182 / 544
3章 群雄割拠
間話休題13 許貢と闇夜団
しおりを挟む
これは黄巾の乱収束直後の揚州呉郡の話である。朝廷より揚州牧に任命された劉繇から呉郡の太守に任命された男の名を許貢という。これは彼がとある男を助けるところから始まる。
許貢「殿にここを治めるようにと頼まれたがどうしたものか。んっ?」
今にも死にそうな真っ黒な道士服を身に纏った男が血を出して倒れていた。
許貢「いかん、このままでは。それにしても禍々しさの中に惹きつける何かを持った方だ。これも何かの縁であろう」
許貢は、才能があっても貧しく罪人や賊になった者を助けて、飯を振る舞うことからいつしかその者たちの拠り所となり、彼らが許貢の食客となり主人である許貢に尽くす。そうしてできた許貢の食客集団のことを闇夜団と呼ぶ。真っ黒な道士服を身に纏しこの男も例外ではなく許貢の家に連れて行かれた。
???「殿、おかえりなさいませ」
許貢「その言い方はよさぬか。柊」
闇夜団のメンバーは皆名前を捨て、一文字から二文字の名が付けられている。この柊という女性は、元奴隷で主人からの性的な暴力に耐えかねて殺害し罪人となった。美貌の持ち主であり、闇夜団ではあんなに嫌だった性的なことを武器にして情報を集める諜報任務が主である。
柊「そうでしたね。今はアナタでしたわね」
許貢「うむ。お前の表の顔は、私の妻だからな」
柊「心得ております。ところで其方は?」
柊が許貢の背負う男に目をやる。
許貢「そうだった。鏑」
鏑と呼ばれた男が部屋から出てくる。
鏑「殿、お呼びでやすか。ややっ?これはかなりの大怪我とお見受けしやす。すぐに治療致しやしょう」
許貢「頼む」
鏑と呼ばれたこの男も闇夜団のメンバーだ。医術を志していたが家が貧しく、試験を上辺だけで落とされ、今でいうところの無免許医として、治療していたところを摘発され、お縄になりそうなところを逃げ出し許貢に拾われたのである。
鏑の治療でなんとか峠を越えたこの真っ黒な道士は、呉郡にて、張角たちに殺されたと思われていた于吉であった。
于吉「ううん、ここは何処じゃ?ワシは、うぐっ」
許貢「気付かれましたか?まだ安静にしていてくだされ。この呉郡の太守を務めることになりました許貢と申す」
于吉「お前がワシを助けたのか?やれやれ、人に助けられるとはこの于吉も落ちぶれたものよな」
許貢「見たところ、于吉殿も追われる身とお見受けする。こんなところで良ければ、傷が癒えるまで療養されるが良かろう」
于吉「ヒャーッハッハッハッ」
???「何がおかしいんでい。殿に礼を言えってんだ」
鏑「まぁ、無事ならそれで良かったじゃないでやすか。梟の旦那」
梟と呼ばれたこの男は、闇夜団を束ねるリーダーだ。元暗殺一族の出身だったが家族の裏切りに遭い、命尽きようとしていたところを許貢に救われた。それ以降、殿として、影で許貢を支えるため同じように助けられた者たちを束ねて闇夜団を結成したのだ。
于吉「すまんすまん。気に障ったのなら謝るわい。こんな怪しげな男を匿う男がいるもんなんだと思うてな(溜め込んだ呪術で若々しさを保っていたのが力が抜けて年老いてしまったわい。全く、張角の奴め。いつか、必ずその命を貰いに伺うとしようぞ)」
許貢「才能ある者なら罪人だろうと用いるそんな気概のある方が現れた時のために、こうして才能ある者たちを囲っているのですよ」
于吉「ヒャヒャヒャヒャ、全く面白い男じゃ。少し動くでないぞ(瞳術はまだかけれんか。溜め込んだ呪術が溢れだしてしもうたからのぅ。じゃがこれくらいならまだできよう。ほほぅ、この呉郡をどう治めようか悩んでおるのか。良い良い、こんなワシを抱え込む胆力に免じて助言してやるとしようぞ)」
許貢「もう、動いても宜しいか?」
于吉「すまんすまん。お前が何を悩んでいるのかを覗き込んでいたのでな」
許貢「!?(あんなに見つめてくるからこの男はそっち系なのかと思ったなどとは言えんな)」
于吉「ハッハッハッ。ワシだって女の方が好みじゃ」
許貢「!?(心を読まれた!?)」
于吉「そういうことじゃ。ワシに隠し事は通用せんぞ。呉郡の治め方じゃが、この言葉を言ってやれば良い。それで南の厳白虎も手を出さず協力するであろう」
許貢「!?。どうやら于吉殿の力は本物のようだ。して、その言葉とは?」
于吉「于吉様が蘇ったじゃ」
許貢「???」
于吉「ヒャッヒャッヒャッヒャ」
半信半疑ながらも許貢は呉郡の民衆の前でこの言葉を呟いた。すると民衆はまるで洗脳にでもかかったかのように許貢に拝礼し、呉郡は発展することとなった。その後、すぐ于吉は、呪術を貯めるため洞窟の奥深くに籠った。そして黄巾の乱より12年が経った。
于吉「ヒョッヒョッヒョヒョ。見た目も若々しく戻った。さて、張角よ。リベンジと行こうではないか。それにしても呉郡の様子がおかしい。許貢は何をしている?」
街に出た于吉は短刀をチラつかせながら男を付ける柊を見つける。柊がその男に斬りかかろうとしたところを抑えて、引き離す。
于吉「一体どうしたというんだ?」
柊「離せ離せと言っている。アイツが殿を主人を許さない。貴様には関係ない話だろう」
于吉「そうであったな。これでどうじゃ?」
柊「于吉!戻っていたのか?」
于吉「今しがたな。さっきの話の続きじゃが彼奴が許貢を殺したというんじゃな?」
柊「あぁ、紙一枚だ。紙一枚で斬首だ」
その紙を読む于吉。
于吉「なんと!そのようなことが。お前たちには世話になった恩がある。許貢に返せんかったがお前たちに返そう。彼奴を殺す手伝いをしてやろう」
柊「本当か?頼む」
于吉「うむ(小覇王孫策か。ヒョッヒョッヒョヒョ。張角の前の肩慣らしに良いであろう。見たところ耐性もなさそうじゃしな。復活したワシの呪術の最初の餌食にしてやるとしよう)」
呉郡にて厄介なことが起ころうとしていたのだった。
許貢「殿にここを治めるようにと頼まれたがどうしたものか。んっ?」
今にも死にそうな真っ黒な道士服を身に纏った男が血を出して倒れていた。
許貢「いかん、このままでは。それにしても禍々しさの中に惹きつける何かを持った方だ。これも何かの縁であろう」
許貢は、才能があっても貧しく罪人や賊になった者を助けて、飯を振る舞うことからいつしかその者たちの拠り所となり、彼らが許貢の食客となり主人である許貢に尽くす。そうしてできた許貢の食客集団のことを闇夜団と呼ぶ。真っ黒な道士服を身に纏しこの男も例外ではなく許貢の家に連れて行かれた。
???「殿、おかえりなさいませ」
許貢「その言い方はよさぬか。柊」
闇夜団のメンバーは皆名前を捨て、一文字から二文字の名が付けられている。この柊という女性は、元奴隷で主人からの性的な暴力に耐えかねて殺害し罪人となった。美貌の持ち主であり、闇夜団ではあんなに嫌だった性的なことを武器にして情報を集める諜報任務が主である。
柊「そうでしたね。今はアナタでしたわね」
許貢「うむ。お前の表の顔は、私の妻だからな」
柊「心得ております。ところで其方は?」
柊が許貢の背負う男に目をやる。
許貢「そうだった。鏑」
鏑と呼ばれた男が部屋から出てくる。
鏑「殿、お呼びでやすか。ややっ?これはかなりの大怪我とお見受けしやす。すぐに治療致しやしょう」
許貢「頼む」
鏑と呼ばれたこの男も闇夜団のメンバーだ。医術を志していたが家が貧しく、試験を上辺だけで落とされ、今でいうところの無免許医として、治療していたところを摘発され、お縄になりそうなところを逃げ出し許貢に拾われたのである。
鏑の治療でなんとか峠を越えたこの真っ黒な道士は、呉郡にて、張角たちに殺されたと思われていた于吉であった。
于吉「ううん、ここは何処じゃ?ワシは、うぐっ」
許貢「気付かれましたか?まだ安静にしていてくだされ。この呉郡の太守を務めることになりました許貢と申す」
于吉「お前がワシを助けたのか?やれやれ、人に助けられるとはこの于吉も落ちぶれたものよな」
許貢「見たところ、于吉殿も追われる身とお見受けする。こんなところで良ければ、傷が癒えるまで療養されるが良かろう」
于吉「ヒャーッハッハッハッ」
???「何がおかしいんでい。殿に礼を言えってんだ」
鏑「まぁ、無事ならそれで良かったじゃないでやすか。梟の旦那」
梟と呼ばれたこの男は、闇夜団を束ねるリーダーだ。元暗殺一族の出身だったが家族の裏切りに遭い、命尽きようとしていたところを許貢に救われた。それ以降、殿として、影で許貢を支えるため同じように助けられた者たちを束ねて闇夜団を結成したのだ。
于吉「すまんすまん。気に障ったのなら謝るわい。こんな怪しげな男を匿う男がいるもんなんだと思うてな(溜め込んだ呪術で若々しさを保っていたのが力が抜けて年老いてしまったわい。全く、張角の奴め。いつか、必ずその命を貰いに伺うとしようぞ)」
許貢「才能ある者なら罪人だろうと用いるそんな気概のある方が現れた時のために、こうして才能ある者たちを囲っているのですよ」
于吉「ヒャヒャヒャヒャ、全く面白い男じゃ。少し動くでないぞ(瞳術はまだかけれんか。溜め込んだ呪術が溢れだしてしもうたからのぅ。じゃがこれくらいならまだできよう。ほほぅ、この呉郡をどう治めようか悩んでおるのか。良い良い、こんなワシを抱え込む胆力に免じて助言してやるとしようぞ)」
許貢「もう、動いても宜しいか?」
于吉「すまんすまん。お前が何を悩んでいるのかを覗き込んでいたのでな」
許貢「!?(あんなに見つめてくるからこの男はそっち系なのかと思ったなどとは言えんな)」
于吉「ハッハッハッ。ワシだって女の方が好みじゃ」
許貢「!?(心を読まれた!?)」
于吉「そういうことじゃ。ワシに隠し事は通用せんぞ。呉郡の治め方じゃが、この言葉を言ってやれば良い。それで南の厳白虎も手を出さず協力するであろう」
許貢「!?。どうやら于吉殿の力は本物のようだ。して、その言葉とは?」
于吉「于吉様が蘇ったじゃ」
許貢「???」
于吉「ヒャッヒャッヒャッヒャ」
半信半疑ながらも許貢は呉郡の民衆の前でこの言葉を呟いた。すると民衆はまるで洗脳にでもかかったかのように許貢に拝礼し、呉郡は発展することとなった。その後、すぐ于吉は、呪術を貯めるため洞窟の奥深くに籠った。そして黄巾の乱より12年が経った。
于吉「ヒョッヒョッヒョヒョ。見た目も若々しく戻った。さて、張角よ。リベンジと行こうではないか。それにしても呉郡の様子がおかしい。許貢は何をしている?」
街に出た于吉は短刀をチラつかせながら男を付ける柊を見つける。柊がその男に斬りかかろうとしたところを抑えて、引き離す。
于吉「一体どうしたというんだ?」
柊「離せ離せと言っている。アイツが殿を主人を許さない。貴様には関係ない話だろう」
于吉「そうであったな。これでどうじゃ?」
柊「于吉!戻っていたのか?」
于吉「今しがたな。さっきの話の続きじゃが彼奴が許貢を殺したというんじゃな?」
柊「あぁ、紙一枚だ。紙一枚で斬首だ」
その紙を読む于吉。
于吉「なんと!そのようなことが。お前たちには世話になった恩がある。許貢に返せんかったがお前たちに返そう。彼奴を殺す手伝いをしてやろう」
柊「本当か?頼む」
于吉「うむ(小覇王孫策か。ヒョッヒョッヒョヒョ。張角の前の肩慣らしに良いであろう。見たところ耐性もなさそうじゃしな。復活したワシの呪術の最初の餌食にしてやるとしよう)」
呉郡にて厄介なことが起ころうとしていたのだった。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料
揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。
本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる