おいしい毒の食べ方。

惰眠

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プロローグ

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 僕たちが結婚して三年ほど経った。

 僕の名前は、佐藤(さとう) 克己(かつみ)。
 大手とまではいかないが、それなりの会社に勤める三十代後半の男だ。

 妻は、旧姓川上(かわかみ) 勇気(ゆうき)。
 もともとは、大学の顔見知り程度だったが、久しぶりの仲間内の集まりで出会って意気投合。
 今では、昔よりも進んだ関係となっている。

 お互いに、外見は良くも悪くもないが、よい出会いというものに巡り合わなかった。
 そこが唯一の共通点といったところだろう。

 お互い愚痴を言いあう仲となり、気づけば付き合い、入籍していた。

 僕は、彼女の好みの点を挙げるとしたら、数えきれないほどだ。
 きっと、彼女も同じくだろう。

 彼女は、入籍後に心労の多い仕事に勤める私のためを思って、専業主婦となった。
 あまり、僕は勧めなかったが彼女に押し負けたという形だろうか。
 今では、うれしい限りだ。

 いつも帰ると妻がいて、温かい料理が待っている。
 たまに、僕の帰りが遅いと、眠たい目をこすりながらも迎えてくれる姿が愛らしいものだ。

 そんな彼女の好きな点を唯一としてあげるなら、料理だろうか。
 彼女の作る料理は、いつも私のためを思った強く刺激的でそして、優しいものだ。

 僕が帰るたびに、必ずと言っていいほど新しい料理が食卓に並んでいた。
 一週間ほどでメニューが被ることは、ほとんどないのだ。

 彼女の料理は特徴的で、褒めるところしか見つからない。
 きっと、彼女以外の女性にはこの料理は作れないはずだ。

 僕は、熱いのかも冷たいのかも、辛いのかも甘いのかもわからない。
 そんな初めての料理がほぼ毎日と言っていいほど僕の目の前に並ぶ。

 そして、一緒に食べるのだ。
 飽きることのない、この時間を。

 毎日のように。

 僕は、仕事をしている時もこの時を待ち望んでいる。
 早く帰りたいという思いが先走るあまり、たまに仕事上でミスをするが、彼女のお陰で何とか頑張れている。

 僕は、我が家に帰る。

 思い切って買った一軒家だ。

 この玄関を開ければいつも通り彼女が迎えてくれるだろう。

 今、この扉を開ける。

「おかえりなさい。」
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