えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

３章 群雄割拠

馬騰vs韓遂(序)

　両軍が国境付近にて一大決戦に及ぶ。韓遂軍の兵力は、馬騰軍の3倍であった。涼州の豪族のほとんどが相手に付いた差である。そして、韓遂軍の先鋒を任されたのは、八部衆である。対する馬騰軍の先鋒を任されたのは、馬超であった。
　馬騰「韓遂、お前との義兄弟の縁もここまでじゃ。曹操なんぞになびきおって、恥を知れ」
　韓遂「馬騰、貴様こそ、劉備のような逆賊について、恥ずかしくは無いのか。曹操殿こそ正義ぞ」
　馬騰「言葉で語るだけ無駄であるな。孟起よ。軽く揉んでやれ」
　馬超「はっ父上」
　韓遂「いきなり切り札の息子投入とは、この兵力を見て、馬騰のやつは、相当焦っていると見える。広くゆる～く展開し、馬超を誘い込め」
　馬超「休・鉄・雲緑、無理はするな。尹奉・楊阜・趙昂・王異、お前たちもな。先ずは、この俺を見ていろ。馬岱行くぞ」
　馬岱「若ってば。あんま無茶しないでよ。ケツ拭くのは俺の仕事なんだからさ」
　馬超「あぁ、後は任せた」
　王異「あの大軍に正面から突っ込む気。正気なの？」
　そんな言葉など聞こえていない馬超は、突撃した。
　馬玩「馬鹿め。罠とも知らずに突撃してくるとは、うまく絡めとり仕留めてしまえ」
　成宜「おぅよ」
　李堪「あぁ」
　しかし、馬超は包囲の中を縦横無尽に駆け抜け、3人の首を取ったのである。
　馬超「この程度でこの馬孟起を止められると。舐められたものだな。馬岱、左右の兵を切り離し、敵の横っ腹を突け」
　馬岱「あいよ。若も無理しちゃダメだからね」
　馬超「あぁ」
　そして1人、中に突撃して、将を討ち取っていく。
　馬玩「ガハハ。この馬玩が相手となってやろう」
　馬超「この馬孟起の槍を受けてみよ。他愛もない。同じ馬性のものを斬ることになろうとはな」
　馬玩「(涼州豪族のこの俺が一撃だと)ガハッ」
　馬超「敵将、馬玩。馬孟起が討ち取った」
　馬超は、すぐに移動し、包囲してくる兵を振り払う。
　成宜「馬鹿なこの包囲網をもろともしないだと！もっと包囲を狭めよ。馬超を討つのだ」
　馬超「どこ見てんだ。俺は、ここだ」
　成宜「ヒィー、この成宜が相手をしてやる」
　馬超「そんな腰の引けてるやつに俺は討ち取れねぇよ」
　成宜「(流石は、異民族にも恐れられる錦馬超か)グフッ」
　馬超「敵将、成宜。馬孟起が討ち取った」
　指揮してる将を2人も失い、足並みが乱れたところに馬岱の的確な突撃が突き刺さる。3倍の兵力差をものともしない馬超の活躍に馬騰軍の面々は、大いに沸いていた。
　尹奉「お役に立つなど大口を叩いた自分が恥ずかしい」
　楊阜「初陣でビビってた自分が馬鹿みたいだ」
　趙昂「まさに鬼神の如き御活躍ですね」
　王異「凄い。あの狭められた包囲網をもろともせずに指揮官を2人も討ち取るなんて、こうしていられない。全軍、足並みの乱れたところに追撃を仕掛けましょう」
　馬雲緑「あら、気が合うわね。私も同じことを考えていたわ」
　馬鉄「そうなのかい雲緑？」
　馬雲緑「えぇ、この機会を活かすのよ。ここに今馬超兄様はいないのだから馬休兄が号令をかけるのよ」
　馬休「わかったよ。全軍、足並みの乱れたところに向かって突撃。韓遂軍を討ち取るのだ」
　兵士「オオオオオオ」
　勇気付けられた馬超隊の面々が突撃をしてくる間に馬超は、残りの将の元へと向かう。
　李堪「クソ、まさかここまで馬超が精強だとは。流石、呂布と一騎討ちをした武勇と言える」
　馬超「お褒めの言葉をありがとよ」
　李堪「もうここまできたのか？(閻行殿の準備は整ったであろうか。我らの死を無駄にしないでくださいよ)この、李堪が相手をしよう」
　馬超「なんだなんだ。どうした。涼州軍閥とは、この程度か」
　李堪「(馬鹿な！こんなにも差があるというのか。ちょっとなんてもんじゃない圧倒的な差だ。閻行殿は、勝てると言っていたが本気であろうか)ゴフッ」
　馬超「敵将、李堪。馬孟起が討ち取った」
　そこにちょうど馬超隊の面々が合流した。
　王異「馬超様、御無事ですか？」
　尹奉「これが戦場なのですな」
　楊阜「怖くなんかねぇ怖くなんかねぇ」
　趙昂「2人とも落ち着くのです」
　恐らく馬超に向けられて投げられた矛が王異へと当たりそうになる。庇ったのは、馬超であった。
　馬超「うぐっ」
　王異「馬超様？どうして私なんかを庇って、これでは足手纏いじゃない。いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
　馬超「馬鹿者、勝手に殺すな。矛が少し刺さって折れただけではないか。趙昂、王異と皆を連れ、撤退せよ。矛を投げた男は、強敵だ」
　趙昂「しかし、馬超様は？」
　馬超「なーに、かすり傷程度だ。こうやって戦うさ」
　そう言うと馬超は心配させないように笑顔を浮かべ矛の刺さった部分を布で巻きつけ、止血する。
　閻行「流石、錦馬超と異民族から称される猛者ですな」
　馬超「矛を投げたのは、お前か？」
　閻行「えぇ、閻行と申します。貴方を失えば馬騰軍など烏合の衆ですからな」
　馬超「言ってくれる。ならこの怪我を押してでもお前と戦わねばな」
　閻行「すぐに楽にして差し上げますよ」
　閻行は、折れた矛の鋭い部分を馬超の首へと突き刺そうとする。
　馬超「成程、折れた武器でも使いようだな」
　閻行「えぇ、終わりです」
　馬超「全く舐められたものだな」
　馬超は、折れた矛を弾き飛ばすと馬に飛び乗り、その場は、撤退した。
　馬超「里飛沙、来い」
　里飛沙「ヒヒーン(ご主人様ったら珍しく凄い怪我ね。仕方ない。揺らさないようにゆっくりと撤退してあげるわね)」
　閻行「待て、錦馬超ともあろう者が逃げるのか？」
　馬超「逃げる？違うな。一旦勝負を預けるのだ。では、また会おう閻行よ」
　こうして、馬騰軍によるファーストアタックは、敵将3人を討ち取り、韓遂軍の兵力を大きく減らすことに成功する。しかし、受けた代償も大きく馬超の怪我は、思った以上に深かったのである。
　馬騰「孟起、無事か？」
　馬超「父上、この通り。うぐっ」
　牝冥「無理しちゃダメよ超」
　馬超「母上、申し訳ありません。少し休ませてもらいます」
　牝冥「えぇ」
　王異「私のせいで馬超様が」
　牝冥「そんなに気にすることないわよ。男の子ならあれぐらいの怪我なんて勲章よ」
　王異は、責任を感じ、馬超の陣幕で寝ずに看病していた。それは、甲斐甲斐しく、外傷により熱が出ている馬超に濡らした布を額に当て、血が滲んで汚れた布を新しい布へと変え、馬超の回復を一身に願う。そんな王異の献身的な看病もあり、馬超は、1ヶ月ほどで、回復していた。そして、戦況は、羌族と氐族の異民族連合の援軍もあり、一進一退の攻防となっていた。
　馬超「うーん、ここは、陣幕。一体何時間寝ていたのだ」
　王異「馬超様、早く元気になってください」
　馬超「まさか、ずっと看病をしていたのか？全く、誰にも渡したくなくなるではないか。だが、俺は馬族の時期頭領。政略結婚となるだろう。すまないな」
　王異「誰にも渡したくないってどういうこと？」
　馬超「聞いていたのか？そのままの意味だが」
　王異「私は、あなたの側に居られるのなら」
　馬超「お前のその感情は、共に死地に遭遇したことによるものだ」
　王異「そんなことない。貴方を一眼見た時から何処か惹かれてた」
　馬超「それも一目惚れという一時的な感情だ」
　王異「それでも、私が馬超様を好きなことに変わりない」
　馬超「その気持ちがこの戦が終わっても変わっていなければ、俺も考えるとしよう。だが、俺は馬族の男だ。恐らく政略結婚もすることになるだろう」
　王異「それでも、私が馬超様を好きなことに変わりはないから」
　馬超「そうか。では、韓遂をとっとと、この涼州から追い出すとしよう」
　王異「えぇ、誠心誠意お支え致します馬超様」
　復帰した馬超による猛攻が始まろうとしていた。