怪奇事件捜査File1首なしライダー編(科学)

揚惇命

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エピローグ

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「うーん」
眩しい朝の日差しを浴びながら伸びをして目を覚ます美和。
支度をして出かける。
「行ってきまーす」
誰に挨拶をするわけでもなく日課の挨拶をして、加賀美警察署に向かう前に行きつけの店『バルガモス』に向かう。
「マスターいつもの」
「美和ちゃん、いらっしゃい。ブレンドコーヒーと卵サンドのセットね」
できるまでの間、今日は人が多いなと周りの人の話に耳を傾ける。
「ねぇねぇ。久根高校の掲示板から首なしライダーの板だけゴッソリ無くなってたみたいでさぁ。ちょっとした新たな都市伝説になってるらしいわ」
「お前、久根高校に通ってねぇだろ。誰に聞いたんだ」
「通ってる友達からよ」
「でどんな都市伝説なんだよ」
「消えた首なしライダー」
「はっ?首なしライダーの書かれた掲示板だけが消えたからとかじゃねぇよな」
「何でわかったのよ~」
「誰でもわかるだろ。むしろわからないやつ居んのかよ」
「つまんなーい」
「知るか」
首なしライダーと聞こえてまた出たのかしらと一瞬身構えたが久根高校の掲示板から消えたから消えた首なしライダーとはね。まぁ、おどろおどろしい感じではなくて微笑ましい方なのが救いかしらね。
「ブレンドコーヒーと卵サンドのセットでございます」
「マスター、ありがとう」
「あっ美和ちゃん、お客さんが忘れて行った輪廻の新聞があるんだけど読むかい?」
「えぇ、是非」
目を通してみるが輪廻にしては珍しく普通の新聞だ。
「マスター、これホントに輪廻?」
「あっ、輪廻にしては珍しく普通だなとか思った?」
「えぇ」
「何かね。首なしライダーのことを書いた記者がね。不慮の事故で亡くなったらしいのよ。それで今回は喪に服すらしいよ」
「そうなんだ」
それで心霊系ではなく普通の感じなわけか。得られる情報は無さそうね。パラパラと一通り目を通してすぐに閉じた。温かいコーヒーを飲みながらフワフワの卵サンドに齧り付く。私の嗜好の時間を楽しんだ。
「マスター、勘定お願い」
「はいよ。ちょうどね。気をつけていってらっしゃい」
「行ってきまーす」
加賀美警察署の怪奇特別捜査課に入ると電話が鳴る。
「もしもし、怪奇特別捜査課の出雲です」
「出雲くん、大活躍だったそうだね。報告を頼むよ」
「明石副総監!?」
「何を驚いているのかね。この私が作った怪奇事件を捜査する専門部署なのだから私から電話があっても何も不思議ではあるまい。それとも都市伝説とでも思っていたのかな?」
「いえ、滅相もありません。報告させていただきます。一連の首なしライダー事件の顛末ですが走田一、鶴田啓吾、鶴田啓一の3人を殺したのは本物の首なしライダーではなく、首なしライダーを騙った轟翔でした。その轟翔も轟照美に絞殺されました」
「ふむふむ。それはおかしいな。そもそも轟照美に轟翔を殺すことは不可能だ。違うかね」
「えぇ、ですが警察は轟照美が最後の力を使い轟翔を殺したと結論づけましたので」
「私はね。君の見解を聞きたいんだよ。警察の見解が聞きたくて君に電話するわけが無かろう」
「えっ、私の見解ですか!?僭越ながら轟照美が幽体離脱をして、これ以上弟である轟翔に罪を重ねさせないために殺したと考えています」
「素晴らしい答えだ。心霊の存在が確かにそこに存在したということなんだからねぇ。引き続きよろしく頼むよ」
「はい」
ガチャ、ツーツーツー。
電話が終わるとドアが開いて誰かが入ってくる。
「柊管理官!?」
「そんなに身構えなくても良いわよ。副総監からね。頼まれごとしてたから寄っただけなんだ・か・ら」
この後ろにつく擬音はうっふーんだ。でも色気を使う相手が違わないだろうか?女の私に使っても何も響かないし新しい扉が開いたりもしない。
「あら~連れないのね美和ちゃんは」
「あっすいません。そういうのには疎くて」
「あら~そうなのね~恋は良いわよん。女を美しくするから」
これ以上美しくならないでください美魔女さんという言葉は飲み込んでおく。
「これね。怪奇特別捜査課の心霊ファイルね」
「はっ?」
「今回の首なしライダー時間における顛末と美和ちゃんの見解を纏めてファイリングすること。それから今後の事件に関してもそうしていきなさいって事らしいわよん」
「はぁ」
「じゃあ、頑張ってね。出雲美和警視」
クネクネと身体を揺らしながら去っていく柊管理官であった。

その頃、輪廻新聞社による社員の通夜の席では、ヤバいことが起こっていた。
「おいおいおいマジかよ」
「こんなことって」
「いやぁーーーーーーーーーー」
首なしライダーのことを書いていた男の死体から首が忽然と消えたのだ。まるで首なしライダーはまだ生きていると主張するみたいに。そうこのライターの男も元走り屋だったのだ。奇しくも走り屋だった男から首が消える。かつて、久根高校の掲示板に書かれていた。首なしライダーは、走り屋を恨んでいる。轟翔によって、何気なく書かれた文章は奇しくも的を得ていたのである。
「ニクイ、ニクイ、ヨシエヲコロシタハシリヤガニクイ」
かつて警察が一斉検挙した走り屋たちの首がない死体が見つかるという事件の後、忽然と首なしライダーの噂が消えるのだった。
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