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3章 群雄割拠

閑話休題① 呂舞の過去(破)

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 ロリコン男こと誡拳の魔の手から辛くも逃げた呂舞は、誡拳が差し向けた追手から逃げ楼桑村に差し掛かるのだが、とうとう昼夜走り続けた馬が限界を迎え前足が折れ、投げ出されてしまう。呂舞の幼い身体が投げ出されて地面に激突することになれば、大怪我は免れない。呂舞は死を覚悟していた。
 呂舞「ヒッ、まだ追ってきてる。もう少し頑張ってお馬さん」
 馬「ヒヒーン(何で僕まで逃げるハメに?)」
 野盗のリーダー「クソ、あの駄馬がどこ行きやがった」
 野盗の一味A「お頭、そう遠くには行ってねぇはずだ近くの村を探そう」
 野盗の一味B「この近くの村だと楼桑村ってのがあるらしい」
 野盗の一味C「この周辺の地図を誡拳様からもらってて助かりやしたね」
 野盗の一味D「あんな子娘捕らえて、一生遊んで暮らせる金が手に入るってんだから笑いが止まらねぇぜ」
 野盗のリーダー「全くだ(同じ年頃の娘を持つ親としては申し訳ないが、これも仕事だ。割り切らせてもらう)」
 この野盗のリーダーの名を杜豈トガイという。娘の名前は杜美艶。娘に誇れる父となるべく、この仕事を最後に野盗から足を洗うつもりでいた。
 呂舞「良かった、何とか撒けた。お馬さん、ありがとう。ゆっくり休んで」
 馬「、、、。(もう疲れたよ)」
 馬の前足ががくりと折れ投げ出される呂舞。
 呂舞「えっ?(私、空を飛んでるって違う!お馬さんの脚が折れちゃったんだ。私のせいでごめんね。せっかくあの変態男から逃げたのに、これが私の最期なんて、ママ・パパ、私もそっちにいくね。兄さん、先に逝くことを許してください)」
 だがいつまで経っても、打ち付けられた衝撃は来ない、それどころか、まるでクッションに包まれているかのように受け止められていた。
 ???「君は、何処の子かな?」
 優しそうな笑みを浮かべる自分より少し年上の男性にドキドキする呂舞。
 呂舞「あのーそのーえーっと」
 ???「クスクスクス、無理に答えなくても良いんだよ」
 その男性は呂舞をゆっくりと地面に下ろすと馬の方に駆け寄って行く。
 ???「これは、完全に逝っちゃってるな。そんなになるまで、御主人様を守るために頑張ったんだな。もう大丈夫だからゆっくりお休み」
 馬「ヒン(あの男よりは百倍マシだったけど、どうして僕まで逃げるハメに?まぁ、良いか。あの娘を守れたなら良かったことにしよう。そうしよう)」
 呂舞「お馬さん、死んじゃった?」
 ???「前脚が完全に疲労で折れちゃってる感じかな。安静にしていれば、また走れるようになるとは思うけどどうだろう?」
 呂舞「良かったぁ。私のせいで死んじゃったらどうしようって。うっうっ」
 ???「もう大丈夫だから安心して」
 呂舞は、親の次に安心できる温もりを得る。
 呂舞「(あったかい。この人の心なのかな。すごく優しくて、安心する。何だか眠たくなっちゃった)ふわぁ」
 ???「安心して眠ると良いよ」
 呂舞を助けた優しい声色のこの男の姓を劉、名を丁、字を義賢という。楼桑村でその溢れ出るカリスマを持って若者たちをまとめ上げるガキ大将、劉備玄徳の実の弟としてこの世に生を受け、武力の兄を支えるため智を磨くためにこれより数年後に、水鏡先生として名を知られている司馬徽徳操シバキトクソウの門を叩くこととなる青年である。この時12歳であった。兄である劉備玄徳の編む筵を売った帰りであった。劉丁は、呂舞を背負い。空になった荷台に馬を寝かせると、筵を売る時に借りている牛の手綱を握り、楼桑村へと帰る。楼桑村の入り口では、兄である劉備が待ち構えていた。
 劉備「遅いぞ丁。心配したでは無いか」
 劉丁「兄上、筵を売った帰りに女の子を拾いまして」
 劉備「女の子を拾った!?女嫌いのお前が!」
 劉丁「兄上、僕は女嫌いではありませんよ。押しの強い娘が苦手なだけです」
 劉備「まぁ良い。ん?あれは何だ?丁、その女の子と馬を牛舎に隠せ」
 戦闘態勢になる劉備の言葉に察した劉丁は、牛舎に呂舞と馬を隠す。
 劉丁「皆んな、この娘たちを守ってね」
 牛「モゥ(劉丁の旦那の頼みなら何でも聞くぜ。また美味い餌頼むぜ)」
 劉丁「わかったわかった。御褒美は後であげるから」
 牛「モーーー(流石、劉丁の旦那)」
 外では、騒ぎを聞きつけた村の男たちが武器を取り、入り口を封鎖した。
 田豫「玄徳、無事か?」
 劉備「おぅ。国譲も来たか。どう見ても野盗なんだよなぁ」
 簡雍「まぁ玄徳の人を見る目は確かだからねぇ」
 劉備「憲和も来たか。身なりはまともに見えんだけどよ。明らかに怪しいんだよなぁ」
 田豫「どっちにしても見知らぬ者を村に行けるわけにはいかないだろう」
 劉備「そうだな。要件次第で排除するか」
 野盗のリーダーが一歩前に出る。
 野盗のリーダー「俺の名は杜豈。見ての通り、誡拳様に仕えている兵士だ。御屋敷から使用人の娘が馬を奪って遠くに遊びにきてしまってな。帰りが遅いから探しにいくように頼まれたのだ。それで近辺の村々に聞き込みをしている。これぐらいの女の子なのだが見ていないか?」
 劉備「(丁が連れてきてたのって、ちょうどあのぐらいだったよな?それに誡拳?豪商として知られているが幼児趣味の変態だって噂も聞くなぁ。あの娘が本当に嫌で逃げてきたとするなら渡すのはダメだな)悪りぃ、そういうことなら役に立てそうにねぇ」
 杜豈「そうか、時間を取らせてすまなかったな。次に行くぞ。お前たち」
 野盗の一味A「お前、さっき何を考えていた?」
 劉備「ん?どういうことかな?」
 野盗の一味B「考えるってことは、何か覚えがあるってことだよなぁ」
 野盗の一味C「隠し立てするなよ。我らが主人はこの一帯に影響力を持つ誡拳様なのだからな」
 劉備「チッ騙されてはくれねぇか。じゃあ、聞かせてもらうが誡拳には幼児を痛ぶるって趣味があるって聞くんだがよ。あの娘の傷はそれが原因か?」
 野盗の一味D「やっぱり隠してやがるんだな。やっちまうぞ」
 劉丁「刀を抜いたってことは覚悟できてるんですよね?」
 野盗の一味D「いつの間に後ろに!うぐっ。ガハッ」
 劉備「話を聞かなかったのはそっちだ。覚悟しろよ」
 田豫「やれやれ、やっぱりこうなったか」
 簡雍「国譲、これが玄徳の平常運転さ」
 野盗の一味を壊滅させ、リーダーの杜豈だけにする。
 杜豈「待て!誡拳は、小さい女の子に暴力を振るうのか?」
 劉備「お前ら誡拳に仕えているんじゃねぇの?」
 杜豈「違う、俺たちは逃げた女を捕まえてくるように依頼を受けた盗賊だ」
 劉備「どっちにしろ悪人じゃねぇか!」
 杜豈「確かにそうだな。だが、俺も娘を持つ親だ。殺されるわけにはいかない。それにその話が本当ならば、俺の娘も危険かもしれない。誡拳には、娘は見つからなかったと報告する。このまま、俺が帰らなければそれこそ誡拳は兵を率いこの村を滅ぼしにくるぞ」
 劉備「確かにお前は、他の賊どもと毛色が違う。良いだろう。お前の話を信じてやる」
 杜豈「すまない。恩に切る」
 杜豈が去っていく。
 劉丁「兄上、宜しかったのですか?」
 劉備「あぁ、あいつのあの目は、一介の賊の目では無かった。娘を思う父の顔だ。目が覚めたって事だろ。任せておけば良い」
 田豫「玄徳の人を見る目は確かだからな」
 簡雍「そういうことさ」
 劉丁「わかりました。僕は、あの娘の様子を見ておきます」
 野盗の一味から呂舞を守ることに成功した。当の本人は、そんなことも知らず牛草の上でスヤスヤと眠っていた。
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