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3章 群雄割拠

関羽の過去

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 関羽が過去を語り始める。
 関羽「15年前の某は商人見習いとして大旦那様の元で丁稚奉公している時でしてな。いろんなところへ商品の買い付けを担当しておりました。その時に訪れた并州で運命の出会いをしましてな。それが某の初恋でした。大層美しい人だったのです。名を杜美艶トビエンと言いましてな。某とした事が出会ったその日に告白して玉砕してしまいましたわい。というのも秦宜禄シンギロクと申す少年と婚約しておりましてな」
 義賢「ちょっと待ってください。その杜美艶とは何歳だったのですか?」
 関羽「某より8つ程歳下でしたから8歳でしたかな」
 義賢「ロリコンかーい」
 関羽「年下好きで悪いのですかな。そういう義賢の側室となった董白も16ですぞ。義賢より8つ下ではないか」
 義賢「ぐっ確かに」
 劉備「これは一本取られたな丁。ハッハッハ。雲長、続きを話してくれ」
 関羽が再び過去を話す。
 関羽「では。某の初恋が玉砕してすぐのことです。大層落ち込む某に大旦那様が縁談を持ってきたのです。商人仲間の娘とのことですが貰い手が居ないらしくて、良ければとのことでした。某は、一度会うことにしたのです。それが胡金定でした」
 胡金定「アナタが関羽様ですね。初めまして、胡金定と申します」
 関羽「胡金定は、貰い手が居ないなんて嘘のように綺麗な女性でした。だから某は聞いてみたのです。何故、縁談を断ってきたのか?と」
 胡金定「縁談を断ってきた理由ですか?私には姉が居まして、引きこもりなのです。だから私はいつも縁談相手にこう言うのです。姉と一緒で良いなら構いませんよって。そして、承諾した男性に姉が会うと逃げ出すのです。そして後日お断りされる感じです」
 関羽「ほぅ。姉のために尽力するなど。それも義であるな。某は金のことが気に入ったぞ。是非お姉さんに会わせてもらえぬか?」
 胡金定「!?。良いのですか?」
 関羽「うむ」
 胡金定「だそうです姉様」
 関羽「扉が開いて現れた胡金定の姉は、髪が伸び切っていて、目を覆い隠して、まるでこの世のものとは思えぬ雰囲気を漂わせておりましてな。皆が逃げるのも無理はないと思うほどでした。ですが某は逆に気に入りましてな。婚約したのです」
 胡金定「あら関羽様はお逃げにならない。姉様、やっと現れましたわ」
 関羽「ハッハッハ。これは珍妙な。だが良い。某は気に入りましたぞ。名はなんと申す」
 ???「こっこっこっこっ胡銀怜と申します。はっはっはっ恥ずかしい」
 関羽「では銀だな。そう恥ずかしがるな。引きこもりになったこともそのように目を隠していることも何か訳があるのであろう」
 胡銀怜「!?、あわわ。初めての人に。どうしたら。どうしたら良いの?金ちゃん」
 胡金定「大丈夫。大丈夫よ。関羽様からは他の殿方にないものを感じるの。慌てず話すのよ」
 胡銀怜は、このようになった経緯をポツポツとゆっくり話した。
 胡銀怜「わかった。金ちゃんを信じる。関羽様、聞いてください。幽州にある街に訪れたときのことです。当時の私は今とは全然違い外向的でした。ですがその街で有力者の息子に強引に襲われそうになったんです。金ちゃんが役人を呼んでくれて事なきを得たのですが。そこから男の人だけじゃなくて私を見る大人の目が怖くて、髪を伸ばして目を隠して見えなくして、誰とも会わないように引きこもるようになったのです」
 関羽は胡銀怜を抱きしめる。驚く胡銀怜。
 関羽「辛かったであろうな。権力をかざしてやりたい放題とは許せぬ」
 胡銀怜「私のために怒ってくださっているのですか?」
 関羽「当然であろう。お前は某の妻なのだ。妻に乱暴を働いた男がまだ生きていることじたい許せぬ」
 胡金定「ねっ関羽様は今までの殿方と違うでしょう」
 胡銀怜「えぇ。関羽様とならもう一度外に出られるかも」
 関羽「うむ。そのためにも、銀に乱暴を働いた輩を殺さねばな」
 胡銀怜「そんなことをしたら関羽様の商人としての名声が失われます」
 関羽「構わぬ。そのような輩を残しておけば、またいずれ誰かに被害が出るのは明白であろう。断ち切らねばならぬ。そのために商人を辞めることになっても。有力者の息子という事は役人もどうせ大衆の面前だから止めただけであろう」
 胡金定「わかるのですね」
 関羽「腐った有力者の元には腐った役人も集まるであろう。体裁だ。それゆえ止めただけじゃ。おそらく繋がっておる。もう被害者を出さぬためにも某が手を汚すのだ」
 関羽はそう覚悟して行動に移すことを決めた。大旦那が幽州の街に行く時についていくことにした。胡金定と胡銀怜の父も買い出しがあるとのことで行くこととなった。そこで事件が起こる。有力者の男が大旦那の商品と胡金定の父の商品にケチを付け、法外に値切って来て、それに対して断った大旦那と胡金定の父を殺した。世話になった大旦那と妻の父を殺した相手に対して怒りが収まらなくなった関羽は有力者とその息子を殺して、追われる身となった。そうこの殺した有力者の息子が芙蓉姫の婚約者だったのだ。
 胡金定「関羽様、私たちのせいで」
 関羽「気にするな。それにお前たちの父を守ってやれなかった。すまぬ」
 胡銀怜「私に乱暴を働いただけでなくお父様を殺すなんて、関羽様は悪魔に天罰を誅しただけです。逃げる必要など」
 関羽「そうは行かぬ。商人も辞め。無一文だ。必ずお前たちを迎えに来るゆえ。今は安全なところで隠れておくのだ。良いな」
 胡金定「わかりました。ですが私たちは関羽様の妻です。いつでも会いに来てください」
 胡銀怜「お待ちしております」
 関羽「うむ。それでは2人とも暫しの別れじゃ」
 関羽が話終わる。
 劉備「まさか、そんなところでも雲長と繋がっていたとはな。私も感謝する。あのまま芙蓉がそいつと婚約していたらと思うとゾッとする」
 関羽「ですがその妻たちともやっと逢えるのです。まぁちょこちょこ合間を見て会いに行ってましたがな」
 劉備「私もだ」
 張飛「へぇ大兄者と兄者にそんな過去があったとはな。俺は普通に肉屋やってたからよ。まぁ変な客は叩き出してたけどな」
 義賢「張飛殿にはいつも美味しい肉をありがとうございます」
 張飛「やめろやめろ」
 皆が笑い。安住の地となりつつある小沛城へと愛するものたちが来るのを待ち焦がれていた。
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