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3章 群雄割拠

劉備と芙蓉姫の馴れ初めを聞く

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 曹操から袁術討伐の勅令が届く間、義賢は劉備と関羽の妻との馴れ初めを聞いていた。
 義賢「兄上、前に話してくださった芙蓉姫様との馴れ初めを聞きたいのですが」
 劉備「丁は、私と芙蓉との馴れ初めならよく知っているはずだが」
 張飛「大兄者がどうやって出会ったのか俺も聞きてぇ」
 関羽「某も聞きたいですなぁ」
 劉備「雲長や翼徳まで。仕方がないな。あれは15年も前のことだ」
 俺がここに来てからもう8年になるから、15年前ってことは、俺の記憶じゃないってことだ。よく知ってると言われても知らないのも無理はない。劉備が語り始めた。
 劉備「国譲・憲和、賊が鴻家《コウケ》に盗みに入ったらしい。討伐に向かうぞ」
 田豫「玄徳、それは確かな情報か?」
 簡雍「やれやれ、また芙蓉姫様に逢いたいだけじゃないのかねぇ」
 劉備「煩い。賊だと言ったら賊なのだ」
 劉丁「クスクス。兄上。素直に逢いたいと言えばよろしいのでは」
 劉備「丁まで、賊だ賊なのだ」
 田豫「わかったよ。ったく供すれば良いんだろ」
 簡雍「やれやれ。仕方ないねぇ」
 劉丁「兄上に付いて行きます」
 4人で鴻家の家の前に着いた時、賊は本当にいたのだ。芙蓉姫を人質に取り、鴻家の当主に金品を要求していた。賊の要求を突っぱねた鴻家の当主は芙蓉姫の前で殺され、賊の牙は芙蓉姫に襲い掛かろうとしていた。今にも飛び出そうとしている劉備を止める劉丁。
 劉備「丁、止めるな。芙蓉が」
 劉丁「策もなく飛び込めば助けられませんよ。国譲は、左から回り込んで、憲和は右から回り込む。兄上はここで待機」
 田豫「わかった」
 簡雍「はいよ」
 劉丁は言うだけいうと賊の前に出て行った。
 劉丁「その人に凌辱とかしたら鴻家の財産がどこにあるか一向にわからないと思うのですが」
 賊「何もんだテメェ」
 劉丁「鴻家と少し関わりがあっただけの通りすがりの者ですよ」
 賊「鴻家と関わりがあっただぁ。ちょうど良いテメェなら財産が何処にあるのか知ってんじゃねぇか。教えてくれや。この親父みたいになりたく無かったらなぁ」
 劉丁「野蛮な人ですね。それが人に物を頼む態度ですか。教えて欲しいなら俺を捕まえることです」
 劉丁はそういうと逃げ出した。それを見て何か知ってると考えた賊は芙蓉姫を解放し、劉丁を追う。こうして誘い込まれて賊どもを劉備・田豫・簡雍が難なく討ち取ったのだ。
 劉丁「うまく行きましたね兄上」
 劉備「丁。戦闘が苦手なお前が急に飛び出すから焦ったぞ」
 劉丁「兄上は冷静では無かったですし、この作戦には国譲と憲和の連携も必須でしたしね。僕がやるしか無かったんですよ」
 芙蓉姫「パパ。パパ」
 涙を流しながら横たわる鴻家の当主を揺する芙蓉姫。ひとしきり泣き止むまで、側についている劉備。やがて、芙蓉姫は落ち着くと劉備に気付いた。
 芙蓉姫「もしかして、麓の村で有名なガキ大将の劉備?」
 劉備「いや、人違いではないかと」
 田豫「さっそくばれてんじゃねぇかよ」
 簡雍「やれやれ」
 劉丁「毎日、いい意味で騒がれていますからね」
 芙蓉姫「やっぱりそうなのね。私、アナタの噂を聞くのが楽しみだったの。今日は悪徳役人をやっつけたとか今日は商人を強請るやつをやっつけたとか」
 劉備「ハハハ。大事な村の人を傷付ける輩を許せませんから」
 芙蓉姫「でも、ここは村じゃないのにどうして助けてくれたの?」
 劉備「それはその。あの。すっすきなんです。この街が。それに困ってる人を助けるのに村だからとか関係ないです」
 田豫「おいおい。この街かよ」
 簡雍「やれやれ、こりゃあ」
 劉丁「兄上らしいというか」
 芙蓉姫「そうなのね。よかったら。今後も話をしに来てくれると嬉しいな。パパがあんなことになったし、頼る人も居なくなっちゃったから。話し相手になってくれると嬉しいな」
 劉備「おっおっ俺で良ければ是非」
 田豫「玄徳のやつ緊張しすぎだろう」
 簡雍「全く。あれじゃあなぁ」
 劉丁「相手が初恋の人ですからね。クスクス」
 離れたところで劉備を見守っていた3人の元に劉備が戻ってくる。
 劉備「やった。やった。芙蓉から今後も遊びに来て良いって。すげぇ嬉しい」
 劉丁「兄上。良かったですね」
 田豫「まぁ、いきなり恋人同士は玄徳には無理だわな」
 簡雍「まぁ頑張ったんじゃないかねぇ玄徳にしては」
 劉備「国譲も憲和も一言余計だ」
 それから何度も芙蓉姫の元を訪れ、武勇伝を聞きたがる芙蓉姫に話して聞かせる劉備。ある日、芙蓉姫が悲しそうな声で言った。
 芙蓉姫「劉備、今まで楽しい話をありがとう。私ね。婚約することになったの。相手はこの街の有力者の息子さん」
 劉備「婚約が決まったのにどうしてそんなに悲しそうなんだい?」
 芙蓉姫「えっ?気のせいよ。嬉しいわ。これで安心だから」
 劉備「その婚約は君が望んだことなの?」
 芙蓉姫「えっ?ううん違うわ。私の生活の面倒を見る代わりに息子の嫁になれってことよ。でもね。今まで助けてもらってたんだから仕方ないのよ」
 劉備「嬉しいならそんな悲しそうな顔をするな。大好きな芙蓉にはずっと笑ってて欲しい。私じゃダメか?裕福とは行かないかもしれない毎日筵を売って生活している身だ。だが芙蓉を好きな気持ちだけは誰にも負けないつもりだ」
 芙蓉姫「すごく嬉しいわ。でも、無理よ。断ったらその人がアナタに何をするか。私は玄徳に危害を与えられるなんて耐えられない。私もアナタのことが大好きだから」
 劉備はこのことを弟である劉丁に相談した。
 劉丁「兄上がそこまで好いているなら簡単です。兄上の顔を知らない誰かに攫って貰えば良いのです。国譲にね」
 それを聞いた劉備は田豫に頼み芙蓉姫を攫って貰い。この楼桑村で匿うことにした。だが一向に向こうが動く気配はなかった。
 劉備「噂で聞いて話なのだが、商人の怒りを買い殺されたそうだ」
 芙蓉姫「私が不幸にしてしまったのですね。私が側にいたら玄徳様も」
 劉備「芙蓉が不幸にした。ハッハッハッ。芙蓉と共に生きられるのなら不幸なぞ喰らってやる。人が人を不幸にするのではない。気持ちの持ち方次第だ。私は芙蓉が隣にいてくれて幸せなのだから」
 芙蓉姫「玄徳様」
 話し終えた劉備に関羽が不思議そうに尋ねた。
 劉備「まぁこんな感じだ」
 関羽「兄者、1つ気になったのですがもしかして、芙蓉姫様の婚約者を殺したのは、某かもしれませぬ」
 その話を聞き驚く面々に今度は関羽が過去を語り始めたのだった。
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