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3章 群雄割拠
曹操の拡大
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陶謙の治める徐州が曹操の怒りの炎に焼かれる前のこと。河北で拡大していた袁紹と同盟を結び中原にて力をつけることに決めた曹操はそのための人材を広く求めた。曹操は一言、唯才是挙と書いた。地位や家柄、人格や過去の行いなどに一切よらずただ才があれば用いるとこれにより許昌にかつてないほどの人材が集まったのである。夏侯惇と互角の戦いを繰り広げた典韋、人民を統治することに才能を発揮した李典曼成、役人時代に横暴を働いたものを拷問致死させた満寵伯寧、徐栄の奇襲にあい命からがら逃げ出す際に協力してくれた陳宮公台、豪族を殺して吸収を繰り返し勢力を大きくしていた李通文達、夏侯惇に見出された韓浩元嗣、旗揚げの際に病で参加できなかった曹操の従者を務めていた史渙公劉である。彼らと共に青州黄巾兵の乱を治め。精鋭の青州兵30万と非戦闘員100万、そして鮑信とその配下である于禁文則を加え、兗州の地盤を固めるために劉岱・王匡を討伐、袁術を兗州から追い出し寿春へと追いやったのである。そんな曹操は、父との久々の再会を心待ちにしつつ、反董卓連合で一緒だった陶謙に父のことをくれぐれも頼むと言い渡し、家族団欒の日々を過ごしていた。
曹操「劉よ。昂は、元気に育っておるな」
劉とは、曹操のことを身分の低い時代から支えていた劉夫人のことであり、曹操と同じく身分の低い生まれであり、正室とは認められなかった女性である。だが曹操は家中のことの取りまとめを任せていたのである。昂とは、そんな曹操と劉夫人との間の子供で、曹昂子脩という。もうすぐ成人を迎える歳となるが武芸に秀で、馬術を好み、性格も良いという三拍子揃っていた。
劉夫人「えぇ、ゴホゴホ。昂は必ず旦那様をお守りしてくれる武者になってくださると思いますわ。ゴホゴホ」
曹操「最近、咳が止まらぬな。大事ないのか?」
劉夫人「えぇ、お医者様からは流行病であろうとのことで薬を貰いましたわ。ゴホゴホ」
曹操「そうであるか。お前にもしものことがあっては困るのだ。身体を労るのだぞ」
劉夫人「えぇ、心得ておりますわ。ゴホゴホ」
曹操「昂よ。劉のことを頼むぞ」
曹昂「はっ父上。お任せください」
曹操「頼もしい限りだ」
劉夫人「旦那様、私に気を遣わずに側室をお取りくださいませ。ゴホゴホ」
曹操「何を言うのだ。ワシをずっと支えてくれたお前だけで良いのだ」
劉夫人「風邪を引いて気弱になっていたのかもしれません。ですが旦那様はいずれこの国を治める方と思っています。良いと思った方がいれば私に遠慮などしないでくださいませ。ゴホゴホ」
曹操「わかった。わかった。だからあまり喋るでない。身体に障るであろう」
劉夫人「言質は取りましたからね。絶対ですよ。ゴホゴホ」
曹操「うむ。最近荊州の奥地に張角診療所なるものがあるとのことだ。どのような病も治せるなどと嘘のような話だが劉よ。あまり咳が続くようであれば昂を護衛に行くのだぞ」
劉夫人「えぇ、わかりましたわ。ゴホゴホ」
伝令「曹操様、家族団欒のところ申し訳ありません。火急の知らせが」
曹操「わかった。だがここではダメだ。参るとしよう。劉よ。すまぬが行ってくる」
劉夫人「旦那様、行ってらっしゃいませ。ゴホゴホ」
曹操「うむ」
曹操は伝令と共に会議室にに向かう。そこには主だった家臣たちも集まっていた。
曹操「火急の知らせとはなんじゃ?」
伝令「曹嵩様が陶謙軍により討ち取られました」
曹操「何をいっているのだ貴様。陶謙が父上を討っただと。ありえぬ。何故じゃ」
伝令「陶謙が護衛に付けた張闓なるものが曹嵩様を斬り殺し、金品を奪ったとのことです」
曹仁「殿、これは我らに対する宣戦布告かと」
曹洪「こんなことを許して良いわけがありませぬ」
夏侯惇「孟徳、真偽を確かめるにしても徐州に向かうしか無いぞ」
曹操は父を殺された怒りの炎が頂点に達した。
曹操「根絶やしだ」
陳宮「殿、それはなりませぬ」
満寵「徐州を奪う良い機会ではありますな」
夏侯淵「満寵、殿の気持ちを察しやがれ」
満寵「これは失言を」
曹操「構わぬ。父を殺した陶謙を殺し、徐州を奪う。全軍支度をせよ」
陳宮「殿、私は従えませぬ」
曹操「わかった。今までよく仕えてくれた。どこへなりといくが良い」
陳宮「失礼致します」
陳宮は徐州の根絶やしに賛成できず曹操軍を去ることになる。曹操軍はまたも軍師不在となり曹操が舵取りしていくのである。この進軍を控えた前夜、袁紹軍の元にいた風変わりな軍師が曹操の幕舎を訪れた。
???「酒の匂いに釣られてふらふらとこんなところまで来てしまったよ。一杯貰えないかい?」
曹操「こんな夜更けに訪ねてきて、酒をねだるか面白い男よ」
曹操は謎の男に酒を渡した。
???「コイツは良い酒だね。酒のお礼に一つ献策を致しましょうか。徐州を手にすることは、今は時期早々。攻めるフリをして背後の憂いを無くすことを視野に入れるべきでしょう」
曹操「背後の憂いとは?」
???「呂布に袁術に李傕です」
曹操「ワシは父を失った怒りをぶつけずにはいられぬのだ」
???「わかりました。では、夏侯惇殿を私に貸してください。李傕と郭汜はまもなく仲違いを始めるでしょう。その混乱に乗じて献帝様を保護することができれば大義名分を得られましょう」
???「郭嘉、それぐらいにしておけ。曹操殿、お初にお目にかかります戯志才と申します。もう一つ挙げるとするならば間も無く吉報が訪れましょう」
伝令「献帝様の使者を名乗る方がいらしております」
曹操「通せ」
董承「献帝様の侍従を務めております董承と申します。この度は献帝様を曹操様に保護してもらうべく参りました。間も無く都にて大規模な内乱が始まるでしょう。その隙に献帝様を保護していただきたいのです」
曹操「天子様の安全はワシが保証しよう」
董承「ありがとうございます。それでは私はこれにて、準備がありますので」
曹操「うむ。遠いところ知らせてくださり感謝いたします」
董承が帰るのを見送った曹操は2人に向き直る。
曹操「感謝する。郭嘉と申したな。お前に夏侯惇を預ける」
郭嘉「やはり貴方は大望を成す御方のようだ。郭嘉奉孝、これよりは殿と呼ばせていただきます」
戯志才「郭嘉共々よろしくお願いいたします」
曹操「郭嘉・戯志才、頼もしき知謀を得た」
曹操は陶謙を攻めつつ帝の保護も担うことにしたのであった。
曹操「劉よ。昂は、元気に育っておるな」
劉とは、曹操のことを身分の低い時代から支えていた劉夫人のことであり、曹操と同じく身分の低い生まれであり、正室とは認められなかった女性である。だが曹操は家中のことの取りまとめを任せていたのである。昂とは、そんな曹操と劉夫人との間の子供で、曹昂子脩という。もうすぐ成人を迎える歳となるが武芸に秀で、馬術を好み、性格も良いという三拍子揃っていた。
劉夫人「えぇ、ゴホゴホ。昂は必ず旦那様をお守りしてくれる武者になってくださると思いますわ。ゴホゴホ」
曹操「最近、咳が止まらぬな。大事ないのか?」
劉夫人「えぇ、お医者様からは流行病であろうとのことで薬を貰いましたわ。ゴホゴホ」
曹操「そうであるか。お前にもしものことがあっては困るのだ。身体を労るのだぞ」
劉夫人「えぇ、心得ておりますわ。ゴホゴホ」
曹操「昂よ。劉のことを頼むぞ」
曹昂「はっ父上。お任せください」
曹操「頼もしい限りだ」
劉夫人「旦那様、私に気を遣わずに側室をお取りくださいませ。ゴホゴホ」
曹操「何を言うのだ。ワシをずっと支えてくれたお前だけで良いのだ」
劉夫人「風邪を引いて気弱になっていたのかもしれません。ですが旦那様はいずれこの国を治める方と思っています。良いと思った方がいれば私に遠慮などしないでくださいませ。ゴホゴホ」
曹操「わかった。わかった。だからあまり喋るでない。身体に障るであろう」
劉夫人「言質は取りましたからね。絶対ですよ。ゴホゴホ」
曹操「うむ。最近荊州の奥地に張角診療所なるものがあるとのことだ。どのような病も治せるなどと嘘のような話だが劉よ。あまり咳が続くようであれば昂を護衛に行くのだぞ」
劉夫人「えぇ、わかりましたわ。ゴホゴホ」
伝令「曹操様、家族団欒のところ申し訳ありません。火急の知らせが」
曹操「わかった。だがここではダメだ。参るとしよう。劉よ。すまぬが行ってくる」
劉夫人「旦那様、行ってらっしゃいませ。ゴホゴホ」
曹操「うむ」
曹操は伝令と共に会議室にに向かう。そこには主だった家臣たちも集まっていた。
曹操「火急の知らせとはなんじゃ?」
伝令「曹嵩様が陶謙軍により討ち取られました」
曹操「何をいっているのだ貴様。陶謙が父上を討っただと。ありえぬ。何故じゃ」
伝令「陶謙が護衛に付けた張闓なるものが曹嵩様を斬り殺し、金品を奪ったとのことです」
曹仁「殿、これは我らに対する宣戦布告かと」
曹洪「こんなことを許して良いわけがありませぬ」
夏侯惇「孟徳、真偽を確かめるにしても徐州に向かうしか無いぞ」
曹操は父を殺された怒りの炎が頂点に達した。
曹操「根絶やしだ」
陳宮「殿、それはなりませぬ」
満寵「徐州を奪う良い機会ではありますな」
夏侯淵「満寵、殿の気持ちを察しやがれ」
満寵「これは失言を」
曹操「構わぬ。父を殺した陶謙を殺し、徐州を奪う。全軍支度をせよ」
陳宮「殿、私は従えませぬ」
曹操「わかった。今までよく仕えてくれた。どこへなりといくが良い」
陳宮「失礼致します」
陳宮は徐州の根絶やしに賛成できず曹操軍を去ることになる。曹操軍はまたも軍師不在となり曹操が舵取りしていくのである。この進軍を控えた前夜、袁紹軍の元にいた風変わりな軍師が曹操の幕舎を訪れた。
???「酒の匂いに釣られてふらふらとこんなところまで来てしまったよ。一杯貰えないかい?」
曹操「こんな夜更けに訪ねてきて、酒をねだるか面白い男よ」
曹操は謎の男に酒を渡した。
???「コイツは良い酒だね。酒のお礼に一つ献策を致しましょうか。徐州を手にすることは、今は時期早々。攻めるフリをして背後の憂いを無くすことを視野に入れるべきでしょう」
曹操「背後の憂いとは?」
???「呂布に袁術に李傕です」
曹操「ワシは父を失った怒りをぶつけずにはいられぬのだ」
???「わかりました。では、夏侯惇殿を私に貸してください。李傕と郭汜はまもなく仲違いを始めるでしょう。その混乱に乗じて献帝様を保護することができれば大義名分を得られましょう」
???「郭嘉、それぐらいにしておけ。曹操殿、お初にお目にかかります戯志才と申します。もう一つ挙げるとするならば間も無く吉報が訪れましょう」
伝令「献帝様の使者を名乗る方がいらしております」
曹操「通せ」
董承「献帝様の侍従を務めております董承と申します。この度は献帝様を曹操様に保護してもらうべく参りました。間も無く都にて大規模な内乱が始まるでしょう。その隙に献帝様を保護していただきたいのです」
曹操「天子様の安全はワシが保証しよう」
董承「ありがとうございます。それでは私はこれにて、準備がありますので」
曹操「うむ。遠いところ知らせてくださり感謝いたします」
董承が帰るのを見送った曹操は2人に向き直る。
曹操「感謝する。郭嘉と申したな。お前に夏侯惇を預ける」
郭嘉「やはり貴方は大望を成す御方のようだ。郭嘉奉孝、これよりは殿と呼ばせていただきます」
戯志才「郭嘉共々よろしくお願いいたします」
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