おいしい毒の食べ方。

惰眠

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シチュー

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 僕は、自分の皿をシンクに置き、洗う。

 僕は、彼女がまだ食べているところを微笑ましく見つめながら皿を洗う。

 彼女は、食事をするときも一生懸命だ。
 僕は、まるで小動物のリスやハムスターを見ている気分になる。

 洗い終わると、きまって彼女の前に向かって座る。

 仕事はなるべく自宅に持ち込まない主義の僕は、横に置いた本を手に取る。

「おいしい?」

「おいしいですよ。」

 彼女が作ったはずなのに、僕が作ったかのように満面の笑みで答える。

「今日は何したの?」

「お風呂の掃除とトイレの掃除を頑張ってみたの、あとで見てみてくださいね。」

「楽しみにしとくよ。」

 彼女は、ごちそうさまでしたと丁寧に手を合わせると、皿を洗い出す。

 シンクに流れる音を片耳に入れながら、小説を読み進める。

 まだまだ序盤の何の変哲もない夫婦の会話だ。

 この登場人物たちの設定は何の変哲もないよくあるものだ。

 幼馴染がいつか結婚してからのお話。

 ざっくりとしたあらすじは、噂によって耳に入っている。
 きっと来月にはドラマが始まるはずだ。

 同僚に勧められるままに勝った小説だったが、夫婦という一点だけの簡単な共通点に惹かれて本を手に取ってしまった。

 半分読み進めるまでは、まだ時間がかかりそうだ。

 僕、シンクからの音が止まったのを確認して彼女のほうを向く。

「ねぇ、この小説どうだった?」

「まだ、あまり読めてないの。ごめんなさいね。」

「この夫婦。なんか似てるね。」

「私たちに?」

「なんかね。」

「ちょっとわかるかも。」

「ありがとう。」

 そんな他愛もない会話を、今日も繰り広げる。

 短い夜のゆったりとしたこの時間が幸せだ。

 僕は、彼女の結ばれた髪が解かれるのを見て、心から感謝の気持ちを表す。

「おつかれさま。」

「ありがと。」

 テレビをつける。

 今日のニュース。
 明日の天気。

 少しの情報を受け取って、チャンネルを変える。

 バラエティや、ドラマなんかが映るが面白さに欠ける気がした。

 彼女とともに、何を見ようかと話して見るものを決める。

 一緒にクイズ番組を見て、お互いどっちの正解が一番多いのかを競ってみる。

 間違えば盛大に悔しがり、正解すれば喜んだ。

 そして、残された夜を楽しんだ。


 綺麗に洗われた風呂で体を洗い、リビングで水を一杯飲む。

 交代するように彼女が風呂に向かう。

 そうこうして、僕たちの夜を過ごし、眠りについた。
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