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丘の上の大きな木1
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ある丘の上に一本だけ目立つほど大きな木がありました。
その木は不思議な木で、年中いろいろな実をつけます。
その木はとても優しい木で、鳥たちや、小さな動物たちに実を分け与えていました。
傷をおった動物たちが傷を癒す場でもありました。
雨の日も、嵐の日も、大きな木は一生懸命、動物たちの巣や休んでいる動物を、体を張って守ります。
ある日、とても傷ついた鳥が空から落ちてきました。
大きな鳥におそわれて、ようやくたどり着いたのでしょうか。
枝に引っかかったときにはもう命の灯火が消えそうなほどでした。
大きな木は、その鳥を一生懸命治してあげようと思いました。
大きな木は木の葉で鳥のためにベッドを作ってあげ、葉のついた枝で雨や風から守ってあげました。
大きな木は言いました。
「私があなたを守りましょう 。おなかがすいたのなら果実をついばみなさい。今は何も考えずに、ゆっくりと傷を癒すのですよ」
鳥は大きな木の優しい行いに少しずつ元気になりました。
大きな木は言いました。
「傷が癒えたのなら飛び立ちなさい。私はここから動けない。でもあなたをいつも想っている。あなたをいつも心配している。私はいつも命を分け与えている。もし近くにいて嵐が来たのならここに来なさい。嵐が去るまで守ってあげよう」
鳥は言いました。
「大きな木さん。でももうあなたはたくさんの嵐にあって、傷ついていますよ」
大きな木は言いました。
「ぼろぼろになっても大丈夫。私は根のあるかぎり、どんなことになってもまた枝を伸ばしたり葉や実をつけたりすることができる。鳥さん、いつも私がここにいることを忘れないで。私はいつもここにいる。しっかりと根を張っているのだから」
鳥は言いました。
「大きな木さん。僕には幸せがあります。この大空を旅して色々なものを見て回ることです。僕には小さいけれど翼があります。僕は大人になったばかりだから、色々わからないことが多いけれど、仲間の話じゃ、大きな宮殿や、信じられないほど大きな生き物や、この世のものとは思えないほど美しい石があるというんだ」
大きな木は言いました。
「小さな翼で空を羽ばたくことがあなたの幸せなのですね。もう少しであなたは羽ばたくことができます。大空には危険がたくさんあるとたくさんの鳥たちは言います。気をつけるのですよ」
鳥は言いました。
「大きな木さんは飛べないの?空を飛べたら楽しいのに」
鳥が言うと大きな木は言いました。
「ごらんなさい。あなたのまわりを。私にはたくさんの動物たちがいる。私を頼ってみんなここに来るのです。それに私はこの大地に根を張って生きています。根を張って生きるということは、すべてに感謝するということです。わたしにとって、土も空も風も、どれひとつなくなっても生きていけないのですから。あなた以外の鳥たちも、たくさんのつがいが巣をつくり、幸せそうに生きようとする。私はそれを見ているだけで幸せです」
鳥は「そうなんだ」と大きな木の果実をついばみながら言いました。
鳥は言いました。
「大きな木さん。僕の傷はもう癒えたよ。ありがとう。僕は旅に出なきゃいけないんだ。僕には翼があるからね」
そう言って、大きな木の果実をもう一つ、ついばんでから飛び立っていきました。
ある日、少女を連れた親子連れが大きな木の元に来ました。
少女は木を見上げて「大きいねママ」と言いました。
ママは少女に言いました。
「あんまり触ったり転がったりしちゃダメよ。大事な洋服が汚れてしまうし、手が汚くなるわ」
少女はママに言いました。
「この木は傷ついているところがたくさんあるよママ」
ママは少女の手を引きながら言いました。
「危ないからあまり近寄っちゃダメよ。折れた枝で怪我をしたらどうするの」
「うん」と言いながらママに手を引かれ、少女は大きな木から離れていきました。
少女はママに聞きました。
「ママはあたしが怪我をしたとき、たくさん心配してくれて、早く治ってねって言うけれど、どうしてママは、あの大きな木を心配したり、早く治ってねって言わないの?」
ママはにっこりと笑って言いました。
「ちゃんと心配しましたよ。ママはあの木が早く治りますようにって心で祈ったのだから」
もちろんママの言うことは嘘でした。
ママはこれっぽっちも思っていなかったのです。
少女の服や手が汚れていないか、とても気にしながら、大きな木から去っていきました。
その木は不思議な木で、年中いろいろな実をつけます。
その木はとても優しい木で、鳥たちや、小さな動物たちに実を分け与えていました。
傷をおった動物たちが傷を癒す場でもありました。
雨の日も、嵐の日も、大きな木は一生懸命、動物たちの巣や休んでいる動物を、体を張って守ります。
ある日、とても傷ついた鳥が空から落ちてきました。
大きな鳥におそわれて、ようやくたどり着いたのでしょうか。
枝に引っかかったときにはもう命の灯火が消えそうなほどでした。
大きな木は、その鳥を一生懸命治してあげようと思いました。
大きな木は木の葉で鳥のためにベッドを作ってあげ、葉のついた枝で雨や風から守ってあげました。
大きな木は言いました。
「私があなたを守りましょう 。おなかがすいたのなら果実をついばみなさい。今は何も考えずに、ゆっくりと傷を癒すのですよ」
鳥は大きな木の優しい行いに少しずつ元気になりました。
大きな木は言いました。
「傷が癒えたのなら飛び立ちなさい。私はここから動けない。でもあなたをいつも想っている。あなたをいつも心配している。私はいつも命を分け与えている。もし近くにいて嵐が来たのならここに来なさい。嵐が去るまで守ってあげよう」
鳥は言いました。
「大きな木さん。でももうあなたはたくさんの嵐にあって、傷ついていますよ」
大きな木は言いました。
「ぼろぼろになっても大丈夫。私は根のあるかぎり、どんなことになってもまた枝を伸ばしたり葉や実をつけたりすることができる。鳥さん、いつも私がここにいることを忘れないで。私はいつもここにいる。しっかりと根を張っているのだから」
鳥は言いました。
「大きな木さん。僕には幸せがあります。この大空を旅して色々なものを見て回ることです。僕には小さいけれど翼があります。僕は大人になったばかりだから、色々わからないことが多いけれど、仲間の話じゃ、大きな宮殿や、信じられないほど大きな生き物や、この世のものとは思えないほど美しい石があるというんだ」
大きな木は言いました。
「小さな翼で空を羽ばたくことがあなたの幸せなのですね。もう少しであなたは羽ばたくことができます。大空には危険がたくさんあるとたくさんの鳥たちは言います。気をつけるのですよ」
鳥は言いました。
「大きな木さんは飛べないの?空を飛べたら楽しいのに」
鳥が言うと大きな木は言いました。
「ごらんなさい。あなたのまわりを。私にはたくさんの動物たちがいる。私を頼ってみんなここに来るのです。それに私はこの大地に根を張って生きています。根を張って生きるということは、すべてに感謝するということです。わたしにとって、土も空も風も、どれひとつなくなっても生きていけないのですから。あなた以外の鳥たちも、たくさんのつがいが巣をつくり、幸せそうに生きようとする。私はそれを見ているだけで幸せです」
鳥は「そうなんだ」と大きな木の果実をついばみながら言いました。
鳥は言いました。
「大きな木さん。僕の傷はもう癒えたよ。ありがとう。僕は旅に出なきゃいけないんだ。僕には翼があるからね」
そう言って、大きな木の果実をもう一つ、ついばんでから飛び立っていきました。
ある日、少女を連れた親子連れが大きな木の元に来ました。
少女は木を見上げて「大きいねママ」と言いました。
ママは少女に言いました。
「あんまり触ったり転がったりしちゃダメよ。大事な洋服が汚れてしまうし、手が汚くなるわ」
少女はママに言いました。
「この木は傷ついているところがたくさんあるよママ」
ママは少女の手を引きながら言いました。
「危ないからあまり近寄っちゃダメよ。折れた枝で怪我をしたらどうするの」
「うん」と言いながらママに手を引かれ、少女は大きな木から離れていきました。
少女はママに聞きました。
「ママはあたしが怪我をしたとき、たくさん心配してくれて、早く治ってねって言うけれど、どうしてママは、あの大きな木を心配したり、早く治ってねって言わないの?」
ママはにっこりと笑って言いました。
「ちゃんと心配しましたよ。ママはあの木が早く治りますようにって心で祈ったのだから」
もちろんママの言うことは嘘でした。
ママはこれっぽっちも思っていなかったのです。
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