上 下
53 / 533
2章 反董卓連合

董卓の最期

しおりを挟む
 楊奉たちが長安の防衛を固めているところに呂布軍が現れた。
 楊奉「呂布様、お待ちしておりました」
 呂布「楊奉、首尾はどうだ」
 楊奉「万事、整えております」
 呂布「良し、李傕を決して長安内部に踏み込ませるな」
 楊奉「はっ」
 楊奉は黄巾党賊徒の白波賊の頭領を務めていた。暴れ回っていた時に丁原軍に散々に打ち負かされ降伏した。それ以降は呂布に従っていた。今回呂布による董卓暗殺のため長安へとの護送任務を担っていた。呂布は劉義賢から聞いたことを敢えて伏せて、董卓の暗殺という当初の予定通りだと強調したのだ。だが呂布の心には丁原から託された物の重みがのしかかっていた。そして、呂布は寝所にて厳氏と言葉を交わす。
 厳氏「奉先、父の想いを正しく理解して押しつぶされる気持ちはわかります」
 ???「ママー。パパ、辛いの?」
 厳氏「まぁまぁ、呂姫リョキにもわかるのね」
 呂布「姫も俺に似て、人の心の奥底を見てしまうのかも知れんな。厳よ、お前は義父のことをわかっていたのか?」
 厳氏「父のことで分からないことなどありませんよ。父が董卓が偽物ではないかと考えていたこと。私を1番信頼していた奉先に託したこと。全て父の思惑通りってことです」
 呂布「俺は董卓を殺すことこそが義父の想いだと思っていた。だが劉丁という男に言われて、納得した。実に面白い男であった」
 厳氏「奉先が、褒めるなんて珍しいわね。クスクス。でも、良き出会いだったということではないかしら。父の想いを己で気付けず他人から諭されたのは私としては少し残念ですけどね」
 呂布「すまん」
 厳氏「良いのですよ。それで、どうやって霊帝様をお救いするつもりですか?」
 呂布「!?全くお前には敵わないな」
 厳氏「クスクス」
 呂姫「私も、パパをお手伝いするー」
 呂布「姫のお手伝いか。そうだな。では父の肩を揉んでくれるか?」
 呂姫「うん。ここかなぁ。パパ、気持ちいい」
 呂布「あぁ、良い気持ちだよ」
 呂布は呂姫の頭を優しく撫でる。
 呂姫「エヘヘ」
 呂布「姫のおかげで身体が軽くなった。厳、少しの間家を任せる」
 厳氏「えぇ、奉先気をつけてね」
 呂布「あぁ」
 呂布は董卓のいる御所へと向かった。
 董卓「呂布、良く無事だったな。養父は嬉しいぞ」
 呂布「もう董卓の真似をするなどおやめください霊帝様」
 董卓「!?」
 王栄「董卓様が霊帝?呂布、貴方何を言ってるの?」
 献帝「やはりそうでしたか」
 王允「その可能性に最近至った。呂布殿も思い至ったのだな」
 董卓「俺は全国の女を奴隷にし、略奪を繰り返す董卓ぞ。呂布よ。その首刎ねてくれる」
 人妻「もう、おやめください。董卓様は女を奴隷になどなさらないし、略奪を命じたこともないではありませんか」
 女官「董卓様は、旦那によって傷ついた女性を保護していらっしゃる優しいお方です」
 董卓「保護などではない。良い女だったから寝とってやっただけぞ」
 王栄「私は何故今まで気付かなかったのかしら。霊帝と董卓様が入れ替わっていたのなら。急に私が蔑ろにされて何皇后が寵愛されたのも。そういうことだったのね。それに董卓様が私を抱いてくれる大きいアレがすんなり入ったのも前に受け入れたことがあったから」
 董卓「呂布よ。こんなことをしてお前はどうするつもりじゃ」
 呂布「霊帝様には董卓として死んでもらいます。その役目は親殺しと呼ばれる俺が務めます」
 董卓「丁原は病死だ。呂布よ。お前が背負うことはない。罰される者がいるとしたらあの忠臣に対して、首を宮中に晒したワシであろう」
 呂布「お認めになられるのですね。それに義父の想いに気付かなかった俺も同罪です」
 董卓「あぁ。ワシが霊帝じゃ。栄・協、謀っていてすまなかったな」
 王栄「いえ、私が董卓に抱かれていなくて良かったと思えます。私の中に入ったのは霊帝様だけだったのですね」
 董卓「生々しい言い方をするでない。照れるであろう」
 献帝「父上ーーーーーーーー」
 献帝が霊帝に抱きついている。
 董卓「全く、協は、父と知って甘えよって、そんなことでは漢を託せぬではないか」
 献帝「父上が生きていたのです。喜んで退位します」
 董卓「馬鹿を申すな。ワシは呂布によりこの身を終えるのだ。協よ。漢を頼んだぞ。栄、寂しい思いをさせることになる。すまん」
 献帝「父上が何故死ななければならないのです」
 王栄「霊帝様が死ぬと仰るのでしたら私も共に」
 呂布「はぁ、霊帝様・献帝様・王栄様、勘違いされています。私が殺すのは董卓です。霊帝様ではありませんよ。楊奉、聞いていたな」
 楊奉「まさか董卓が霊帝様であったとは、それで俺に李傕について洛陽で霊廟の略奪に付き合わせたのですね。元白波賊とはいえ、あのようなことを喜んでやりたくはありませんでしたよ」
 呂布「すまんかったな。それで」
 楊奉「はい、霊帝様として亡くなった董卓の亡骸です」
 呂布「うむ。防腐加工がしっかり施されていたようだな。これならかろうじて騙せるだろう」
 董卓「呂布よ。まさか!?」
 呂布「えぇ。御協力を」
 董卓「わかった」
 呂布は董卓を連れ長安の民の前に出ると董卓の後ろに亡骸を抱えて方天画戟を振る。それに合わせて董卓が倒れて、亡骸の首が飛ぶ。長安の民は階段下からなんだなんだと見ていたので、倒れた董卓の姿は見えず。飛んだ首だけが見える。
 呂布「逆賊、董卓。呂奉先が成敗した」
 民男「良くやったぞ。これで、妻も戻ってくるはずだ」
 老人「これで殺された息子も浮かばれますぞ」
 歓声を上げている者は、妻を道具としてしか扱わなかった男の親族と宮中に呼んで保護したばかりで殺されていない妻を取られた男たちであった。こうして、専横を働いたとされる暴君董卓は最期を迎えたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

処理中です...