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3章 群雄割拠

易京籠城戦(前編)

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 公孫瓚が厳綱の死を知ったのは、易京に無事に辿り着いた後であった。
 公孫瓚「あの馬鹿者めが。ワシのミスのために、命を落とすなど」
 単経「殿、今は嘆き悲しんでいる場合ではありませぬ」
 田楷「厳綱殿の死に報いるためにも必ずや立て直し、袁紹を倒さなければ」
 公孫瓚「あぁ、そうだな」
 ???「おぅ義兄弟、しけたツラしてんなぁ」
 ???「せっかく、大金を持ってやって来たのですがね」
 ???「装備は足りてるか?」
 公孫瓚「劉緯台リュウイダイ李移子リイシ楽何当ガクカトウではないか」
 この3人は、凡庸であることを気に入られ、公孫瓚と義兄弟の契りを結んだ。占い師の劉緯台。絹商人の李移子。豪商の楽何当。3人とも公孫瓚のおかげで巨万の富を築いた。この3人がその資金の全てを使い易京に物資を蓄えてくれたのだ。
 劉緯台「占ってみたが。南より早馬ありと出たもんだ」
 李移子「義兄弟を慕ってる民にも装備を行き渡らせた。暫くは持つだろう」
 楽何当「大金で兵糧を蓄えておいた。この易京が落とせるものか」
 袁紹「感謝する。それにしても南から早馬とは、援軍ということだな。ワシは、多くを遠ざけすぎた。誰が援軍など送ろうと考えるというのか」
 公孫瓚の援軍に向かっていた劉義賢軍。
 義賢「烏桓の皆さんの説得の間に界橋にて、公孫瓚が敗北したと聞いた時は、終わったと思いましたが。まだなんとか易京で耐えてるみたいで良かった」
 太史慈「ですが、こちらも鮮于輔殿を烏桓の元に置いて来たのだ。少数でなんとかできようか?」
 田豫「しなければ終わるだけだ。太史慈殿、期待してるぜ」
 太史慈「うむ。善処しよう」
 鮮于輔は、烏桓の説得のため烏桓の元に残っていた。
 鮮于輔「お前たちの怒りは最もだ。俺だって、公孫瓚の救援なんて、死んでもごめんだ。だが、今は耐えてくれぬか」
 蹋頓「ふざけんな。公孫瓚と和解しろだ。そんなことすれば死んだ同胞たちに顔向けできねぇ」
 田籌「それでは、我が殿を助けると思って、せめて、中立として、どちらにも手を出さないではいただけませぬか」
 難楼「確かに我々烏桓は、劉備様に臣従すると決めた。だが仇を前にこれは、あんまりではないか」
 蘇僕延「今こそ仇を討つ最大の好機なのだ」
 鳥延「我々は袁紹とも同盟を結んでいる。ここで動かねば袁紹にどう思われるか」
 速附丸「断固として、公孫瓚を討つべきだ」
 丘力居「ふむぅ」
 楼班「父上~。我々をずっと助けてくださったたのは誰ですか?」
 丘力居「!?そうであったな。楼班よ。大切なことを思い出させてくれた。感謝する。皆、俺は決めたぞ。今こそ劉虞様の恩に報いる時。我々は中立として、手を出さない。これで良いか鮮于輔?」
 鮮于輔「決心してくださり感謝致す。これで殿も」
 丘力居「その殿は、今は劉備様のことだな」
 鮮于輔「あぁ」
 丘力居「1つ義賢殿に伝えてくれぬか?良い薬だった。体調が良くなった感謝するとな。麗しき女だったと。ハッハッハ」
 鮮于輔「!?必ず義賢殿に伝えよう」
 袁紹は、同盟を結んだはずの烏桓族から此度は参戦できぬという書簡が届き、床に叩きつけた。
 袁紹「蛮族どもが。怖気付くとはな。相当公孫瓚が怖いようだ。公孫瓚を滅ぼした後、誰が恐ろしいか教えてやらねばならんな」
 審配「短期決戦するべきです」
 郭図「審配殿に賛成だ」
 逢紀「界橋でも被害を出したのです。このままゆるりと包囲していれば易京はそのうち落ちるでしょう。悪戯に兵を減らすべきではないと申しているのです」
 辛評「なら兵糧は悪戯に消費しても良いとそういう考えなのですな逢紀殿は」
 逢紀「そのようなことを申しておるのではない」
 ???「荀彧殿はどうお考えですか?」
 荀彧「王脩オウシュウ殿、そうですね。易京城を見たところ、力攻めでは落ちないでしょう。短期決戦だと言っていますが力攻めならこちらが負けます。ここは奇策を用いるべきかと」
 ???「奇策とは面白いことを言いますなぁ」
 荀彧「えぇ、崔琰サイエン殿。坑道を掘り土竜攻めにて、落とすべきかと。そのため、攻め寄せる兵は全て陽動。本命はこの坑道を掘り進めること」
 ???「坑道を掘るとなると大変ですなぁ。兵の被害も兵糧の手配だけでなく坑夫の手配まで、資金がかさみますぞ」
 ???「許攸キョユウ殿の申す通り、抑えられるところは抑えてもらいませんと」
 荀彧「許攸殿・陳琳チンリン殿の申すことも確か。ですが、力攻めであれば兵の被害が甚大・持久戦であれば兵糧が心配と申すのであれば、1番容易く城を落とせる手だと考えます」
 袁紹「ここまで荀彧がやる気なのだ。任せるとしようではないか」
 荀彧「では、作戦に移ります」
 荀彧が陣幕を後にする。
 袁紹「フン。今まで、こちらから何度頼んでも進言すらしなかった男が。ムカつくわ」
 逢紀「作戦が失敗したら全責任を押し付ければ良いでしょう」
 袁紹「そうだな」
 荀彧は、兄である荀諶と甥である荀攸ジュンユウを呼び出した。
 荀彧「やはり袁紹は王の器ではない。この戦が終われば、私は曹操殿の元に向かおうと思う」
 荀攸「叔父上、やっと決心なさったのですな」
 荀諶「彧よ。ワシは大恩ある袁紹様を裏切ることはできぬ。だがお前たちを止めることもせん。せめて息災でな」
 荀彧「兄上が共に来てくれないのは残念ですが、仕方ありませんね」
 荀攸「曹操殿を選んだのは、献帝を抑えているからですか?」
 荀彧「それもあるが、中原で力を付けているということが大きい。天下を治めるなら中原の制覇が大事です。それに最も近い曹操殿を選んだ」
 荀攸「叔父上の天下を早く安寧にしたいという気持ちの現れですな」
 荀諶「私はてっきり娘のいる劉備殿を選ぶのかと思ったが」
 荀彧「それも考えました。ですが、劉備が兄弟子と慕う公孫瓚の窮地に対して、見殺しにするような男。所詮口先だけ仁君を名乗る御方だったのでしょう。いずれ、時を見て、娘夫婦も曹操軍へと招き入れる予定です」
 荀諶「そうか」
 荀彧による袁紹軍での最後の仕事、易京の戦いが幕を開けようとしていた。
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