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3章 群雄割拠

曹操が献帝を迎え入れる

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 第一次徐州攻略戦を劉備の横槍により1年の停戦という形で終えた曹操は本拠の許昌へと帰っていた。そして、程なくして夏侯惇・夏侯淵が献帝を護衛して戻ってきた。
 曹操「献帝様、このようなところで申し訳ありませんが我が家と思って、お過ごしください」
 献帝「曹操よ。此度の救援。それに数々のお心遣いに感謝する」
 曹操「なに、献帝様を蔑ろにする賊を討ったまでのこと」
 献帝「そうであるか」
 曹操「これよりはこの曹孟徳が献帝様の権威回復のために武を振るうゆえ、頼りにしてくだされ」
 献帝「頼りにさせてもらおう」
 曹操「では、御殿をご用意いたしましたので、そちらにてお休みくだされ」
 献帝「うむ。重ね重ねのご厚意、感謝する」
 献帝は供の者たちを連れて、御殿へと向かった。曹操はそれを見送ると次の計略を練る。
 曹操「長安と洛陽を手に入れた今、徐州の陶謙とは1年の停戦となったがこの機に邪魔な袁術・孔融を排除して、更なる領土の拡大と行こうと考えている」
 戯志才「妙案かと」
 郭嘉「袁術はそのうち自滅するだろうからね。攻めるなら孔融だね」
 曹操「ふむ。反董卓連合の際に顔を合わせたが劉岱・王匡同様軽く蹴散らせるであろう。中原にて力をつけその次は河北制圧と行こうではないか。(袁紹よそれまでは良き親友でいてやろう)」
 郭嘉「では、北海へと進軍の準備といたしましょうか。皆と共に楽しい宴を行うためにね」
 戯志才「酒も女もほどほどにしておく者だぞ郭嘉」
 郭嘉「人生は一度きり、楽しまないとねぇ」
 曹操「全くその通りよ」
 戯志才「殿は、郭嘉に甘いですぞ」
 曹操「であるか」
 曹操は献帝を手中にし、大義名分を得る事となる。これにより曹操のやることに大義名分が生まれ、曹操のやることは献帝のやることと同じ意味を持ち、頭ひとつ抜け出た曹操が中原制覇へと乗り出していくのであった。このことは聡い献帝にも分かりきったことであった。御殿へと入った献帝は2人の妻と董承と共に今後の相談をしていた。
 献帝「これで朕は曹操の傀儡となったわけだが、勿論いつかの時のため力を蓄えておくつもりだ」
 董承「でしたら朝廷勢力を曹操の意のままになる者に変えられぬようにしなければなりますまい」
 ???「でしたら。父上も曹操にはくれぐれも逆らってはなりませぬよ」
 董承「瑶よ。当たり前のことを申すでない」
 董貴人「あら父上、今は献帝様の側室の1人で董貴人ですわよ」
 董承「献帝様と伏皇后様とわしらしかおらんところでぐらい構わぬであろう」
 董瑶トウヨウとは、董承の娘であり献帝の側室となり、董貴人トウキジン様と呼ばれている。伏皇后フク皇后とは、皇帝の妻であり、伏寿フクジュという名である。
 伏皇后「あの男には並々ならぬ野心を感じました。従っているうちは排除することを考えないでしょうが一度敵意を向けると何倍にもなって返ってくることでしょう。我が父、伏完フクカンにも軽率な行動はしないように言っておきましょう」
 献帝「うむ。朕も曹操に従順に従うゆえ、お前たちにも苦労をかけるであろうがよろしく頼む」
 董承「心得ました」
 董貴人「父共々献帝様をお支えいたします」
 伏皇后「えぇ、いつかこの辛い日々を皆と共に笑い合えるように耐え忍びましょう」
 4人は頷くと当面の間は曹操に逆らわず宮廷内での力を蓄えることとした。
 一方その頃、曹操が次の討伐先に指定した北海の孔融は、兗州で力をつけ、献帝を手中にした曹操に降るべきか否か思案していた。
 孔融「(私は一国を治める器ではない。曹操殿に降伏するか。いや、あの男は好かん。袁紹に北海を渡すのはどうだろう?袁紹に恩を売り、今は袁紹と同盟している曹操にも煮え湯を飲ませてやれる。雨白いではないか。)良し、王脩オウシュウは居るか?」
 王脩「ここに」
 孔融「袁紹にこの書簡を届けてくれ」
 王脩「かしこまりました」
 王脩が書簡を持って袁紹の元へと発つ。
 孔融「(袁紹がアレを飲めば、揚州にて勢力を拡大しようとしている孫堅を頼るのが良かろう)良し。孫邵ソンショウよ」
 孫邵「はっ」
 孔融「孫堅殿にこれを届けてくれぬか」
 孫邵「了解しました」
 孫邵が孫堅の元に書簡を持って発つ。
 孔融「(曹操よ。この北海が欲しかろう。だが今はお前にはやらぬ。せいぜい苦慮するがいい。ハッハッハ。孫堅殿が受け入れてくださればここを発つ際に陶謙殿に挨拶しに伺うとしよう)」
 袁紹の元に孔融からの使者が到着した。
 王脩「使者として参りました王脩と申します。我が殿孔融様からこちらの書簡をお持ちしました」
 袁紹「遠路はるばる御苦労である。孔融殿とは反董卓連合以来ですな。どれどれなんと。曹操が献帝を手中にしたか。まぁ同盟相手として喜ばしいことですな。北海をこのワシにくださるだと真か?」
 王脩「はい。そのように聞いております」
 袁紹「わかった預かりましょう。孔融殿にもよろしくお伝えくだされ」
 王脩「了解いたしました」
 袁紹は断る理由はなかった。なんの損失もなく北海を手に入れられるのだ。これが元で曹操との間が拗れる事などこの時は知る由も無かった。
 同時期、孫堅の元に孔融からの使者が到着した。
 孫邵「使者として参りました孫邵と申します。我が殿孔融様よりこちらの書簡をお持ちしました」
 孫堅「遠路はるばる御苦労である。すぐに返答するより暫しお待ちいただいて構わぬか?」
 孫邵「はい」
 孫堅「(ふむふむ。曹操が献帝を手中にしたか。劉丁殿の言っていた通りとなったな。何々、孔融軍を受け入れていただきたい。揚州制圧の大きな力となるであろう。断る理由はないな。待望の娘も産まれた。いずれ後漢のため劉備殿と誼を通ずる準備もできている。劉備殿が同盟を断れぬぐらいに大きく育てて置かねばな)お待たせして申し訳ない。孔融殿の申し出快くお受け致す。そのようにお伝えくだされ」
 こうして、孔融の思惑通り、領土は袁紹へ。人材は戦果を逃れて南の孫堅の元へと流れることとなった。
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