますか?」
みんなが悩む中劉封がいの一番に答える。
劉封「関羽叔父上1人の命よりもその土地を選びます」
荀彧「劉封、それは何故です?」
劉封「援軍を率いて助けに向かい、民が戦火に晒されるなら、俺は民を守りたい」
荀彧「その志は立派だと思います。ですが答えとしては大間違いです。関羽殿を失うことは結果的により多くの民と土地を失うことに繋がるでしょう。時には切り捨てることも大事です。ですが関羽殿の武勇は天下に轟いています。その名将を失うということは、名声の失墜に繋がり、結果衰退は免れないでしょう。よく覚えておきなさい劉封。選ばなければいけない時が来るでしょう。その時、何が殿にとって1番かを考えるのです。勿論、劉封貴方が関羽殿を超える武の強者になるというのなら話は別ですがね。フフッ」
劉封「肝に銘じます。それにしても最後鼻で笑うなんて酷いよ荀彧先生」
関平「父上はやっぱりとんでもないのだな」
荀彧「劉封、失礼しましたね。でも次代を担うことになる貴方たちはこれから切磋琢磨し、腕を磨きその大きな背中を超えて行けば良いのですよ。そのための協力なら皆惜しみませんから」
公孫続「はい(父上、見ていてください。必ずや劉備軍に公孫続ありと轟かせて見せますから)」
袁燿「できるだろうか(父上、養父殿や叔父上殿の役に立ちたいと学びに来ましたが、こんな怯えてばっかりの俺が天まで轟かせられるでしょうか?)」
黄叙「頑張らないと(背が小さくて非力な僕でも父上たちの役に立つ道を探すんだ)」
この青空塾ことヨシカタ塾のお陰で徐州における大人も子供も文字の読み書きができることとなり、多くの書物の写しがこの徐州に集まることとなった。そして、この教えを胸に刻んだ劉封があの劉備軍最大のピンチに活躍することをヨシカタ塾を開いた義賢はまだ知らない。
※作者の後書き
今日の投稿で間話休題終わりとなります。明日から登場人物紹介ページが更新されるので、そちらの方を読んでお待ちいただくか。面白かったシーンを見直すなりしていただけると幸いです。執筆再開は19日の日曜を予定しています。頑張って続き書くどー٩( 'ω' )و
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