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3章 群雄割拠

河北争乱(後編)

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 公孫瓚と雌雄を決するため邪魔な張燕の討伐に袁紹は客将の天下無双の最強の武を持つ男に任せ、自身は、公孫瓚と来るべく戦のため準備を進めていた。
 袁紹「さて、呂布よ。義父殺しとして、行き場のない貴様を迎え入れてやった恩を返してもらうとするか。張燕を討伐せよ」
 呂布「了解した」
 呂奉先、天下最強の武を持つこの男は、最初の義父である丁原を殺し、董卓に仕え、董卓を義父と仰いだが、その董卓も殺した。これは、各地に知られている話だが、真実は違う。丁原は病で亡くなり、その首を董卓と入れ替わっていた霊帝に渡し、配下となり、その霊帝を董卓として死なせることで、解放した。これを知っているのは、劉備軍のみであった。だから袁紹からの扱いは最低で、捨て駒のように張燕討伐に用いられることになる。それにも関わらず、呂布は迎え入れてくれた袁紹に恩を返すため出陣する。
 袁紹「郭図カクトよ。呂布が張燕を討伐したら用済みだ。他の諸侯に用いられても厄介だ殺せ」
 郭図「かしこまりました。酒の席に呼び、油断したところを暗殺しましょう」
 袁紹「孟徳の奴は、兗州を手に入れ、献帝まで手中にした。河北を手に入れた後は、曹操だ。袁術のやつにはそれまで、せいぜい踊ってもらわねばな」
 逢紀「孫堅には感謝しませんといけませんなぁ」
 審配「玉璽という餌を袁術に渡してくれたのですからな」
 袁紹「ククク。全ては我が掌の上よ」
 長安の討伐に向かう呂布軍の陣営に見慣れぬ男が居た。名を陳宮公台という。曹操が董卓の暗殺に失敗し、洛陽から逃げるときに手を貸した縁で曹操に仕えたが徐州での虐殺に耐えきれず出奔。曹操を倒せるものは、同じく天下に並び立つものと考え、悪名高い呂布を選んだ。
 呂布「(袁紹も俺を捨て駒としか考えていない。ここらが潮時だな)陳宮よ。この戦が終わったらお前の提案を受けよう」
 陳宮「決心してくださり感謝しますぞ」
 ???「やっと殿が立たれるのですなぁ」
 ???「義兄上、やっとですな」
 ???「腕がなりますなぁ」
 呂布「侯成コウセイ魏続ギゾク宗憲ソウケン、丁原様の頃から士卒として、苦労をかけたな。張燕討伐でも武働を期待している」
 侯成・魏続・宗憲「お任せください」
 ???「あまり気張って、空回りしないことを祈るわ」
 魏続「魏寧ギネイ、分かっている。お前を呂布様に嫁がせて良かった」
 魏続は、呂布の第二夫人として、自分の妹を嫁がせ、猛将である弟の魏越ギエツと共に呂布に一族として信頼されていた。そんな魏続の親友が侯成と宗憲である。
 呂布「寧よ。本当に俺の側で戦うつもりか?」
 魏寧「あら、厳様からも奉先様のことを頼むわねって、言われたもの」
 魏越「義兄上、安心してくだされ。寧も武芸に秀でていますから。遅れを取ることはありますまい」
 呂布「まぁ、お前たちの妹だものな。分かった」
 ???「殿~待ってください。我をお忘れか」
 呂布「成廉セイレン、忘れるわけなかろう。此度も魏越と共に先陣を任せるぞ」
 成廉「お任せください」
 呂布は、最も信頼している張遼と高順を非戦闘員であるものたちの護衛に残し、楊奉・韓暹・徐晃・侯成・宗憲・魏続・魏越・魏寧・成廉・陳宮を伴い、張燕の討伐に向かった。
 張燕「袁紹め。呂布を使い俺の討伐に本腰入れるとはな。まぁ良いだろう。迎え撃つぞ」
 張燕は、黒山賊という大山賊の頭領で、于毒ウドク孫軽ソンケイ王当オウトウ杜長トチョウ眭固スイコ白繞ハクジョウという指揮官と100万を超える山賊を従えていた。呂布が率いる10倍の兵力である。張燕の圧倒的兵力に対して呂布は騎兵だけを率いて1日に4回も本陣を急襲した。これを10日繰り返した頃、みるみるうちに張燕の兵数は、みるみると減り、于毒・眭固・白繞が討ち死にした。
 張燕「よもや。こんな捨て身のやり方が成功するなどとは」
 于毒「もう我慢ならん。打って出る」
 張燕「待て」
 于毒「俺はお前の配下ではない。黒山賊ってだけだ。じゃあな」
 魏越「打って出て来たか。流石にこの突撃に我慢できんかったようだな」
 于毒「お前が将だな。その首貰い受ける」
 魏越「この魏越が相手となろう」
 数合打ち合うもやがて于毒のスタミナが尽き討ち取られる。
 于毒「ハァハァハァ。嘘だろ。あんだけ無茶な突撃をしておいて、まだこんなやれるのかよ。ガハッ」
 魏越「フン。我ら呂布軍の底力を見くびるなよ」
 魏寧「兄さん、無事?」
 魏続「越、無事か?」
 魏越「兄さん、寧も心配ない。この通り。1人討ち取った」
 魏寧「流石兄さんね。奉先様も喜ぶわ」
 魏続「越にかかれば余裕であるな」
 于毒の死を知り激昂した眭固が突撃する。
 眭固「于毒が。許さん」
 張燕「待て、勝手な真似を」
 眭固「煩い。俺たちはお前の配下じゃない。同じ黒山族だから手を貸したまでのこと」
 徐晃「楊奉様、少しお下がりをどうやら打って出て来たようですから」
 楊奉「うむ。お前はもうワシの家臣ではない様付けなどする必要はあるまい」
 韓暹「癖ってのはそんなすぐに抜けねぇもんだ。我慢してやんな」
 楊奉「仕方ないな」
 眭固「そこをどけぇ。于毒を討ったクソ野郎のところに行くんだ」
 徐晃「ここは通さん。この徐公明がお相手しよう」
 眭固「クソガァ」
 徐晃の大斧により真っ二つとされる眭固。
 眭固「グワァー」
 徐晃「つまらぬものを斬ってしまった」
 楊奉「まぁ良い。将の1人を討ったのだ。張燕とは、同じ賊徒として、黄巾党の頃から知らぬ間柄ではない。このまま張燕の元に向かい降伏勧告しよう」
 于毒だけでなく眭固まで討ち死にし、怒った白繞が突撃した。
 白繞「呂布ーーーーーーーー于毒と眭固の仇。覚悟せよ」
 呂布「この呂奉先に挑むか。面白い」
 侯成「殿がやるまでもないここは俺が」
 宗憲「いや俺が」
 呂布「指名は俺のようだ。お預けだな侯成・宗憲よ」
 打ち合うまでもなく呂布の方天画戟により、討ち取られる。
 白繞「ガハッ。何故疲れを微塵も感じないのだ。化け物どもめ」
 呂布「弱すぎて、欠伸が出るぞ。だが敵将として、挑んだのは見事。敵将、この呂奉先が討ち取った」
 張燕は、楊奉の説得を受け、呂布に降り、こうして袁紹が長年苦しめられた黒山賊は滅んだ。袁紹は、今か今かと呂布の帰りを待っていたが呂布軍は戦場から姿を消した。
 張燕「我ら黒山賊は、呂布様に忠誠を誓います。今までの無礼、どうかご容赦ください」
 呂布「張燕よ。頭を上げよ。頼もしき黒山賊を手に入れられて、嬉しい限りだ。これからの働きに期待する。楊奉よ。張燕の説得、よくやった。陳宮よ。お前の知謀、今回は無駄に終わったな」
 楊奉「殿、有難きお言葉。一層励みます」
 陳宮「次こそは必ず、お役に立ちましょう」
 これが劉備軍が袁術軍を討伐する前に起こった河北の出来事であった。
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