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怪奇事件特別捜査課
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昨今の怪奇事件に対応するため警察庁は、怪奇事件特別捜査課、通称怪奇課を設立した。これから全国に普及するその一環として、怪奇事件の発生が極端に多い丑の刻市にある加賀美警察署に先んじて設置する。その課長に本日付で就任した出雲美和警視。24歳で警視になった若手のキャリア組だ。電車に乗る直前に買った朝刊を片手に、行きつけの珈琲屋に向かう。
「マスター、いつもの」
「美和ちゃん、ブレンドコーヒーと卵サンドのセットだね。はいよ」
コーヒーを片手に新聞に目を通す。
「面白い話は無いわね」
スラスラとページを捲り最後のページに目が止まる。
「何々、首なしライダー現る!ですって。最高じゃない」
「興奮してどうしたの美和ちゃん?」
「マスター騒いじゃってごめんね」
「コーヒーのおかわりは?」
「もらいまーす」
マスターがコーヒーポットを持って、カップに注いでくれる。
「あぁその事件かい。朝方に久根峠で首の無い死体が見つかったらしくてね。ほんと怖い話だよ。でもよりによって、首なしライダーだなんて、報道も相変わらずだね」
「その言い方だとマスターは首なしライダーは信じてない?」
「美和ちゃん、首なしライダーは都市伝説だよ。実在するわけないじゃないか」
「都市伝説ねぇ」
「美和ちゃんは、ひょっとして本当に首なしライダーがやったとでも思ってるのかい?」
「さぁどうでしょう」
「おじさんを揶揄わないでよ」
マスターは、それだけ言うとカウンターに戻って行った。
「首なしライダーねぇ。本物か?はたまた誰かの作為的なものか?どちら、かしらねぇ」
美和は小さく呟く。その時携帯が鳴り響く。
「はい、出雲美和です」
「やっと繋がったよ~。今どこかな?」
「佐々木一課長、何かありましたか?」
「久根峠で首のない死体が見つかったことは知ってるかな?」
「先程、新聞で拝見しました」
「あちゃ~、情報統制も虚しく載っちゃってたのね。どうせ輪廻でしょ」
「ハハハ、よくお分かりで」
「まぁ、知ってるなら話が早い。一課はこの事件を怪奇事件と認定。怪奇特別捜査課に引き継ぐことになったから。少し早いけど今から来てもらえるかな?」
「了解しました。向かいます」
ツーツーと電話が切れる。
「マスター、急用みたいだからここにお金置いとくね」
「あいよって、多いよ美和ちゃん」
「いつも世話になってるから取っといて」
「ありがとよ。行ってらっしゃい」
「行ってきまーす」
美和はそう言うと加賀美警察署に向かう。
「やっときやがった」
やれやれと言った顔で美和を見るガサツな大男は捜査一課の刑事で警部補の不動太郎だ。
「不動、貴方ね。階級が上の人に対しての言葉じゃないわよ」
「うるせぇ。うるせぇ。同期に敬語なんか使えるかっての。佐々木一課長、出雲警視が来ました」
「待ってたよ~これが一応現場検証と司法解剖の結果と被害者の持ち物ね。それじゃあ、頼んだよ。あぁ、忙しい忙しい」
佐々木一課長はそう言うと額の汗をハンカチで拭いてさっさと戻って行った。
「じゃあな、せいぜい頑張れよ。出雲」
「貴方ねぇ」
「お前と違って、一課はたくさんの殺人事件抱えてんの。関係者全員が首なしライダーの仕業だとか言う意味不明な案件は怪奇課に任せることにするぜ」
そう吐き捨て、不動は去っていく。
美和は、資料の入った段ボールを抱えて、怪奇事件特別捜査課と書かれた部屋に入る。
「ゴホッゴホッ」
入った瞬間、積もり積もった埃に襲われる。
「これは掃除からかしらね」
美和はそう呟くとゴーグルとマスクを付け、埃叩きで埃を落とし、掃除機で埃を吸い、モップがけをした。
「良し、綺麗になったわね」
ピカピカになった部屋の机に資料を広げて目を通す。
現場検証では、数多くのバイク跡があることから現場に複数人いたことは間違いないそうだ。恐らく関係者とされる走り屋チーム、ファウストのメンバーだろう。司法解剖の結果では、身体には傷痕一つなく、首を切られたにしては血の量が少ないがまず間違いなく首を切られたことによる失血死だろうとのことだ。持ち物は財布と免許証と学生証。
「待って、この年頃の人間が携帯を持っていないなんてことがあるかしら?」
そう呟いたがそもそもここには美和しか居ない。何も返ってこない。気を取り直して、得られる情報を集める。被害者の免許証から名前は、走田一17歳であることがわかった。それに学生証から久根高等学校に在籍していることがわかった。
「明日は、現場に足を運んで、被害者の周辺をメインに探りましょう」
美和の独り言が虚しく響き渡る。
「どんだけ独り言、言ってんだよ」
「不動、何しに来たのよ」
「ほらよ。差し入れのミルクコーヒーだ」
「私はブラックしか飲まないわよ。喧嘩売ってんのかしら」
「バレたか」
「貴方ねぇ。そんなんだからモテないのよ」
「はっ?バリバリモテてるし、今日も今から合コンだし」
「一課は他の殺人事件で、忙しいんじゃなかったかしら」
「やっべ、じゃあな」
「アイツと関わると碌なことがないわね。全く」
さっ今日はこれぐらいにして、家に帰るとしましょう。
帰りにコンビニで、ビールを買い帰路に着く。
家に帰りお風呂でさっぱりした後、ビールに合うおつまみを作り、軽く食事を済ませて、ベッドに入り「おやすみなさーい」と眠りにつく。
「マスター、いつもの」
「美和ちゃん、ブレンドコーヒーと卵サンドのセットだね。はいよ」
コーヒーを片手に新聞に目を通す。
「面白い話は無いわね」
スラスラとページを捲り最後のページに目が止まる。
「何々、首なしライダー現る!ですって。最高じゃない」
「興奮してどうしたの美和ちゃん?」
「マスター騒いじゃってごめんね」
「コーヒーのおかわりは?」
「もらいまーす」
マスターがコーヒーポットを持って、カップに注いでくれる。
「あぁその事件かい。朝方に久根峠で首の無い死体が見つかったらしくてね。ほんと怖い話だよ。でもよりによって、首なしライダーだなんて、報道も相変わらずだね」
「その言い方だとマスターは首なしライダーは信じてない?」
「美和ちゃん、首なしライダーは都市伝説だよ。実在するわけないじゃないか」
「都市伝説ねぇ」
「美和ちゃんは、ひょっとして本当に首なしライダーがやったとでも思ってるのかい?」
「さぁどうでしょう」
「おじさんを揶揄わないでよ」
マスターは、それだけ言うとカウンターに戻って行った。
「首なしライダーねぇ。本物か?はたまた誰かの作為的なものか?どちら、かしらねぇ」
美和は小さく呟く。その時携帯が鳴り響く。
「はい、出雲美和です」
「やっと繋がったよ~。今どこかな?」
「佐々木一課長、何かありましたか?」
「久根峠で首のない死体が見つかったことは知ってるかな?」
「先程、新聞で拝見しました」
「あちゃ~、情報統制も虚しく載っちゃってたのね。どうせ輪廻でしょ」
「ハハハ、よくお分かりで」
「まぁ、知ってるなら話が早い。一課はこの事件を怪奇事件と認定。怪奇特別捜査課に引き継ぐことになったから。少し早いけど今から来てもらえるかな?」
「了解しました。向かいます」
ツーツーと電話が切れる。
「マスター、急用みたいだからここにお金置いとくね」
「あいよって、多いよ美和ちゃん」
「いつも世話になってるから取っといて」
「ありがとよ。行ってらっしゃい」
「行ってきまーす」
美和はそう言うと加賀美警察署に向かう。
「やっときやがった」
やれやれと言った顔で美和を見るガサツな大男は捜査一課の刑事で警部補の不動太郎だ。
「不動、貴方ね。階級が上の人に対しての言葉じゃないわよ」
「うるせぇ。うるせぇ。同期に敬語なんか使えるかっての。佐々木一課長、出雲警視が来ました」
「待ってたよ~これが一応現場検証と司法解剖の結果と被害者の持ち物ね。それじゃあ、頼んだよ。あぁ、忙しい忙しい」
佐々木一課長はそう言うと額の汗をハンカチで拭いてさっさと戻って行った。
「じゃあな、せいぜい頑張れよ。出雲」
「貴方ねぇ」
「お前と違って、一課はたくさんの殺人事件抱えてんの。関係者全員が首なしライダーの仕業だとか言う意味不明な案件は怪奇課に任せることにするぜ」
そう吐き捨て、不動は去っていく。
美和は、資料の入った段ボールを抱えて、怪奇事件特別捜査課と書かれた部屋に入る。
「ゴホッゴホッ」
入った瞬間、積もり積もった埃に襲われる。
「これは掃除からかしらね」
美和はそう呟くとゴーグルとマスクを付け、埃叩きで埃を落とし、掃除機で埃を吸い、モップがけをした。
「良し、綺麗になったわね」
ピカピカになった部屋の机に資料を広げて目を通す。
現場検証では、数多くのバイク跡があることから現場に複数人いたことは間違いないそうだ。恐らく関係者とされる走り屋チーム、ファウストのメンバーだろう。司法解剖の結果では、身体には傷痕一つなく、首を切られたにしては血の量が少ないがまず間違いなく首を切られたことによる失血死だろうとのことだ。持ち物は財布と免許証と学生証。
「待って、この年頃の人間が携帯を持っていないなんてことがあるかしら?」
そう呟いたがそもそもここには美和しか居ない。何も返ってこない。気を取り直して、得られる情報を集める。被害者の免許証から名前は、走田一17歳であることがわかった。それに学生証から久根高等学校に在籍していることがわかった。
「明日は、現場に足を運んで、被害者の周辺をメインに探りましょう」
美和の独り言が虚しく響き渡る。
「どんだけ独り言、言ってんだよ」
「不動、何しに来たのよ」
「ほらよ。差し入れのミルクコーヒーだ」
「私はブラックしか飲まないわよ。喧嘩売ってんのかしら」
「バレたか」
「貴方ねぇ。そんなんだからモテないのよ」
「はっ?バリバリモテてるし、今日も今から合コンだし」
「一課は他の殺人事件で、忙しいんじゃなかったかしら」
「やっべ、じゃあな」
「アイツと関わると碌なことがないわね。全く」
さっ今日はこれぐらいにして、家に帰るとしましょう。
帰りにコンビニで、ビールを買い帰路に着く。
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