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3章 群雄割拠

馬騰による涼州制覇(前編)

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 間も無く曹操の治める兗州にて内乱が起こると馬騰も事を起こす。
 馬騰「やはり変事があったようだな。姜冏よ。策は万全であるな」
 姜冏「はっ。金城に向けて、異民族連合に攻撃を依頼しました。我らが首都天水からは、馬超様が兵を率いて武威に進軍を開始。安定の太守を務めている龐徳様が北地に向け進軍を開始」
 馬騰「さてさて、韓遂はどう動くであろうな」
 傅幹「まさか、姜冏殿と共に曹操を出し抜くとは!」
 馬騰「傅幹よ。お前の言葉があったからこそだ。さて、涼州を頂くとしよう」
 傅幹「殿の器を見誤っていたようで、恥いるばかりです」
 馬騰「良い良い、気にするな」
 この進軍の速さに韓遂は、後手とならざるおえず。兵も分散して対応しないといけない分、集結に時間を要すこととなる。
 韓遂「馬鹿な!馬騰め。和睦を反故にして攻めるなどそのようなそぶり楊秋から聞いていないぞ。一体どうなっているのだ」
 鍾繇「(私も韋康殿から何も聞いていない。まさか、悟らさずに事を起こしたというのか?それが真なら、並大抵の策士ではない。有能な策士がいるのか馬騰の元に。至急長安へと戻り曹丕様に報告せねば)曹操様に援軍を頼んでみましょう」
 韓遂「それは助かる。よろしく頼む」
 閻行「とにかく梁興・張横・程銀に迎撃を命じて、時を稼ぐしかありませんぞ」
 韓遂「うむ、梁興を金城に。張横を武威に。程銀を北地に向かわせ迎撃を命じるのだ」
 成公英「はっ」
 いかに涼州軍閥を率いていようとも後手に回ってしまえば集まりは、悪かった。どうして、楊秋の娘や韋康からの情報が流れてこなかったのか?それは、事を起こす数日前に戻る。
 馬超「韋康よ。俺は、天子を意のままに操る曹操を許せぬ」
 韋康「そのような事を曹操軍からの人質である私に話して良いのですか?」
 馬超「ハハハ、そうであったな。俺はな。お前にも協力してもらいたいと思っている。天子様を救う道は果てなき道となろう。お前ほどの才覚を持つものに助けてもらいたいと思うのは、いけないことか?」
 韋康「私に才覚などありません凡庸な父から生まれた凡庸な男です」
 馬超「そう謙遜することもあるまい。それに、この涼州の地に曹操が援軍を派遣できるわけがない」
 韋康「何故、断言できるのです?」
 馬超「劉備殿が意味もなく曹操殿と和睦をするはずがない。とすると、曹操側に何かあったと考えるべきだ。例えば、御膝元の兗州にて反乱があったとかな」
 韋康「!?」
 馬超「そのような顔をしてはならんぞ。そうですと言っているようなものだ。何があろうと動じないようにしないとな」
 韋康「ハハハ。ハハハ。全く、馬超様は、お人が悪い。曹操様と戦う。成程、そのためには涼州1つは制さないと相手にもなりませんね。ですが一つわかったことがあります。馬超殿は、劉備殿と共に歩むと決めていられるのですね」
 馬超「なっ何をいうのだ。俺は馬族の長の子だぞ。父上あってのことだ」
 韋康「今は、そういうことにしておきましょう。14歳の俺なんかに礼節を持って尽くしてくださった馬超様に進言できることがあるとするのならすぐ行動に移すべきかと。韓遂に時間をかければかけるだけ涼州の民心を得るのに時がかかりましょう。早急に涼州を制し、民心を高め曹操と事をあたる準備をしなければ涼州は食われることとなりましょう」
 馬超「韋康よ。やはり兗州にて何かあったのだな。良し、共に険しき道を歩んでくれるか?」
 韋康「俺のようなものでどこまでお役に立てるかわかりませんが協力致しましょう」
 そして、出陣を決めた夜。馬超は、婚姻して初めて楊笙鈴を呼んだのだ。
 馬超「そんなところでどうした?こっちにくるといい」
 楊笙鈴「あの、婚姻して今まで一度も呼ばれなかったので、そのどうして良いか」
 馬超「生娘であったか!」
 楊笙鈴「はぃ(これは心を許したってことよね。短刀で胸を一突き。私ならできる)」
 馬超の隣に行き、懐から短刀を取り出そうとする。
 馬超「父の道具となり、俺のようなものに嫁ぐことになり、申し訳ない。俺は、王異を愛している。だが、お前にそのことで寂しい思いをさせていたのだろう。俺は、お前とも政略結婚などではなく愛し合いたいと思っている。変か?」
 楊笙鈴「(堂々と王異という別の女性を愛しているという素直な男だがそのことよりも私のことを気にかけてくれていたことが嬉しい。それに政略結婚ではなく愛し合いたいとそう思ってくれていることに。あれっ。これなんだろう。目からポロポロ。何かが。殺せない。こんなに素直に自分の想いを語る人を殺すなんて。私にはできない)」
 馬超「どうしたのだ。緊張しているのか。ほら。ってえっ?泣いているのか?そんなに嫌だったか?すっすまない。どうしたら泣き止むのだ」
 楊笙鈴「嫌ではないのです。寧ろ、馬超様の真剣な想いを聞き、嬉しくて、その」
 馬超「嫌ではないのだな。良かった。そうか辛かったのだな(こんなに震えているでは無いか。王異から楊笙鈴が俺の命を狙っている可能性があると聞いた。このような華奢な身体で、任務を全うしようとしていたのか。義父といえど許せぬ。娘を道具として利用するなど)」
 楊笙鈴「あの、その落ち着いたので、その抱いてくださいますか?」
 馬超「良いのか?」
 楊笙鈴「はい。今は、政略結婚とかどうでも良いぐらい馬超様に深く愛されたいのです」
 馬超「結構大胆なんだな」
 楊笙鈴「好きな相手にはね」
 事が終わった後、馬超と楊笙鈴は、今後のことで会話を交わす。
 馬超「俺は、お前の父を殺すかもしれん」
 楊笙鈴「父は、馬超様の命を取るように私に命令しました」
 馬超「!?どうして、やらなかった。今なら俺の命を確実に取れていたのに」
 楊笙鈴「確かに、ここにくるまでの私は、それが任務だ仕方がないと思っていました。ですが、馬超様の想いに触れて、私は父よりも貴方を選んでしまった。貴方を失いたくないとそう思ってしまった。父は、許されぬ事をしようとしました。馬超様のお好きになさってください」
 馬超「そうか。すまない。覚悟を決めてくれたお前に報いる事があるとするのなら。お前の父は、確かに許されぬ事をしようとした。だが、それはお前とは全く関係ない。もう笙鈴は、俺にとって、大事な存在だ。王異が嫉妬してしまうな」
 楊笙鈴「私も王異様に嫉妬しています。馬超様と先に巡り会ったのが私なら他の女なんて寄せ付けなかったのに」
 馬超「結構、恐ろしい事を言うのだな?」
 楊笙鈴「当然でしょう。でもそうですね。王異様と等しく愛してくださるのならそれで手を打ちましょう」
 馬超「わかったわかった」
 こうして、馬超は後顧の憂いを断ち進軍を開始したのである。
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