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3章 群雄割拠

袁胤の狂気

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 蘆江城を攻め寄せる趙雲・黄忠の背筋に冷たいものが走る。その正体は、城内へと踏み込んだ時に理解する。おびただしい数の死体。首を噛み切られ、血を吸い尽くされている男。首を掴まれ、今まさに血を吸われようとしている男。
 趙雲「うっ。この鼻を突く異臭は。ゲホッゲホッ」
 黄忠「これが人のすることか。こやつらが何をしたと言うんじゃ。ゲホッゲホッ」
 陸儁「劉備軍の者たちか。悪いことは言わぬ。すぐに立ち去るのだ。この男は、化け物だ。うぐっ」
 袁胤「煩い羽虫じゃ。お前は血だけよこして居れば良い」
 趙雲「お前がこんなことをした元凶か。趙子龍の槍を受けよ」
 黄忠「援護するぞい趙雲」
 黄忠の弓も趙雲の槍も交わす。
 袁胤「どうした?猛将揃いの劉備軍も所詮この程度か。お前たちの血もワシの糧にしてやろう」
 2人に迫り来る袁胤の前に最強の男が立ち塞がる。
 趙雲「呂布殿!?」
 黄忠「呂布殿といえど下がるのじゃ」
 呂布「お前たち、しっかりと見るのだ。こやつは、ただの人だ。人ならざるものと捉えるな。本質を見失うから囚われるのだ」
 袁胤「ワシを見て、畏れぬとはなぁ。ヒヒャヒャヒャヒャ」
 呂布「お前は人の道理から外れた。覚悟はできておるのだろうな」
 袁胤「朕は帝ぞ。崇めよ。奉れ下民ども」
 呂布「言いたいことはそれだけか?」
 袁胤「ヒッヒッヒ。勘違いしておるのではないか呂布よ。お前がワシを畏れないのであれば、お前に馴染みのあるものを畏れさせれば良いだけじゃ。例えば、今手柄をあげたくて、入ってきたお前の娘とかなぁ」
 呂布「なんだと!?呂姫、逃げよ」
 呂姫「へっ?父上。ぐっ」
 袁胤が凄まじい速さで走り出し入り口にいる呂姫を捕える。
 袁胤「ほらほら、捕らえたぞ。お前の娘をなぁ。どうしてやろうか。そこの屍と同じようにしてやろうか?もうわかるよなぁ」
 呂布「ぐっ。すまぬ趙雲殿・黄忠殿、覚悟してくだされ。娘のために」
 趙雲「呂布殿!」
 黄忠「趙雲、時を稼ぐぞい」
 趙雲「了解した」
 娘を助けたいため趙雲と黄忠に刃を向ける呂布。だが袁胤は後ろから迫り来る男に気付かなかった。その男は、袁胤から呂姫を取り返し抱き寄せるとそのまま袁胤を斬った。
 袁胤「ぎいゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。貴様ー何をするのじゃ。朕は帝であるぞ」
 義賢「煩い。このクズが。呂姫を人質にとって、呂布殿を従わせて満足か。この外道。俺がお前が愛する袁術と同じ地獄へ送ってやるよ」
 袁胤「朕が朕こそが仲国の初代皇帝、袁公路であるぞ」
 義賢「違う。お前は、袁術を騙る袁仲績だーーーーー」
 袁胤「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。馬鹿なこんなことがこんな小僧に、我が野望が。もう一度、帝として立つ、我が野望がぁぁぁぁぁぁ」
 袁胤が事切れるとようやく胸に抱いていた呂姫の安否を気にする義賢。
 義賢「呂姫、無事か」
 呂姫「怖かったこわかったよぉぉぉぉぉ」
 義賢「安心せよ。もう大丈夫だ。暫く胸を貸してやる」
 呂布「劉丁殿。娘を助けてくださり感謝する」
 義賢「そもそも、戦場に帯同することを良しとしない呂布殿に俺が面倒を見るからと言っておきながら危ないことになった。全ての責任は、俺にあろう」
 呂布「やっぱり、呂姫には、まだ早かったのだ」
 義賢「そんなことはない。呂布殿には黙っていましたが孫策本陣への朝駆けが成功したのは、呂姫殿の尽力あっての事です。此度は、功を焦ったがゆえの失態。こうして無事だったのです。次回に期待しましょう」
 呂姫「ひぐっひぐっ。わたし、つぎも、せんじょうにでたい」
 義賢「ホラホラ、泣いてたら可愛い顔が台無しだよ。わかったから大丈夫。君のお父さんには、僕が怒られといてあげるから」
 呂姫「そんな。わたしも一緒に」
 呂布「ハッハッハ。では、娘の心を奪った罪も合わせて、劉丁殿に精算してもらうとしますかな」
 義賢「へっ?」
 呂姫「!」
 呂布「それにしても、袁胤はどうしてこのようなことをしたのでしょうな?」
 趙雲「まるで人ではないものがそこにいた」
 黄忠「畏れを抱いたのは初めてじゃ」
 義賢「袁術を信奉するあまり、その人になりたいと身体の一部を自分に移植し、それがまるで生きている幻覚に囚われ、生かすために血を欲したってところでしょうか?」
 趙雲「それにしても劉丁様が全く畏れず。容赦なく叩き斬る姿には、尊敬いたした」
 黄忠「それに引き換え、ワシらは、全く不甲斐ないところをお見せ致したぞい」
 義賢「いえいえ、俺には、偶々そういったものに耐性があったというか。助けるために無我夢中だったというか」
 呂布「外道畜生に堕ちる者をたくさん見てきたつもりだったが、ここまで醜悪とはな」
 王允「それにしても、先ずは、勝利を喜びましょうぞ」
 義賢「皆のお陰です」
 徐晃「失礼します。陸績と申すものが子供達や民と共に降伏してきました」
 義賢「陸績?」
 徐晃「はい。どうやら、蘆江にて軍師を務めていた陸康の息子だそうで。張遼殿と甘寧殿が監視しております」
 義賢「わかりました(陸康?陸績?陸ってことは。まさか!かの有名なアイツの縁者ってことは無いよね)」
 陸績の居るところに向かう義賢。
 陸績「民たちの安全を保証してくださるのでしたらこの首がどうなろうと構いませぬ」
 張遼「我々に言われてもな」
 甘寧「ちょっと待ってくれ。もう来ると思うからよ」
 義賢「お待たせいたしました」
 甘寧「待ってたぜ。コイツ、ずっと自己犠牲のように自分の身はどうなってもいいから民と子供たちの安全を保障してほしいって、言いやがるんだ」
 義賢「落ち着いてください陸績殿」
 陸績「父や兄が。袁胤にうっ」
 義賢「陸績殿、蘆江は取り戻しました」
 陸績「なっなんと!あの化け物を倒したとそう言われるのですか?」
 義賢「えぇ、だから安心してください」
 陸績「良かった。これで父や兄を弔ってやれます」
 義賢「えぇ、蘆江へと戻りましょう」
 民女「私たち本当に蘆江に帰れるの?」
 民男「あの化け物を殺してくださったのか。英雄じゃ英雄じゃ」
 こうして皆と共に蘆江に入り、戦後処理を行う義賢であった。
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