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3章 群雄割拠

間話休題14 張角診療所の新たな施設。その名も療養所

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 これは、黄巾党の党首だった張角が義賢に命を救われ荊州奥地に張角診療所なるものを作って、少し経った頃の話である。どんな病でも治せると聞きつけた金持ち連中たちが押し寄せたのである。
 豪商の男「張角診療所ってのはここか?頼む息子を助けてくれ。金ならいくらでも払う」
 豪商の男の息子「パパ。お腹が痛いよ~」
 豪商の男「頼む、この通りだ」
 張角「ふむふむ。これは。張宝、虫下しの薬じゃ」
 張宝「はい、兄上」
 豪商の男「虫下しの薬?」
 張角「うむ。簡単に言うとな。この子のお腹の中に虫が棲みついてしまったんじゃ。それをな駆除するための薬じゃ。安心せい子供にも安心じゃ。死んだらワシのことを好きにすりゃいい」
 豪商の男「わっわかった。それで助かるなら構わねぇ」
 薬を飲んで10日ほど経つと男の子は元気になった。
 豪商の男「奇跡だ。約束だ。金ならいくらでも渡す」
 張角「良い良い。命を救うのが医者の仕事。金など取らん」
 豪商の男「そういうわけにはいかねぇ。だったら治療費じゃなくて、この診療所の修繕費って事で受け取ってくれ。何かあった時に困るからよ」
 張角「全く、頑固な男じゃ。そう言う事なら仕方あるまい」
 豪商の男「おぅ。後、俺は中原で顔が広いんだ。ここのこと、広めとくよ」
 張角「それは有難い。助けられる命を助けるのが医者としてのワシの本分じゃ」
 そんな事が続き、金は要らないと言うと皆、修繕費として金を置いていく。その金の使い道に悩んでいた頃。綺麗な女性が幼い子供を抱き、母を守るように前で辺りを警戒する少年。さらには、見覚えのある年老いた男が訪ねてきた。
 ???「すみません。ここが張角診療所でしょうか?」
 張梁「ヘイ(なんて綺麗な御方なんだ。でも子連れってことは、結婚してるってことだよな)」
 ???「おい、お前。母上を嫌らしい目で見るな!」
 張梁「見てねぇよ(いや見てたけどよ。なんだこのガキって思ったが母親を守る気概ってやつかね。良いじゃないの)」
 張角「梁、早くお客様を通さんか馬鹿者!」
 張梁「兄貴、すっすまねぇ。どうぞ」
 綺麗な女性が抱く幼い子供と少年が張角と話す。
 ???「劉彩華と申します。胸に抱いてるこの子が曹鑠。そこにいる私の小さな守り人が曹昂です」
 張角「張角と申します」
 曹昂「張角は死んだって父さんから聞いた。お前は何者だ?」
 張宝「この世には顔も名前も同じ人間が3人はいるそうですよ」
 曹昂「そっそうなのか?じゃあ父上に似た人が1人2人3人、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 張角「宝よ。そう揶揄ってやるでない」
 張宝「フフフ」
 劉彩華「女性のお医者様がいらっしゃるなんてとても安心ですわ」
 曹鑠「マンマ」
 劉彩華「あら、お腹が空いたのかしら」
 張宝が衝立に布を被せて、囲い込む。
 張宝「これでどうでしょうか?」
 劉彩華「こんなことまでしていただけるなんて、ありがとうございます。ゴホゴホ」
 張宝「いえいえ。同じ女ですもの。気持ちがわかりますから(この咳、風邪ではない。それにこの子、確か曹鑠くんだったわね。呼吸音がおかしい?あの薬を調合しなければ)」
 劉彩華が曹鑠にミルクを与え終わる。
 劉彩華「お手数をおかけいたしました」
 張宝「いえいえ、劉彩華さんにはこちらの薬を。曹鑠くんは、まだ小さいからお薬は飲めないので経過観察かな」
 劉彩華「お医者様ですものね。病気だとすぐわかりますわよね。えぇ。暫く療養すると夫には伝えていますので、問題ありません」
 張角「そうでしたか。では、あれのお披露目じゃな」
 張角診療所の横に新しく作った施設へと案内される劉彩華たち。
 劉彩華「ここは?この布敷みたいなのは何かしら?」
 張角は義賢にベッドなるものを教えられ、木で組み立て、そこに綿を敷き詰めたマット。さらに布団なるものを組み合わせた療養施設を作ったのだ。かなりのお値段がかかりこの広さでたった5つと赤ちゃん用のベッド3つしかできなかったが。
 張宝「まぁ、寝てみてください」
 劉彩華「えぇ。えっ!?何この沈むような包み込んでくれる安心感。それにこの布団でしたっけ?とても暖かいわ。しかもこの赤ちゃん用の寝る所。私からも曹鑠がよく見えて安心ですわ」
 張角「ここで、しっかり療養すれば、すぐに戻れますぞ」
 劉彩華「噂話を信じてここまで来たけど本当に良かった。何から何までありがとうございます」
 張宝は赤ちゃん用のベッドを劉彩華の隣に移動させた。
 劉彩華「まぁ、こんなことまでしていただけるなんて」
 張宝「いえいえ。それでは」
 外に出ると入り口で年老いた男と張梁が揉めていた。
 ???「ええい、張角を出せと言ってあるであろう」
 張梁「テメェ、まだ兄貴のこと狙ってんのかよ。会わせられると思ってんのか!」
 ???「そんな口聞いても良いのか?ワシが朝廷で黄巾党の党首が生きていたと拝聴しても良いのか?良いのか?」
 張梁「殺してやる」
 張角「梁、お客様に対して無礼であろう。これは弟が失礼を致した。何用で参られましたかな劉焉殿」
 劉焉「ホッホッホ。やはり張角であったか。なーに、心の病というやつじゃ。ストレスというな」
 張角「また逃げたのですな?」
 劉焉「えぇい。仕方なかろう。息子2人と愛する女を取り合うなどできると思うか?」
 張角「ハハハ。父から聞いていましたが確か盧蘭殿でしたか?美貌の持ち主で張衡殿と取り合ったとか?」
 劉焉「そうじゃ。まぁそのなんじゃ。色々と便宜を図る口実にその口で何度かお願いしたことはあるが。ふっ不倫は無い。断じて」
 張角「・・・。宝、療養所に案内だ」
 張宝「かしこまりました。治療は、下半身の切除ですね」
 劉焉「待て、待て。ほら、お前たちが小さい時、抱いて世話してやったこともあろう。なっなっ」
 張宝「そんな人が脅しに来ますかね普通?」
 劉焉「悪かったと申しておるだろうが滞在費は払うゆえ。益州が落ち着くまでの間置いて欲しいだけなんじゃ」
 張角「仕方ありませんな」
 劉焉「すまん」
 こうして、病気ではなく心因ストレスで逃げてきた劉焉も療養施設に入れたのだった。
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