おいしい毒の食べ方。

惰眠

文字の大きさ
上 下
10 / 14
カレー

しおりを挟む
 僕は、彼女の笑顔につられるように彼女の前の席に座る。

「お仕事、大変ですか?」

「そうでもないよ。」

「無理は、しないでくださいね?」

「ありがとう。」

 彼女のその気配りが、僕の頑張りに繋がっていると思う。
 もう、若者ではいられない体ではあるが、彼女のお陰で無茶をできているような気がする。
 最後のひと踏ん張りに力が入る、そのような感じだ。

「午前中は何をしたの?」

「お洗濯を済ませて、軽く掃除をしてたら…何か届いたの。忘れていました。」

 彼女は、何かを思い出し、奥から長方形の箱を持ってきた。
 少し重そうだ。

 箱には割れ物注意の張り紙がしてある。

「開けてみるね。」

「お願い。」

 彼女は、鋏を持ち箱についていた包装を解く。

 箱を開けると、そこには三本のワインが入っていた。

 恐らく彼女の両親からだろう。

 彼女の実家は少し裕福な部類に入る。
 彼女の実家からは、たまに、おいしいお菓子やワインなんかが届くため、夫婦そろって感謝している。

「ごめんなさい。お母さんからのチャット確認してなかったみたい。」

「お義母さんからは、なんて?」

「ワイン、送っときます。よかったら二人で飲んでみてください。だって。」

「お義母さんらしい文章だね。」

「ですね。」

 彼女は、微笑む。
 とてもきれいな笑顔だ。

「感謝伝えといてくれる?」

「は~い。」

 彼女が、チャットを送って数秒してすぐに返信が返ってくる。

「みてみて?」

 彼女が自身のスマホのチャットを見せてくる。

 そこには、彼女の感謝の文章の後にお義母さんから一つスタンプが返ってきていた。

「面白いスタンプだね。」

 思わず、僕は笑う。
 彼女もつられるように笑ってくれる。

「ですね。」

 送られてきたスタンプは、ブサ可愛い猫が了解と一言、言ってるものだった。
 かわいさもあるが面白さというものも兼ね備えたそれに、笑いが込み上げて来た。

 彼女のお義母さんは、文章が固い方だ。
 だが、それを分かっていてか、たまに面白いスタンプを送ってくれる。

 僕たちの間では、たまにそれを見るのが楽しみになっている。

「あけます?」

 三本並んだワインから右の一本を手に取り、彼女が僕に聞く。

「お風呂に入ってからにしようか。」

「ですね。」

 僕たちは、それぞれ順番に風呂に浸かることにした。

 僕は、今日一日、仕事のためにパソコンに向き続けいた。
 そのため、いつ寝てしまうかわからないので、先に入ることは正解だと思った。

 僕は、さっぱりした面持ちで冷蔵庫からおつまみになりそうなものを探し出し、簡単な料理を作る。

 彼女が風呂から上がるまでの少しの時間で、簡単に数品を作って待つ。

 彼女が風呂から上がってきた。

 いよいよ、待ちに待ったワインの時間だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R15】メイド・イン・ヘブン

あおみなみ
ライト文芸
「私はここしか知らないけれど、多分ここは天国だと思う」 ミステリアスな美青年「ナル」と、恋人の「ベル」。 年の差カップルには、大きな秘密があった。

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

四年目の裏切り~夫が選んだのは見知らぬ女性~

杉本凪咲
恋愛
結婚四年。 仲睦まじい夫婦だと思っていたのは私だけだった。 夫は私を裏切り、他の女性を選んだ。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

所詮私はお飾りの妻だったのですね

杉本凪咲
恋愛
私はお飾りの妻だった。 パーティー会場で離婚を告げられた時、私はそれを痛感する。 彼が愛したのは、私よりも美しい公爵令嬢。 それは結婚して一年が経った日の出来事だった。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...