怪奇事件捜査File1首なしライダー編(科学)

揚惇命

文字の大きさ
上 下
16 / 16

エピローグ

しおりを挟む
「うーん」
眩しい朝の日差しを浴びながら伸びをして目を覚ます美和。
支度をして出かける。
「行ってきまーす」
誰に挨拶をするわけでもなく日課の挨拶をして、加賀美警察署に向かう前に行きつけの店『バルガモス』に向かう。
「マスターいつもの」
「美和ちゃん、いらっしゃい。ブレンドコーヒーと卵サンドのセットね」
できるまでの間、今日は人が多いなと周りの人の話に耳を傾ける。
「ねぇねぇ。久根高校の掲示板から首なしライダーの板だけゴッソリ無くなってたみたいでさぁ。ちょっとした新たな都市伝説になってるらしいわ」
「お前、久根高校に通ってねぇだろ。誰に聞いたんだ」
「通ってる友達からよ」
「でどんな都市伝説なんだよ」
「消えた首なしライダー」
「はっ?首なしライダーの書かれた掲示板だけが消えたからとかじゃねぇよな」
「何でわかったのよ~」
「誰でもわかるだろ。むしろわからないやつ居んのかよ」
「つまんなーい」
「知るか」
首なしライダーと聞こえてまた出たのかしらと一瞬身構えたが久根高校の掲示板から消えたから消えた首なしライダーとはね。まぁ、おどろおどろしい感じではなくて微笑ましい方なのが救いかしらね。
「ブレンドコーヒーと卵サンドのセットでございます」
「マスター、ありがとう」
「あっ美和ちゃん、お客さんが忘れて行った輪廻の新聞があるんだけど読むかい?」
「えぇ、是非」
目を通してみるが輪廻にしては珍しく普通の新聞だ。
「マスター、これホントに輪廻?」
「あっ、輪廻にしては珍しく普通だなとか思った?」
「えぇ」
「何かね。首なしライダーのことを書いた記者がね。不慮の事故で亡くなったらしいのよ。それで今回は喪に服すらしいよ」
「そうなんだ」
それで心霊系ではなく普通の感じなわけか。得られる情報は無さそうね。パラパラと一通り目を通してすぐに閉じた。温かいコーヒーを飲みながらフワフワの卵サンドに齧り付く。私の嗜好の時間を楽しんだ。
「マスター、勘定お願い」
「はいよ。ちょうどね。気をつけていってらっしゃい」
「行ってきまーす」
加賀美警察署の怪奇特別捜査課に入ると電話が鳴る。
「もしもし、怪奇特別捜査課の出雲です」
「出雲くん、大活躍だったそうだね。報告を頼むよ」
「明石副総監!?」
「何を驚いているのかね。この私が作った怪奇事件を捜査する専門部署なのだから私から電話があっても何も不思議ではあるまい。それとも都市伝説とでも思っていたのかな?」
「いえ、滅相もありません。報告させていただきます。一連の首なしライダー事件の顛末ですが走田一、鶴田啓吾、鶴田啓一の3人を殺したのは本物の首なしライダーではなく、首なしライダーを騙った轟翔でした。その轟翔も轟照美に絞殺されました」
「ふむふむ。それはおかしいな。そもそも轟照美に轟翔を殺すことは不可能だ。違うかね」
「えぇ、ですが警察は轟照美が最後の力を使い轟翔を殺したと結論づけましたので」
「私はね。君の見解を聞きたいんだよ。警察の見解が聞きたくて君に電話するわけが無かろう」
「えっ、私の見解ですか!?僭越ながら轟照美が幽体離脱をして、これ以上弟である轟翔に罪を重ねさせないために殺したと考えています」
「素晴らしい答えだ。心霊の存在が確かにそこに存在したということなんだからねぇ。引き続きよろしく頼むよ」
「はい」
ガチャ、ツーツーツー。
電話が終わるとドアが開いて誰かが入ってくる。
「柊管理官!?」
「そんなに身構えなくても良いわよ。副総監からね。頼まれごとしてたから寄っただけなんだ・か・ら」
この後ろにつく擬音はうっふーんだ。でも色気を使う相手が違わないだろうか?女の私に使っても何も響かないし新しい扉が開いたりもしない。
「あら~連れないのね美和ちゃんは」
「あっすいません。そういうのには疎くて」
「あら~そうなのね~恋は良いわよん。女を美しくするから」
これ以上美しくならないでください美魔女さんという言葉は飲み込んでおく。
「これね。怪奇特別捜査課の心霊ファイルね」
「はっ?」
「今回の首なしライダー時間における顛末と美和ちゃんの見解を纏めてファイリングすること。それから今後の事件に関してもそうしていきなさいって事らしいわよん」
「はぁ」
「じゃあ、頑張ってね。出雲美和警視」
クネクネと身体を揺らしながら去っていく柊管理官であった。

その頃、輪廻新聞社による社員の通夜の席では、ヤバいことが起こっていた。
「おいおいおいマジかよ」
「こんなことって」
「いやぁーーーーーーーーーー」
首なしライダーのことを書いていた男の死体から首が忽然と消えたのだ。まるで首なしライダーはまだ生きていると主張するみたいに。そうこのライターの男も元走り屋だったのだ。奇しくも走り屋だった男から首が消える。かつて、久根高校の掲示板に書かれていた。首なしライダーは、走り屋を恨んでいる。轟翔によって、何気なく書かれた文章は奇しくも的を得ていたのである。
「ニクイ、ニクイ、ヨシエヲコロシタハシリヤガニクイ」
かつて警察が一斉検挙した走り屋たちの首がない死体が見つかるという事件の後、忽然と首なしライダーの噂が消えるのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

支配するなにか

結城時朗
ミステリー
ある日突然、乖離性同一性障害を併発した女性・麻衣 麻衣の性格の他に、凶悪な男がいた(カイ)と名乗る別人格。 アイドルグループに所属している麻衣は、仕事を休み始める。 不思議に思ったマネージャーの村尾宏太は気になり 麻衣の家に尋ねるが・・・ 麻衣:とあるアイドルグループの代表とも言える人物。 突然、別の人格が支配しようとしてくる。 病名「解離性同一性障害」 わかっている性格は、 凶悪な男のみ。 西野:元国民的アイドルグループのメンバー。 麻衣とは、プライベートでも親しい仲。 麻衣の別人格をたまたま目撃する 村尾宏太:麻衣のマネージャー 麻衣の別人格である、凶悪な男:カイに 殺されてしまう。 治療に行こうと麻衣を病院へ送る最中だった 西田〇〇:村尾宏太殺害事件の捜査に当たる捜一の刑事。 犯人は、麻衣という所まで突き止めるが 確定的なものに出会わなく、頭を抱えて いる。 カイ :麻衣の中にいる別人格の人 性別は男。一連の事件も全てカイによる犯行。 堀:麻衣の所属するアイドルグループの人気メンバー。 麻衣の様子に怪しさを感じ、事件へと首を突っ込んでいく・・・ ※刑事の西田〇〇は、読者のあなたが演じている気分で読んで頂ければ幸いです。 どうしても浮かばなければ、下記を参照してください。 物語の登場人物のイメージ的なのは 麻衣=白石麻衣さん 西野=西野七瀬さん 村尾宏太=石黒英雄さん 西田〇〇=安田顕さん 管理官=緋田康人さん(半沢直樹で机バンバン叩く人) 名前の後ろに来るアルファベットの意味は以下の通りです。 M=モノローグ (心の声など) N=ナレーション

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

virtual lover

空川億里
ミステリー
 人気アイドルグループの不人気メンバーのユメカのファンが集まるオフ会に今年30歳になる名願愛斗(みょうがん まなと)が参加する。  が、その会を通じて知り合った人物が殺され、警察はユメカを逮捕する。  主人公達はユメカの無実を信じ、真犯人を捕まえようとするのだが……。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―

至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。 二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。 彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。 信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。 歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。 幻想、幻影、エンケージ。 魂魄、領域、人類の進化。 802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。 さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。 私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...