2 / 2
ただの学生
1話
しおりを挟む
こんな世界でも誰かは生きて、誰かは死ぬ。
それは誰だっていい。
僕は有象無象に数えられる人間の一人。
ただ、それだけ。
生きた分だけ幸せになれるファンタジーなんて誰も味わったことなどないだろう。
生きるというのはそういうものだから。
僕は、いつも通りつまらない朝に起こされ、目を覚ます。
飽きて着慣れた制服に袖を通し、空虚な空間に向かって一言。
「いってきます。」
僕の声は小さい。
自信や活力などというものは感じることはない。
鍵を閉め、一人寂しく道を行く。
とてもつまらない通学路。
猫が鳴く。
鳥が遊ぶ。
朝ごはんも食べる気になれない毎日だ。
いつも余裕がありすぎるくらいだ。
下を向き。
とぼとぼと歩く。
まだ涼し気な風が僕を誘惑するかのように、体を突き抜ける。
僕の横を何人もの人、自転車が通り過ぎる。
スマホを見ると、まだ十数分たったほどだ。
それなのに、それ以上の時間が流れたかのような虚無感に襲われる。
僕は、主人公になれない。
そして、村人Aでもない。
農民J程度の存在だろう。
どこにいても邪魔にならないが、どこにいても気にもされない。
僕が死んでも、悲しむ人はいない。
きっと、白い目で見られることだろう。
革命や、テロといった無駄なあがきは、無駄なあがきでしかない。
僕が存在することは、正しいことではないのかもしれない。
そんなことを思案しても、時は無情にも進み続けるのだ。
僕は、電車に揺られ、学校に向かう。
どこにでもある私立高校。
ある程度の勉強ができたために何とか通えている。
だが、学校では勉強ができるからと言ってもどうということはない。
正しく行動しても、表彰の賛美が送られるのは人気なものだ。
僕のような影のような存在には、光が当たったところで、消え去るだけだ。
当然の結果だろうか。
僕は、ただ生きている。
その程度の存在だろう。
だから、この世界が嫌になる。
頑張りを頑張りと認めてくれない。
努力を努力と評価しない。
ただの一度も、僕を見てくれはしない。
僕は、十代だ。
それでもこの世界のことは、学校に通うだけでもわかることだろう。
学校は一種の縮図だ。
多種多様な存在がいるが、団体行動を強要され、その中でも声の大きいものに首輪を引かれるように従うのだ。
僕は、学校に着けば、静かに自分の席に着く。
まるで、一日をループしているかのような錯覚を覚える。
一日を終えれば、また同じようにゆりかごのような歩みで、静かに自宅に向かう。
一人だけのあの空間は、自分にとって落ち着くところであると同時に、孤独感を圧倒的に感じさせてくれる場所である。
僕は、何をどこで間違ったのだろうか。
正しい選択はできるのだろうか。
会話する相手もいないので、脳内で思考を巡らせるだけで僕は、迷宮に閉じこもるのだ。
たまに、クラスの端のいじめかも、いじりかもわからない集団が羨ましくなる。
彼または彼らは、集団である。
それ故に、僕のような孤独感というのとは、かけ離れた空間にいることだろう。
本を読めば、何か物語に入り込み、孤独感が紛れるのかと思ったことがあった。
もちろん、一冊のみならず、数十冊読み終えてみた。
だが、結局は読者である僕は、独りなのだ。
物語の登場人物たちは彼らの仲間と出会い、別れ、終わりを迎える。
だが、僕はどうだろうか。
出会いなどない。
別れもない。
ただそこにいるだけだ。
僕は、授業で寝ることはない。
真面目に授業を受ける模範生だろうか。
課題も真面目に期限を守り、正しい正解に導く力がある。
成績は中程度。
心配の無い成績に心配の必要がない授業態度。
僕は、僕なりの努力を繰り返す。
おかげで、教師から叱られることはない。
一人寂しく授業を受け続ける。
クラスには、何人ものクラスメイトという仮面をかぶった人間が集まっている。
それでも、僕だけはその仮面を受け取れなかったのだろう。
無視されているわけでも、存在を亡き者にされているわけじゃない。
彼らにとって本当の空気。
それが僕なのだろう。
頭の中では、様々な思考を巡らせ苦労を重ねるが、それ以上の行動力はない。
動けやしない石像に見物客は来るが、それ以上の評価は、よほどのもの好きがするのだ。
こんな一般的な学校にそのようなもの好きがいるはずもない。
当たり前な話だ。
僕は、一日岩のように静かに授業を受け、速やかに帰宅をする。
まるで何者かに操られるように、行動に工夫はない。
帰り道も変わり映えしない。
来た道をそのまま帰るだけ。
ただそれだけだ。
一日通して言えることは一言。
『つまらない。』
退屈なのだ。
毎日を必死に生きているはずなのに、広い目で見渡せば、僕以上の人など、五万といる。
僕よりも酷い者も同じくだ。
自宅のカギを開け。
静かにベットに横になれば、いつものように一人、部屋に響き渡るほどの声で笑うのだ。
目からは、涙を流しながら。
何が辛いのかも、何がしたかったかもよくわからない。
他人となにも違わないはずなのに、僕だけが一人だ。
この胸の空きをどうやって埋めればいいのかもわからない。
入学したてのあの頃に戻れたところで、今の僕には成す術がない。
僕は、他人に縋り助けを求めたいが、その他人がいないのだ。
笑えてしまう。
とてもバカらしい。
だから、僕はひとしきり狂えば、冷静に本棚の本を読む。
目をただ文字の流れに沿って動かすだけの単純作業。
こうして毎日を過ごすのだ。
もうすでに、僕はおかしくなっているのだとわかっている。
それは誰だっていい。
僕は有象無象に数えられる人間の一人。
ただ、それだけ。
生きた分だけ幸せになれるファンタジーなんて誰も味わったことなどないだろう。
生きるというのはそういうものだから。
僕は、いつも通りつまらない朝に起こされ、目を覚ます。
飽きて着慣れた制服に袖を通し、空虚な空間に向かって一言。
「いってきます。」
僕の声は小さい。
自信や活力などというものは感じることはない。
鍵を閉め、一人寂しく道を行く。
とてもつまらない通学路。
猫が鳴く。
鳥が遊ぶ。
朝ごはんも食べる気になれない毎日だ。
いつも余裕がありすぎるくらいだ。
下を向き。
とぼとぼと歩く。
まだ涼し気な風が僕を誘惑するかのように、体を突き抜ける。
僕の横を何人もの人、自転車が通り過ぎる。
スマホを見ると、まだ十数分たったほどだ。
それなのに、それ以上の時間が流れたかのような虚無感に襲われる。
僕は、主人公になれない。
そして、村人Aでもない。
農民J程度の存在だろう。
どこにいても邪魔にならないが、どこにいても気にもされない。
僕が死んでも、悲しむ人はいない。
きっと、白い目で見られることだろう。
革命や、テロといった無駄なあがきは、無駄なあがきでしかない。
僕が存在することは、正しいことではないのかもしれない。
そんなことを思案しても、時は無情にも進み続けるのだ。
僕は、電車に揺られ、学校に向かう。
どこにでもある私立高校。
ある程度の勉強ができたために何とか通えている。
だが、学校では勉強ができるからと言ってもどうということはない。
正しく行動しても、表彰の賛美が送られるのは人気なものだ。
僕のような影のような存在には、光が当たったところで、消え去るだけだ。
当然の結果だろうか。
僕は、ただ生きている。
その程度の存在だろう。
だから、この世界が嫌になる。
頑張りを頑張りと認めてくれない。
努力を努力と評価しない。
ただの一度も、僕を見てくれはしない。
僕は、十代だ。
それでもこの世界のことは、学校に通うだけでもわかることだろう。
学校は一種の縮図だ。
多種多様な存在がいるが、団体行動を強要され、その中でも声の大きいものに首輪を引かれるように従うのだ。
僕は、学校に着けば、静かに自分の席に着く。
まるで、一日をループしているかのような錯覚を覚える。
一日を終えれば、また同じようにゆりかごのような歩みで、静かに自宅に向かう。
一人だけのあの空間は、自分にとって落ち着くところであると同時に、孤独感を圧倒的に感じさせてくれる場所である。
僕は、何をどこで間違ったのだろうか。
正しい選択はできるのだろうか。
会話する相手もいないので、脳内で思考を巡らせるだけで僕は、迷宮に閉じこもるのだ。
たまに、クラスの端のいじめかも、いじりかもわからない集団が羨ましくなる。
彼または彼らは、集団である。
それ故に、僕のような孤独感というのとは、かけ離れた空間にいることだろう。
本を読めば、何か物語に入り込み、孤独感が紛れるのかと思ったことがあった。
もちろん、一冊のみならず、数十冊読み終えてみた。
だが、結局は読者である僕は、独りなのだ。
物語の登場人物たちは彼らの仲間と出会い、別れ、終わりを迎える。
だが、僕はどうだろうか。
出会いなどない。
別れもない。
ただそこにいるだけだ。
僕は、授業で寝ることはない。
真面目に授業を受ける模範生だろうか。
課題も真面目に期限を守り、正しい正解に導く力がある。
成績は中程度。
心配の無い成績に心配の必要がない授業態度。
僕は、僕なりの努力を繰り返す。
おかげで、教師から叱られることはない。
一人寂しく授業を受け続ける。
クラスには、何人ものクラスメイトという仮面をかぶった人間が集まっている。
それでも、僕だけはその仮面を受け取れなかったのだろう。
無視されているわけでも、存在を亡き者にされているわけじゃない。
彼らにとって本当の空気。
それが僕なのだろう。
頭の中では、様々な思考を巡らせ苦労を重ねるが、それ以上の行動力はない。
動けやしない石像に見物客は来るが、それ以上の評価は、よほどのもの好きがするのだ。
こんな一般的な学校にそのようなもの好きがいるはずもない。
当たり前な話だ。
僕は、一日岩のように静かに授業を受け、速やかに帰宅をする。
まるで何者かに操られるように、行動に工夫はない。
帰り道も変わり映えしない。
来た道をそのまま帰るだけ。
ただそれだけだ。
一日通して言えることは一言。
『つまらない。』
退屈なのだ。
毎日を必死に生きているはずなのに、広い目で見渡せば、僕以上の人など、五万といる。
僕よりも酷い者も同じくだ。
自宅のカギを開け。
静かにベットに横になれば、いつものように一人、部屋に響き渡るほどの声で笑うのだ。
目からは、涙を流しながら。
何が辛いのかも、何がしたかったかもよくわからない。
他人となにも違わないはずなのに、僕だけが一人だ。
この胸の空きをどうやって埋めればいいのかもわからない。
入学したてのあの頃に戻れたところで、今の僕には成す術がない。
僕は、他人に縋り助けを求めたいが、その他人がいないのだ。
笑えてしまう。
とてもバカらしい。
だから、僕はひとしきり狂えば、冷静に本棚の本を読む。
目をただ文字の流れに沿って動かすだけの単純作業。
こうして毎日を過ごすのだ。
もうすでに、僕はおかしくなっているのだとわかっている。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
あなたと私のウソ
コハラ
ライト文芸
予備校に通う高3の佐々木理桜(18)は担任の秋川(30)のお説教が嫌で、余命半年だとウソをつく。秋川は実は俺も余命半年だと打ち明ける。しかし、それは秋川のついたウソだと知り、理桜は秋川を困らせる為に余命半年のふりをする事になり……。
――――――
表紙イラストはミカスケ様のフリーイラストをお借りしました。
http://misoko.net/

"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。
青花美来
ライト文芸
目が覚めたら、病院のベッドの上だった。
大怪我を負っていた私は、その時全ての記憶を失っていた。
私はどうしてこんな怪我をしているのだろう。
私は一体、どんな人生を歩んできたのだろう。
忘れたままなんて、怖いから。
それがどんなに辛い記憶だったとしても、全てを思い出したい。
第5回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
イチゴ
高本 顕杜
ライト文芸
イチゴが落ちていく――、そのイチゴだけは!!
イチゴ農家の陽一が丹精込めて育てていたイチゴの株。その株のイチゴが落ちていってしまう――。必至で手を伸ばしキャッチしようとするも、そこへあるのモノが割りこんできて……。
だからって、言えるわけないだろ
フドワーリ 野土香
ライト文芸
〈あらすじ〉
谷口夏芽(28歳)は、大学からの親友美佳の結婚式の招待状を受け取っていた。
夏芽は今でもよく大学の頃を思い出す。なぜなら、その当時夏芽だけにしか見えない男の子がいたからだ。
大学生になって出会ったのは、同じ大学で共に学ぶはずだった男の子、橘翔だった。
翔は入学直前に交通事故でこの世を去ってしまった。
夏芽と翔は特別知り合いでもなく無関係なのに、なぜだか夏芽だけに翔が見えてしまう。
成仏できない理由はやり残した後悔が原因ではないのか、と夏芽は翔のやり残したことを手伝おうとする。
果たして翔は成仏できたのか。大人になった夏芽が大学時代を振り返るのはなぜか。
現在と過去が交差する、恋と友情のちょっと不思議な青春ファンタジー。
〈主要登場人物〉
谷口夏芽…一番の親友桃香を事故で亡くして以来、夏芽は親しい友達を作ろうとしなかった。不器用でなかなか素直になれない性格。
橘翔…大学入学を目前に、親友真一と羽目を外しすぎてしまいバイク事故に遭う。真一は助かり、翔だけがこの世を去ってしまう。
美佳…夏芽とは大学の頃からの友達。イケメン好きで大学の頃はころころ彼氏が変わっていた。
真一…翔の親友。事故で目を負傷し、ドナー登録していた翔から眼球を譲られる。翔を失ったショックから、大学では地味に過ごしていた。
桃香…夏芽の幼い頃からの親友。すべてが完璧で、夏芽はずっと桃香に嫉妬していた。中学のとき、信号無視の車とぶつかりこの世を去る。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】誕生日の奇跡
三園 七詩
ライト文芸
赤ちゃんの頃から双子のように育ったユウジとカズヤ家も隣同士で幼稚園の頃からずっと一緒。
お互いが親友と自他ともに認め会う中の二人に突然の別れが訪れた。
昔に書いた話を新たに書き直しました。
スパイスカレー洋燈堂 ~裏路地と兎と錆びた階段~
桜あげは
ライト文芸
入社早々に躓く気弱な新入社員の楓は、偶然訪れた店でおいしいカレーに心を奪われる。
彼女のカレー好きに目をつけた店主のお兄さんに「ここで働かない?」と勧誘され、アルバイトとして働き始めることに。
新たな人との出会いや、新たなカレーとの出会い。
一度挫折した楓は再び立ち上がり、様々なことをゆっくり学んでいく。
錆びた階段の先にあるカレー店で、のんびりスパイスライフ。
第3回ライト文芸大賞奨励賞いただきました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる