怪奇事件捜査File2 ドッペルゲンガーと謎の電話編

揚惇命

文字の大きさ
上 下
10 / 26

より詳しく話を聞く必要性がある

しおりを挟む
 私は、山里愛子と竹下育美の話を聞いても2人が女将の桜舞につかみかかった理由がわからなかったので、先ほど聞いた話を頭の中でまとめる。そういえばビスクドールが悍ましい声で言ってた言葉。まさかそういう事なの。でも、そう考えなければ2人が桜舞につかみかかる理由の説明が付かない。だとしたら桜舞は、初めから子供が産めない身体ではなかった。何かしらの原因を作ったのが今回被害者となってしまった木下散梨花、そして山里愛子と竹下育美ということになるわよね。桜舞が大事にしていたビスクドールに子供の魂が宿り復讐をしている。そんなことあり得るのだろうか?そこで意識を戻すと山里愛子と竹下育美は桜舞を睨みつけながら言う。
「アンタじゃ無いなら誰があのビスクドールを操れるって言うのよ。それにそもそもかが持ってるのもアンタだけじゃ無い。あんな頑丈に特注で作って、あの人形を壊してやろうと色々したけどあのショーケース傷一つ付かなかったわよ」
「そうよそうよ」
 2人の話を受け止めながら戸惑う桜舞に助け舟を出す男がいた。
「それは、でもメリーが動くなんて、そんな」
「まぁまぁ、その辺にしときなさいや」
「煩いわよ。アンタ誰よ」
「こりゃあすいませんね。桜道筋様にドッペルゲンガーの調査を頼まれた探偵で臍鬱仁丹って言いやす」
「変な名前の探偵が何よ」
「何よ」
 臍鬱探偵は山里愛子と竹下育美に自己紹介をすると、語り始めた。
「まぁまぁ、聞いてくださいや。大事にされた人形には魂が宿るって話を知ってやすかい?」
 臍鬱は、皆が首を捻るのを見て、続きを話し始める。
「おや、知らない。では、これはアッシが体験した話なんでやすがね。ある老夫婦が大切にしていた人形様があったんでやす。その人形の髪は伸びるし、表情が変わるんでやす。勿論、絡繰人形ってオチでは無いでやすよ。伸びたら髪を切ってやる老婆を見たアッシは、聞いたんでやす。どうして、不思議に思わないのかってね。そしたらねその老婆は笑いながら『この人形様には魂が宿っておられるんですよ。座敷童様のね』ってそう言いながら丁寧に髪を整える老婆に人形様が笑いかけたんでやす。その人形は家の人に危害を与えることなんてありませんでしたがね。入り口の人形様も同じでありやしょう」
 臍鬱探偵の話を聞いた山里愛子と竹下育美が異議を唱える。
「死人が出てるのよ」
「危害加えてるじゃ無い」
 山里愛子と竹下育美の異議を聞き、臍鬱探偵が返答を返す。
「勿論、あの人形は女将さんのものでやすから女将さんに対して危害を加えないって話でやす。まぁこう言い換えられますがね。女将さんに危害を加えたことを人形が知っていて、復讐していると。まぁアッシのただの推測でやす」
「私たちが何したってのよ」
「そうよそうよ」
 臍鬱探偵の話に納得できない山里愛子と竹下育美が尚も抗議していた。それを素知らぬ顔で受け流す臍鬱探偵。話を聞いていた阿久魔が思い出したように言う。
「おい、待てよ。そこの女が死んだのって深夜2時頃なんだよな?じゃあ、そこの女には犯行は無理だぜ。俺、ちょうどその時間にトイレに起きてよ。そこの女の部屋の前を通ったんだが、部屋が少し空いててよ。中で寝てるそこの女を見たんだよ」
 阿久魔の話を聞いた桜舞が首を捻るが桜道筋が空いてた理由を話す。
「部屋が空いていた?」
「俺が開けっぱなしにしちまったんだろう」
「成程、3人と密会をしに向かった時に少し空いたまま出たってことよね」
「あぁ、その通りだよ刑事さん」
「開き直ってんじゃ無いよ。この馬鹿息子」
「フン」
「まぁまぁ、桜舞さん・桜道筋さん・山里愛子さん・竹下育美さんにはまだ話をお聞きしたいのですがここからはかなりプライバシーの話になってくると思われますので個々にお呼びして、話を聞かせてもらえたらと思います。そして、木下散梨花さん殺人事件については、ドッペルゲンガー事件とは無関係であると考えられますがあのメッセージの意図もわかってない今、勝手な行動だけは慎んでください」
 私の言葉に皆が頷くとそれぞれの部屋へと戻っていく。鈴宮楓が話しかけてくる。
「大変な事になっちゃったね美和」
「楓も楽しい旅行だったのに散々ね」
「まぁ宇宙の意外な一面も見れたし、でもあの若旦那は無いわ~女を何だと思ってんのよって感じ。記事に書いてやる」
「アハハ。私も偶然とはいえ楓や山波さんと一緒で心強いよ」
「そう言ってもらえると嬉しいわね宇宙」
「あぁ、そうだな。何かあったら何でも言ってくれ出雲さん」
「えぇ、頼りにさせてもらうわね」
「任せてくれ、楓、そろそろ俺たちも帰るぞ」
「うん。じゃあね美和」
 お互い手を振り別れる。私も今日は話を聞いてだいぶ疲れた。明日以降は、個別に話を聞いて、事件を解決しないとだなぁ。ビスクドール殺人事件か。私が解決しないと。そしてこれ以上の殺人を未然に防がないと。覚悟を決めた私は疲れた身体を部屋の露天風呂で癒して、眠りへとつくのだが不可解な夢を見るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―

至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。 二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。 彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。 信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。 歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。 幻想、幻影、エンケージ。 魂魄、領域、人類の進化。 802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。 さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。 私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...